金沢市立玉川図書館−親子で建てた図書館


1.金沢市立玉川図書館
2.石川県立図書館
3.あうん堂

冬の金沢に行くことを思い立つ。
天気情報では、2泊3日の予定の、初めの2日が雪だるま。3日目がおてんとさん。

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第1日 金沢市立玉川図書館
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■ 金沢市立玉川図書館・金沢市立玉川図書館近世史料館・玉川こども図書館
金沢市玉川町2-20 tel. 076-221-1960
http://www.lib.kanazawa.ishikawa.jp/

元・専売公社の広い敷地に3つの館があり、あとは公園になっている。
金沢市立玉川図書館というから、別に中央館があるのかと思ったが、とくに大1館−中小数館というのではなく、玉川図書館と泉野図書館が大きく、あとは中小規模館という構成になっている。近く金沢西部図書館(仮称)が開館する予定。

今ある建築は、1979年に、近世史料館は専売公社のれんが建築を改修、玉川図書館は新築で、金沢生まれの建築家、谷口吉郎と、その子、谷口吉生が設計・監修にあたっった。
谷口吉郎(1904 - 1979)は、子どものころ、犀川の河原で遊んだ。小石を積んで小川を作り、木片で橋をかける。川の水で石が濡れると石の肌がいろいろの美しい色を発するのを知る。そうして「建築家となった私の意匠心はこのように童心のころから、ふるさとの川から造形的な感化を受けていた」という。
谷口吉生(1937 - )は、子どもの頃、父に現場に連れていかれて、「ここで遊んでいろ」と放っておかれ、「現場はこんなに楽しいところなんだ」と父が語るのを聞いて育って建築家になった。
親子で共同して建築に関わったのは、ここだけになる。

近世史料館
公開されているのは1階のみで、資料を展示している部屋と、所蔵資料を閲覧できる部屋とがある。

玉川図書館
緑色の鉄骨で骨組みをつくり、鉄板で壁を作るという大胆さ。
でも、中庭を設けることで外の公園とつないでいる。内部の壁の一部にれんがを使うことで、隣接する史料館とも調和させる。それで大胆でも図書館だけが浮いてしまうことがなく、広い一体感があり、気持ちがしっとりと落ち着く。

館内の案内図を見ても、書庫がどこにあるかわからない。
図書館の主任司書の吉村さんにおききすると地下にあるということで、案内していただいた。地上のガラス壁はアーチを描いているのだが、書庫もそっくり同じアーチになっていて、やや使い勝手がよくないという。
他にも現代の情報化に適合しにくいところもあって、いくつか課題をかかえている。

冬の金沢は、天気情報が晴れで、朝そのとおり晴れていても、さっと天気がかわり雪が降ることがあるから、傘は必需品だと聞いてきた。
実際にそのとおりで、天気が1日のうちにコロコロ変わる。
図書館には、小雪を傘に受けながら着いたのだったが、中を歩いているうちに、晴れて日が射してきた。

中庭側のガラス壁から閲覧室内に光が入る。中央の階段から見おろすと、書架と机が並ぶ大空間に柔らかな日が射して、うっとり眺め入る。 金沢市立玉川図書館の閲覧室

自然光のほかには、高い天井に設置された蛍光灯から、桟状のルーバーをとおして人工照明が内部を照らしている。見上げると、角度によっては桟のすきまから直接光源が見えるが、全体としてはやわらかな光になっている。
よく制御された光があってこその、いい建築であり、いい図書館であると、あらためて思う。

玉川こども図書館
2008年に開館。ここも日本たばこ産業株式会社金沢支店の建物をリノベーションしたもので、五井建築設計研究所が設計し、谷口建築設計研究所が協力した。
こども図書館はこじんまりしているのがふつうだが、ここは3階建てのビルをそっくり使っていて、広い。

1階の閲覧室には、低い書架が並行して2列に続いている。書架の高さと、書架どうしの間隔と、通路の広さのバランスがとてもいい。
シンプルな書架がゆったり置かれているので、天井の意匠に充ちた照明器具が過剰にうるさくならずに、ちょうどいい感じ。
美大の学生が作った装飾が天井から吊され、中学生が作った職業別人形が壁にかかり、明るい雰囲気を作っている。
全般に、さすが工芸の街とでもいうか、センスがいい。

エレベータわきの壁に金沢方言がいろんな大きさ、いろんな色で書かれていた。
「よみまっし」「まいどさん」「あんやと」とか、関西弁とも違うおっとりした独特の語感で楽しい。
「おいだすばせ」は追い出されるのではなく、いらっしゃいのことだって。

2階には、外国語の絵本を集めた部屋がある。
副館長の村田さんに案内していただいて、今日は閉まっている部屋も見せていただいた。
椅子が並ぶ1室では、明日開かれる読書感想文の表彰式の準備をしてあった。
『かなざわ偉人物語』にある偉人の中から選んで小中学生が感想文を書くという催しが長く続いている。
本の刊行は10年以上にわたり、今7巻まででていて、まだあとがあるらしい。スケールが大きい。

3階には、ガスや水道の設備を備えた理科の実験室のような部屋があり、科学図書を集めた部屋もあった。科学実験の講座などは金沢子ども科学財団が実施している。図書館というと文化系の印象があるが、金沢市としては科学振興に力をいれ、図書館に理科系機能ももたせている。
閲覧室に児童書を並べるだけでなく、郷土の偉人に目を向けさせ、科学振興の設備も備え、建築の大きさを生かして、とても戦略的。こういう攻めの姿勢の図書館もあるものかと強い印象を受けた。

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図書館の喫茶室で、コーヒーとケーキのセットでひと休み。喫茶室は、庭に円形にせりだしていて、明るく居心地がいい。

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□ 西町教育研修館(旧・石川県繊維会館) 金沢市西町3-16

郷土の偉人のひとり、建築家・谷口吉郎の金沢市内にある建築を眺めながら歩く。

西町教育研修館には、玉川図書館で行われている科学振興の事業も担っている「金沢子ども科学財団」の活動拠点がある。
入口付近がきまっている。上り下りの階段が別の位置から発していて、中央部に、地下に降りる階段。正面突き当たりに、2階に上がる階段。
壁には亀甲形の石を貼り付けてある。
見上げると、折り鶴を模した照明器具があって、金沢的工芸的おもしろさがあり、ちょっといたずら心も感じる。
応接室らしき部屋の奥に、小松出身の画家・宮本三郎の壁画『産業と文化』があった。石川県繊維会館の開館時に描かれたのだが、教育研修館にかわったので、絵が少しも矛盾しない。

□ 金沢中央ビル 金沢市丸の内4-12
金沢城公園に隣接していて銀行やオフィスが入っている。入口付近を眺めただけだが、まあ、ふつう。

□ 金沢商工会議所 金沢市尾山町9-13
金沢中央ビルと、通りをはさんで向かいあう位置にある。
案内図やポスターなどが雑然と貼りまくられていて、ちょっと建築がかわいそう。

□ 金沢歌劇座(旧・金沢市観光会館) 金沢市下本多町6-27
改装中で、工事用の仮囲いにさえぎられて見えない。残念。

□ 石川県立伝統産業工芸館 
金沢市兼六町1-1(兼六園内)tel. 076-262-2020
http://www.ishikawa-densankan.jp/

もとは谷口吉郎の設計で1959年に開館した旧・石川県美術館。
手狭になり、新しい美術館が1973年に開館したのと入れ替わりに、金沢の伝統工芸を展示・紹介する施設に模様替えされた。
九谷焼や金箔や加賀友禅など、さすがに伝統のある都市には豊富な工芸の蓄積がある。
水平と垂直の線をプロポーションよく組み合わせた展示室が並ぶが、入口ロビーの床だけ、城の石垣を倒したかのように、石のタイルが不定形に貼られている。

