前橋こども図書館 −壁に可愛い絵が続く


「関東地区都県立図書館長会議」というものが2009年には7月に前橋で開催され、館長代理で参加した。会議のあと、前橋こども図書館の見学会があった。会議前には寄り道もした。

群馬県立図書館
群馬県前橋市日吉町1-9-1 tel. 027-231-3008
http://www.library.pref.gunma.jp/

図書館内に、群馬の郷土資料を出版している「みやま文庫」の事務局が入っている。「みやま文庫」は、郷土・群馬に関する著作を継続的に発行している。僕は群馬の文化状況にはかなり関心があり、ずいぶん参考にしてお世話になってきた。
年額4000円の会員制で出版の経費を確保してきたが、このところの経済状況の悪化で会員数が減り、運営が厳しくなっているという。

すぐ近くに群馬県民会館がある。ところが、図書館の窓から、その会館があるはずの場所に「Beisia」の赤い文字が見えて驚いた。群馬県民会館が「ベイシア文化ホール」にかわっていた。
愛称を付与する権利(ネーミングライツ)」を公募して、平成21年から5年契約。
ほかに陸上競技場と野球場の計3カ所で実施になっている。

総理大臣を4人もだしている県でも、足下の文化状況はこの程度なのかとうすら寒くなる。

設計は岡田新一設計事務所で1978年に竣工。その4年前、1974年に最高裁判所を設計していて、この頃は立方体の大胆な組み合わせと、いかつい壁面が共通している。 群馬県立図書館

前橋カトリック教会図書室
群馬県前橋市大手町2-14-6

群馬県立の美術館や博物館の創立を推進したのは、高崎の建設会社、井上工業の経営者、井上房一郎だった。
思えば、これまでも群馬の文化をリードしてきたのは政でも官でもなく、地方の一民間企業の経営者だったという歴史もある。
(僕はしばらくその井上房一郎の足跡をたどっている。ついでにいえば、井上工業には若い頃の田中角栄が勤めていて、高崎観音の設計図だか、模型だかを、自転車にのせて届けたという話が残っている。)

教会は前橋市立図書館のすぐ近くにあり、井上工業が設計して、1932年竣工した。
構内に図書室があり、通りかかった神父さんにおことわりして、中を見せてもらった。小さな会議室くらいの部屋に、平易な宗教書や、児童書が並んでいた。

□ 群馬会館
群馬県前橋市大手町2-1-1

「関東地区都県立図書館長会議」が開催されたのは群馬会館。
これも井上工業が建てた建築で、その2年前に建造された群馬県庁本庁舎(現昭和庁舎)と調和が取れるようにデザインされ、どちらも文化庁の登録有形文化財になっている。
きれいな大理石を床にも壁にもたっぷり使ってあって、大理石にくるまれているような感じになる。

会議では、資料購入予算が減っていること、市町村立図書館との違いを明確にすることを求められていることが、複数の図書館から報告があった。

前橋こども図書館
前橋市本町2-12-1 [前橋プラザ元気21] 2階
tel. 027-230-3833

http://www.tosyokan.city.maebashi.gunma.jp/

前橋市立図書館の児童書部門は、本館から歩いて数分の別棟にある。
西友系のリヴィンという大規模店舗が撤退したビルを市が購入して「前橋プラザ元気21」にした。
地上7階、地下2階ある建物には、医療福祉専門学校、公民館、商店などが入っているが、2階にこども図書館がある。同じ階に、「子育てひろばプレイルーム」があり、子育て家庭に便利につかえるように作られた。
買い物もできてしまうし便利ではあるけれど、「おとなの図書館と別にあるのは不便」という意見もあるそうで、確かにそういう一面もあるだろう。

図書館に模様替えするとき、絵本作家、荒井良二さんとこどもたちが協同して、壁に絵を描いた。とても明るく、のびやかな空間になっている。
椅子の背がウサギの長い耳になっていたり、熊さんの丸い耳になってたりするのは司書の人たちのアイデア。(制作はプロに委託)
書棚のサインなどにしてもビジュアルな面はとてもいい。
前橋こども図書館

自治体が運営する人が集まる施設は、とかく注意書きや、あれこれのポスターなどが、隙さえあれば貼られてゴチャゴチャしているのをよく見かける。でもここでは、なにかしらの指示的掲示や役所情報は最小限に抑えられていて、すっきりして、気持ちがいい。

いれものがいいだけではなくて、図書購入費も十分に用意されている。市立図書館の児童部門だけで1000万円を超えるというのは、全国的にみても最高位に入るのではないだろうか。
前橋のこどもたちはしあわせだと思う。

(2009.7月 no.2)