Bookshop TOTO & Magazine Library
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30代の建築家5人の、本との関わりをテーマにした「建築家の読書術」という展覧会が開かれた。四ッ谷駅近くで蝋梅忌の集まりがあったあと、地下鉄に乗り、国会議事堂駅で乗り換え、乃木坂で降りてギャラリー間に行き、会期の最終日にかろうじて間に合った。

■ ギャラリー間「建築家の読書術」
東京都港区南青山1−24−3 TOTO乃木坂ビル3F
tel. 03-3402-1010

http://www.toto.co.jp/gallerma/

5人の建築家は、中村拓志、中山英之、平田晃久、藤本壮介、吉村靖孝。
建築家というの、デザイン的に形を作って、建設業的に現物を立ち上げる人で、読書とは縁遠いと思われているフシがあるが、実は一般的にはよく本を読む。
この展覧会の参加者の吉村靖孝は、「アスリートが体をきたえるように、建築家は本を読む。」という名言を会場内の紹介パネルに記している。
(建築家・藤森照信は『建築探偵、本を伐る』なんていう読書体験の本を書いている。)

もう1つ僕が気に入った名言は、平田晃久のもの。
絡まりあう読書体験−自分の意識との、過去に出会った印象深い本たちの記憶との、様々な断片的思考との−がもたらす高揚感は、新しい建築に向かう大きな原動力を与えてくれる。
ポジティブな意味での絡まりあい。最近、それは読書だけの話ではなく、実は生あるものの世界全体のあらゆるところに見出せる何かではないかと感じている。
生の世界の接続を目指す私たちの時代には、「建築とは絡まりしろをつくることである」と言いきれるような気がしはじめている。

それぞれが20冊ずつ選んだ本のリストができていた。
いかにも建築家が読む本らしいのとして、
 ル・コルビュジエ『建築をめざして』
 ジョン・ラスキン『建築の七燈』
 クリストファー・アレグザンダー『パタン・ランゲージ』
などがあって、ほとんど教科書といっていいようなもの。

なるほど、建築家をそそりそうだなと思えるのは、
 谷崎潤一郎『陰鬱礼賛』
 ミシェル・フーコー『監獄の誕生』
 イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』

ええっ!こんな本に建築的発想を刺激されることがあるのか−と思ったのは、
 中沢新一『雪片曲線論』
 武満徹『武満徹著作集全5巻』
 夏目漱石『夢十夜』
 『旧約聖書創世記』
 安部公房『箱男』
 ジョージ・オーウェル『一九八四年』
 ブルーノ・ムナーリ『木をかこう』
 トール・ハイエルダール『コンチキ号漂流記』 など
意外のようではあるけど、何となしインスパイアの道筋が想像されもして、とてもおもしろい。

ギャラリーには、丸椅子を配置して、それらの本を1冊ずつ置いてあった。
本ごとに、その本を選んだ作家の署名と、その本に関するコメントを記したしおりがはさんである。
藤本壮介が、『Libraries』(Candida Hoffer,Thames & Hudson,2005)にはさみこんだしおりには「図書館はときに建築をこえている」と書いてあった。
どういう意味をこめたのか、これだけではわからない。
展覧会にあわせて5人の建築家による連続レクチャーがあったのだが、藤本さんの回に参加できたら尋ねてみたかった。

*秋になってこの疑問を尋ねる機会が訪れた。
 → [ 松竹大谷図書館・外務省外交史料 ]

■ Bookshop TOTO&Magazine Library
東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル2F
http://www.toto.co.jp/bookshop/bookshop.html

ギャラリー間から2階に降りると、TOTO出版ほかの建築書がそろった本屋さんがある。
さらにその奥にはMagazine Libraryがあって、国内国外の建築雑誌のバックナンバーが揃っている。こんなのが近くにあったらいいのになあ。

(2010.2月 no.24)
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参考:

  • 『建築探偵、本を伐る』藤森照信 晶文社 2001