* この旅から帰ってまもなくの2010.2.24朝日新聞ほかに、埼玉県秩父市にある秩父セメント第2工場が、普通セメントの生産を今年前半で終えるという報道があった。谷口吉郎が1956年に設計した工場で、DOCOMOMO Japan100に選ばれた唯一の工場建築であり、埼玉県内で選択された唯一のDOCOMOMO Japan100作品でもある。今後が気がかりになる。
[谷口吉郎+秩父セメント第2工場の夢]参照

* ほかに谷口吉郎が設計した図書館として、
東大寺図書館(1967)については[荒川ゆらり 生駒山へ(寄居-生駒の6)]、
最後の設計作品である栗本図書館については[荒川ゆらり 分水の森、小川の匂い、富士見で暮らす]参照。


● 大衆割烹大関
金沢市木倉町1-5  tel. 076-221-9450

泊まったホテルに近い片町の繁華街で夕食。ひとりでちょっとお酒を飲んで食事するのはなかなか店の選択に気をつかう。数軒のぞきこんで、カウンターがあり、混んでいないタイミングで入れる店を探して、ここに入った。
酒は「大関」のみ。おでんのなかに、「かに面」というのがあって、甲羅に身と卵を詰めてある。豊かな味わいと食感でおいしかった。
金沢名物の治部煮(じぶに)もあって、鶏肉がうまい。
ゆったりと温まり、正解だった。

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第2日 にし茶屋街の室生犀星記念館から
ひがし茶屋街の古書・あうん堂へ

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□ にし茶屋街
犀川大橋を渡る。登録有形文化財。うすい水色で、隅田川にもこんな色でこんな形の橋があった。

● 甘納豆かわむら 
石川県金沢市市野町 2-24-7 tel. 076-244-0042

甘納豆の名店があるというので寄ってみた。壺にいろんな豆を詰めたのがいい感じだが、これからまだ歩くのに、壺入りの土産を買うのはつらい。でも駅ビルに出店してるなんて都合のいいことはなくて、店はここだけという。覚悟して、自分ちのと、人にあげるぶんと、2壺と1箱買う。

壺入りの甘納豆を、サジですくう 壺から甘納豆を取り出すのに木の匙がついている。イラストや文字のデザインがかわいい。

□ 室生犀星記念館
金沢市千日町3-22 tel. 076-245-1108
http://www.kanazawa-museum.jp/saisei/

犀星は東京に出て田端に住んだ文化人のひとり。田端は僕の両親が生活を始めた地で、僕にも幼時の思い出があり、何となし親近感がある。
僕はかつて犀星というのは、貧乏暮らしの文士や画家が暮らすところに、金沢の文化を背負ってさっそうと訪れた詩人というふうに思いこんでいた。でも私生児で、苦労を重ねたあと、ようやく東京に、いわば脱出してきた人だった。

そんな生誕跡地にある記念館には、小さな家にあれこれゆかりの品が置かれているのかと思ったら、予想に反して、コンクリートづくりのキッチリしたミュージアムだった。

犀星に縁のある人が犀星について語る映像がおもしろかった。
伊藤信吉は1928年に上京し、萩原朔太郎から紹介されて初めて文豪・犀星宅に行ったとき、「なんと小さい家!」と驚いたという。伊藤は詩人としては新人だが、群馬の中農で、大きな家に住んでいた。
犀星は1932年に、馬込に家を新築した。神田の一誠堂を呼び、本を売って金を工面したという。売れば家が建つほどの蔵書!?

