群馬県立図書館


高崎に住む竹の工芸作家、前島美江さんから、作品の展示+コンサート+映画+シンポジウムの知らせをいただいた。
新前橋にある朝日印刷工業株式会社のギャラリー「ノイエス朝日」で午後に開催されるので、午前中は前橋の図書館に寄った。

■ 群馬県立図書館
http://www.library.pref.gunma.jp/

前橋駅のレンタサイクル 前橋駅からすぐ、両毛線の高架下にある駐輪場のレンタサイクルを借りた。1日200円。
目的地の群馬県立図書館ほかいくつか寄り道したいが、歩くにはちょっと遠いし、バスを乗り継ぐのは面倒で、自転車がちょうどいい。
(でも北風が寒かった。)

哲学堂設立計画を補佐するなど井上房一郎とともに歩んできた熊倉浩靖さんが去年出版された
『井上房一郎・人と功績』(熊倉浩靖 みやま文庫 2011)
には、高崎哲学堂での講演記録が一覧表にまとめられていた。1969年1月の増谷文雄・大正大学教授が第1回で、以後、ほぼ月1回開催されている。
哲学者に限らず、安部公房、宮脇昭、木村重信、吉本隆明、加藤周一、梅原猛などと多彩で贅沢な名前が並んでいる。
井上房一郎が支援した石坂浩二も講演し、クリストファー・ブレイズデルの尺八コンサートも混じる。
井上房一郎と建築で関わる磯崎新、三沢浩ももちろん招かれている。
その中に1981年7月19日に、司馬遼太郎の名があった。
同じ書に、その講演記録を収めたらしい高崎哲学堂編『市民の哲学』が3巻刊行されているとあったので、司馬遼太郎は高崎でどんなことを話したのか見たいと図書館に行ってみた。
郷土資料の棚にその本はあったのだが、全ての講演が掲載されているわけではなく、司馬遼太郎の講演録はなかった。

近くに
『近代群馬の思想群像』(高崎経済大学附属産業研究所編 グレーン出版 1988)
という本があった。
第4章の「内村鑑三の思想形成と上州」(飯岡秀夫・高崎経済大学教授)では、内村鑑三の離婚をめぐる真相の探求がえんえんと続く。
第6章は、熊倉浩靖による「井上保一郎−地域における産業資本家の成立」で、前記の『井上房一郎・人と功績』において、房一郎の父の事績の記述として取り込まれていく。

そのまた近くに
『上野三碑 古代史を語る東国の石碑』松田猛 同成社 日本の遺跡36 2009
があった。
先月、台東区立書道博物館で『中村不折コレクション 日本の古代碑〜多胡碑建立1300年を記念して』という展覧会を見たばかり。
多胡碑に刻まれた太くて変形した独特な文字にわくわくしながら見とれた。
ところがこの本を見ていたら、多胡碑の文字は風雨や日光にさらされ摩滅していたり、後世に彫り直した刻線があるという。

結局のところ内村鑑三の離婚は男女どちらかの非なのだろうか。
多胡碑の文字が風化や加鑿した結果の文字だとすると、魅惑された思いが宙ぶらりんになってしまうなあ。
というようなことを思いながら目を上げると、作りすぎない、のびやかな庭が目に入って、なかなかよい。
群馬県立図書館の庭

● 青柳本店
前橋市本町2-15-2 tel. 027-224-3769

レトロな店が混じるアーケードの商店街を駅に向かって走り抜け、お菓子屋さんに寄って「糸くるま」を買う。
白い繭の形のサクっとした皮のなかに、青柚子の鮮烈な香りがするゼリーのようなあんが入っている。 前橋名菓、青柳本店の糸くるま

■ ノイエス朝日『皮白竹の仕事と竹を使った工芸展 タケヤネの里』
http://www.neues-asahi.jp/

高崎の竹の工芸家、前島美江さんには、ブルーノ・タウトがデザインした竹工芸を作る人として、幾度かお会いしたことがある。
前島さんは、皮白竹(カシロダケ)を使っている。
柔らかく粘りけがあり、竹を細工するのにいちばん適している。
その竹は福岡県八女市、黒木町、うきは市の限られた地域にしかない。
ところが、竹本体はかつて有明湾の海苔の養殖の支柱に使われていたのに、プラスチックに置き換わって需要がなくなり、竹林が放置されるようになった。
前島さんは竹の確保から始めなくてはならなくなり、「八女カシロダケ活用プロジェクトかぐやひめ」を立ち上げて、竹林の保全活動を始めた。
その様子を映画に撮ったのが上映された。

ノイエス朝日は朝日印刷のギャラリー 前島美江さんの竹皮編
国道17号沿いにあるノイエス朝日 前島美江さんの竹皮編

映画を見て初めて知ったのは、前島さんは元は民俗学研究の人なのだった。調査対象としてものづくりを見ているうちに自分でも作りたくなり、竹工芸に入り、タウトのデザインに出会った。
映画になったいきさつというのも、もともと民俗関係の映像を撮る関係で知り合った仲間が関わって作られていた。
福岡の竹林の状況、京都の竹皮商人、大磯でばれんを作る人、日光で竹下駄を作る人など、いろんなことがわかったが、映画としては焦点が拡散して、やや散漫な印象を受けた。

映画の前には、映画に使われた音楽を演奏した人のコンサートとして、石塚俊明さんのドラムソロがあった。頭脳警察で過激な音を叩いている人だが、今日の演奏は繊細で瞑想的なものだった。

最後のシンポジウムは、この映画を撮った青原さとしさん、映像作家の飯塚俊男さん、白川昌生さん。
青原さんと飯塚さんとで、「誰に見せる」ことを想定して映画を作るかという議論があり、おもしろかった。

前島さんから、この映画を撮った民族文化映像研究所のスタッフ、中川美帆さんを紹介された。
映画で短時間だけ竹の楽器の尺八の音が入るので、「タウトを保護した井上房一郎が、尺八奏者、クリストファー・グレイズブルさんも支援しているから、今日の映画はその尺八コンサートとの組み合わせもありかも」とお話ししたら、クリストファーさんには、映画のナレーションや翻訳をお願いしているとのことで、また思いがけないつながりがあって驚いた。

(2012.2月 no.91)
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参考: