酒田市立図書館・酒田市立光丘文庫


1回ごとに大規模な作品を制作するアーティストの古郡弘さんから、山形で展示があると知らせをいただいた。1泊2日で酒田と山形に行った。
(→第2日 [東北芸術工科大学図書館・山形大学図書館] )

1日目。新幹線で新潟へ、そこから特急に2時間乗って酒田に着く。
古く栄えた街なのに、駅前の風景は何だかガランとして、空が広い。駅が市街から離れてあるようだ。

□ 土門拳記念館
山形県酒田市飯盛山2-13 飯盛山公園内 tel. 0234-31-0028
http://www.domonken-kinenkan.jp/

池に面してコンクリートが水平と垂直に組み合わされた美術館がある。装飾的な造形はなく、禁欲的にキッパリと仕上げてあって、ミニマル・アートのよう。 土門拳記念館はコンクリート細工

その中に厳しい対し方で写真をとったことで知られる土門拳の写真を展示しているのだから、展示も緊張を強いられそうだが、相当ゆるい。作品の設置が水平でなかったり、作品間の間隔があいまいだったり、キャプションを額に貼りつけたり。
写真の展示では、東京都写真美術館がいつもピシっとしまったみごとな展示をしていて気持ちがいい。ここでもあんなふうだといいと思う。

美術館の設計は谷口建築設計研究所(1983年)。
飯盛山には、ほかに東北公益文科大学、酒田市国体記念体育館などの公共建築が集中し、美術館にも続いている。

□ 酒田市美術館
山形県酒田市宮野浦字飯森山西17-95 tel. 0234-31-0095
http://www.sakata-art-museum.jp/

数段の階段を上がって塀をくぐって美術館の敷地に入ると、いきなりすばらしい眺めが開けて、驚かされた。

緑の芝生が広がり、右方向には安田侃の白い大理石の彫刻。そのずっと先には白い雪をかぶった鳥海山。
左方向には、低い美術館の建物が木々に見え隠れしながら延びている。
安田侃の白い彫刻と、白い鳥海山

企画展は『ちばてつや 漫画原画展』を開催中。『あしたのジョー』だの『紫電改のタカ』だの懐かしい。
常設は地元作家の穏やかな作品が並んでいた。酒田出身のシュンのアーティスト、佐藤時啓(さとうときひろ)さんの作品や活動の紹介があるかと期待していたのだが、企画展でとりあげる(とりあげた)ことはあっても、ふだんはないようだ。ちょっとものたりない。

喫茶室からも眺めがいいので、コーヒーブレイクにした。
鳥海山の白い峰を眺めながらモンブランを味わう。

□ 山居倉庫
山形県酒田市山居町1-1-20 tel. 0234-24-2233

屋根は三角で、壁は黒塗りの米倉が、12棟並んでいる。
新井田川(にいだがわ)の河口近くにあり、川はこの先で酒田港になる。ここから江戸や大阪に米が運び出された。

倉庫群の裏側には日よけと風よけのためにけやきの大木が並び、今や酒田を代表する風景になっている。
後ろ姿で魅惑してしまうのだからすごい。
山居倉庫は黒い壁とけやき並木

□ 河口ウォッチング 最上川
最上川の河口はかわった地形をしている。
元は砂州かと思われる細長い地形をはさんで東に最上川、西に新井田川河口から続く酒田港がある。
中央の細長い中州には、釣り人の車がずらっと駐車して、すれ違いができない状態になっている。今はハタハタが釣れる時期だとあとで聞いた。

中州のほぼ先端から、最上川左岸の先端を眺める。細い柱が見えるのは、風力発電のプロペラ。 最上川河口の夕景色

■ 酒田市立図書館
酒田市中央西町2-59 tel. 0234-24-2996
http://library.city.sakata.lg.jp/

酒田市総合文化センターという複合施設の中に図書館がある。
建物の全体が大きいわりに、そして利用者が多いわりに、図書館はやや狭く感じられた。
これほどの歴史がある街にはもっと充実した図書館があっていいと思う。