堀多恵子は、当時、追分の油屋に滞在していた堀辰雄に誘われ、軽井沢にある犀星の別荘を訪れたのが最初の出会いだったという。まだ堀辰雄と結婚する前の1937年のことだったという。

別の展示室には、犀星が飼う猫の写真も展示されていた。猫が火鉢に前足を揃えてかけて暖まっている。気持ちよさそうに目を細めている猫はジイノで、撮影したのは堀多恵子、1959年のもの。
この写真は、先日、さいたま文学館の『文学館に猫大集合』展にも展示されていた。

→[北村薫・大野隆司対談「猫と文学」/さいたま文学館]

● くず葉ホテルアクティ
石川県金沢市片町1-2-44

金沢名物のハントンライスは、「オムライスの上に白身魚のフライをのせ、タルタルソースをかけてある」料理だという。
くず葉ホテルアクティでは、店の外に大きな案内幕がかかっていて、由来を説明してあった。
「ハン」はハンガリーで、「トン」はフランス語thonで、マグロのことだとある。
でもなぜハンガリーなのかはわからないし、マグロって白身魚か?
説明されて、かえって謎が深まる。

味は構成から予想されるとおりのもので、630円と安くておなかが満ちる。(僕にはカロリー過剰なくらい)。

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□ 金沢21世紀美術館
石川県金沢市広坂1-2-1 tel. 076-220-2800 
http://www.kanazawa21.jp/

ふつうのガイドブックに詳細なみどころ案内が掲載されているほどの、いわば成功した美術館だが、ようやく行ってみて、期待はずれだった。

特徴である円形の建築が迷いやすい。
館内各所に案内図があるが、不親切でわかりにくい。
富弘美術館もそうだったことを考えあわせると、「円形美術館は失敗する」。
(一方で、水戸市立西部図書館や新潟市立豊栄図書館のことを思えば「円形図書館は成功する」。)

常設作品も、カプーアにしろ、タレルにしろ、現代美術をいくらかでも見慣れた眼には、新鮮味がない。よく紹介される、プールを水の上と下から眺める作品も、この程度かなあという感じだった。
円形美術館のわかりにくさにいらだってしまって、あとまでのれなかった。
どうも僕は妹島和世の建築になじめない。

□ 石川県立美術館
石川県金沢市出羽町2-1 tel. 076-231-7580
http://www.ishibi.pref.ishikawa.jp/

谷口吉郎設計の旧・石川県美術館が閉館したのと入れ替わりに、同じ1973年に開館した。
順路ではまず第1室に、 野々村仁清の国宝「色絵雉香炉」と重要文化財「色絵雌雉香炉」の2点が置かれている。
その先の部屋の広い壁に、鴨居玲『静止した刻』1968と『1982年 私』、その師、宮本三郎の『裸女達に捧ぐ』1969と『熱叢夢』1971と、2点ずつかかっている。
鴨居の暗い画面には男がいて、運命のサイコロが転がっている。
宮本のムッとするような熱く密な花むらには、裸の少女が熱をおびてひそんでいる。
このあとしばらくこの4点に頭の中が占拠された。

* このあと行った石川県立図書館に、鴨居玲(1928-85)の特集を組んだ号の『花美術館』という雑誌があった。鴨居と深い親交があった日動画廊の長谷川徳七へのインタビューで、鴨居が亡くなったときの様子が語られていた。鴨居はしばしば演技的な自殺を試みていて、数回目のとき、たまたま誰も訪れる者がなくて、発見が遅れて、本当に死んでしまったのだという。

□ 石川県立能楽堂
金沢市石引4-18-3 tel. 076-264-2598

公演はない日で入れないのだが、通りかかってガラスの壁越しに中をのぞきこんでいたら、通りかかった女性が「事務室に行って話せば案内してもらえますよ」と声をかけてくれた。この女性に限らず、金沢のひとはやさしい。
数年前から歌舞伎を見に行くようになったが、能は公演日が限られるのでなかなか見る機会がない。こんなのが説明を乞うていいのか、気がひけたのだが、じつに熱く丁寧に説明していただいた。橋掛りの向こうの鏡の間や、松が描かれた鏡板の向こうの楽屋を回り、役者が出ていく切戸口から舞台を眺めもする。客席からは「向こう側」は全く見えない世界なのに、本公演を見る前に「向こう側」を見て、親しみがわいた。いよいよ見に行かなくては。

□ 石川県立歴史博物館
金沢市出羽町3-1 tel. 076-262-3236
http://www.pref.ishikawa.jp/muse/rekihaku/index.htm

もと陸軍兵器庫、戦後は金沢美術大学に使われていたれんが建築が、博物館になっている。
かつての辰巳用水の通水管がモニュメントになって庭に置かれているのにひかれて入館した。実際に水が流れるように作られているのだが、冬は水が凍るから止めてあるし、用水に関する展示もわずかきりだった。

■ 石川県立図書館
金沢市本多町3-2-15 電話:076-223-9565
http://www.library.pref.ishikawa.jp/index.html

犀川の水を引いた大野庄用水が、武家屋敷跡などが並ぶ古い街並みの中を流れている。
図書館のレファレンス・カウンターで、その大野庄用水について尋ねた。歴史的風致地区を流れていて、それにふさわしく改修もされているようだから、何か資料があるだろうと考えた。
でも、金沢市内の用水全般についての資料の中に、その1つとして簡単な説明はあるが、大野庄用水に関する詳しい内容はわからない。端末で検索しては該当資料にあたって、数件目でようやくいい本にあたった。
『金沢用水散歩』という本で、大野庄用水の概況がわかったし、浅野川と犀川の河口付近の詳細な地図もあり、次の日の河口ウォッチングにとても役に立った。

□ 金沢アートグミ『新保裕彫刻展 ヒト型語り』
金沢市青草町88 北國銀行武蔵ヶ辻支店3階 tel. 076-225-7780
http://www.artgummi.com/

にぎやかな近江町市場の角に、北國銀行武蔵が辻支店がある。村野藤吾(むらのとうご1891- 1984)設計で1932年に建築された元加能合同銀行本店が曳家されてきた。武蔵が辻という大きな交差点に面してもいて、特徴のある3連のアーチがとても目立つ。

3階のギャラリーには、旧建築にあった金庫室の扉や暖炉が移設されていて、歴史を感じさせる。
そこに並ぶ新保裕の彫刻は、さまざまなスタイルの人物が円形に並ぶ。中央に村野藤吾へのオマージュで「建築家」があった。

■ あうん堂
石川県金沢市東山3-11-8 tel. 076-251-7335
http://www.aun-do.info/


浅野川大橋を渡って左に細い路地を入り、小さな古書店に行った。
入口は扉1枚分きりなくて、奥に細長い。
内装のセンスがとてもすてき。
あうん堂のすてきなインテリア

ゆったりした喫茶室があり、白い仕切り壁の向こう側に棚があって、古書が並んでいる。

本はテーマごとに分けて置かれている。
知る 旅する 愛する 生きる 働く 住まう 暮らす など。
たまたま仕入れた本を売っているというより、自分が好きな本を選んであるふうで、店主の本多博行さんはエッセイに「全部読んだのですか」ときかれることがあると書いていたが、たしかにそうきいてみたくなる感じがよくわかる。

本多さんがエッセイを連載しているのは『そらあるき』という薄い冊子だが、その記事を見ると、
『そらあるき 06』(2007.10)には、「用水路、路地を歩く」、
『そらあるき 07』(2008.4)には、「自転車に乗って日本海を見に行こう」、
『そらあるき 09』(2009.4)では、「金沢アートグミの活動について聞く」の記事があり、「図書館の司書さんが勧める『金沢』の本」として、玉川図書館の西口順子さんと、泉野図書館の小林京子さんが、各3冊ずつのおすすめ本を紹介している。
僕なりに、金沢に行ったらココを見よう!と選んだ場所があらかたおさえられている。僕もハナがきくと嬉しくもあり、すっかり先回りされていてややガッカリでもあり...
もちろん他に知らないところがたくさん掲載されていて、次に金沢に来るときの楽しみが増える。