■ 酒田市立光丘(こうきゅう)文庫
酒田市日吉町2-7-71 tel. 0234-22-0551

日枝神社に向かう道の途中で左に入ると光丘文庫がある。

木立のあいだに異様な正面が現れる。
設計は内務省神社局建築課長、角南隆(すなみたかし)、施工は森山善平(ぜんべい)で、当時としては進歩的な森山式鉄筋コンクリートブロック工法によるという。
酒田市立こうきゅう文庫

市立図書館の一部という位置づけで、もちろん無料で公開されている。
「第一閲覧室」に入ると、変形の部屋で、左右に書架が並んでいる。
「大川周明文庫」とか「石原莞爾文庫」とか表示された書棚から始まっている。
大川周明(おおかわしゅうめい1886 - 1957)は酒田の人、石原莞爾(いしわらかんじ1889-1949)は鶴岡の人だが、強烈な名前から始まっていて圧倒される。
そのほか、財団から引き継いだ和漢書、明治から昭和前期ころの図書、雑誌、新聞、旧家の文書を所蔵している。

酒田の本間家はかつて日本最大の地主で栄えた。
文庫の歴史をたどると、
・3代目の当主光丘(みつおか)の叶わなかった夢を実現するために、8代目が1925年に財団法人「光丘(ひかりがおか)文庫」を設立した。
・1950年に酒田市は図書館法施行に伴い、光丘(ひかりがおか)文庫の建物の一部と蔵書の一部を借りて酒田市立図書館を開設。
・1958年に財団法人「光丘(ひかりがおか)文庫」は、建物と蔵書等を酒田市に寄付して解散し、酒田市立光丘(こうきゅう)図書館となった。
・1982年、酒田市総合文化センター内に今ある酒田市立中央図書館が開設され、酒田市立光丘(こうきゅう)図書館は「酒田市立光丘(こうきゅう)文庫」となった。
3代目本間光丘(みつおか)から出発しているが、読みの変遷がわかりくい。

□ 日和山(ひよりやま)公園

外に出るとたまたま散歩でとおりかかった人に声をかけられた。
このあたりは見どころが多いところで、いろいろ説明しながら日和山公園まで案内していただいた。
日枝神社の山門も本間家の寄進によるもので、たいへんな材が使われていること。
神社から通りに出たすぐ先にあるのは、映画『おくりびと』のロケに使われた料亭であること。

そして日和山公園に入ると、先端は海を見おろす高い位置にあり、眺めが開けた。
眼下には、新しい灯台が造られたときに移築された六角形の木造灯台。
先ほど見てきた最上川河口。(釣り人がハタハタ釣りであることもここで教えられた)。
もっと遠くの水平線には、扁平な飛島が青くかすんで見えている。
この地に暮らす人の話は興味深かったのだが、本間美術館に閉館しないうちに入りたいので、礼を言って別れる。

□ 本間美術館『幕末・明治の書』
山形県酒田市御成町7-7 tel. 0234-24-4311
http://www.homma-museum.or.jp/

本館の清遠閣は、庄内藩主を迎えるために建てられた別荘で、明治末期には皇族を迎えるために2階が増築された。
豪華な材と、腕のいい職人の技を、感心しながら眺める。
新館での企画展の書の展示では、大河ドラマで『龍馬伝』をやっている時期でもあり、勝海舟や西郷隆盛は、おう、こんな字か、という感じで、なかなかいい。
閉館間際になって外に出ると、藍色を深めた空を背景に、鳥海山の雪をかぶった白い山頂が陰影を濃くしていた。

各駅停車の電車で新庄で乗り換え、山形に移動した。
今日は(乗り換え時間も含めて)合計7時間半ほども電車に費やした。

(2010.11月 no.50)
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