二三味(にざみ)ブレンドというコーヒーをいただいた。能登にそういうブランドでコーヒーをだしている有名なコーヒー店があり、そのコーヒーを能登以外で飲めるという貴重な店なのだった。
夕暮れに歩き疲れて着いた店で、コーヒーの暖かさと香りに疲れがいやされ、コーヒーをいれてくれる人との会話も楽しい。近江に行ったときもこんなことがあった、あの旅もよかったし、この旅もいい旅になったと感じ入る。

甘納豆の壺を2つも持ってるのに、ここでも本を買ってしまった。リュックがちょっと重くなる。

→[東近江市立八日市図書館]

□ ひがし茶屋街 

あぶらとり箔座」で、あつこさんにみやげを買う。豪華に純金とプラチナ!(本物は買えないので...)

懐華楼」を見学する。夜は一見さんお断りで営業中の茶屋が、昼間は公開されている。たたみが草木染めで作られていて、とてもカラフルできれい。紅いのは弁柄、紺色のは藍、うぐいす色のはヨモギ、茶色がかったのはタマネギで染める。階段は鮮やかな朱塗りで、はなやかで非日常的な世界を作っている。

森八」で日本3名菓の1つの「長生殿」を買う。あと長岡市大和屋の「越之雪」は、新潟に行ったときに買った。残るのは松江の「山川」。いずれも米の粉と砂糖で作る菓子だというから、茶席に似合って名菓とされたようだ。

● すみよしや 
石川県金沢市十間町54 tel. 076-221-0157
http://sumiyoshi-ya.com/index.html

ふたたび浅野大橋を渡って市街に戻り、近江市場方向に歩いて、すみよしやに着く。
古い宿で、1803年には伊能忠敬が泊まったことがその日記に記されている。
あうん堂の本多さんは、蓮如がここに泊まったことを記した本があって、買ったと話されていた。
ほかにも歴史があるかもしれない。

夕食は、豪華とか品数が多いとかではなく、独自で、金沢の宿に泊まったかいがあるとしみじみ思うおいしいものだった。
焼き魚は、はちめという魚で、メバルの一種だという。蟹は身が豊かで味が生きている。こんかさばという保存食はちょっとしょっぱかったが、なるほどこういうものがあるのかと味わう。名物の治部煮もうまい。酒は金沢の菊姫。

翌朝の食事も、ありきたりでなく、過剰でなく、不足でなく、ぴったりはまる。
そして僕などには何よりのことに、これだけ満ち足りた思いにさせてもらって、高くない。

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第3日 大野庄用水から犀川河口へ
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きのう、おとといは、晴れと小雪が交互に繰り返して、雷まで鳴った。
でも今朝は、すみよしやの小柄な大おかみが、「今日は1日穏やかな日になるでしょう」という。
駅ビルの百番街の北のはずれまで行って、自転車を借り、コインロッカーに荷物を預け、恒例の河口ウォッチングに向かった。

□ 大野庄用水

犀川大橋のすぐ下流、右岸の水門からひかれる用水で、武家屋敷跡などが並ぶ一帯を流れて、木曳川と名を変え、犀川が日本海に注ぐ河口付近でふたたび犀川に合流する。
金沢最古の用水で、金沢城築城の材料を運んだという。大阪で手に入れた材料が、琵琶湖−海津−敦賀−宮腰港と運ばれ、用水を経由して金沢市街に届けられた。

犀川大橋から北には、金沢市老舗記念館、飴の俵屋長町店、長町武家屋敷跡など歴史的見どころが並んでいる。
観光客がたくさん歩いていて、アジア系の人も多く、あちこちで記念写真をとっている。

大野庄用水 旗を持ったガイドさんが、「屋敷に住む人は、釣りを楽しむために用水の水を庭にとりこんで、また水を用水に戻すという仕掛けを作っていました」なんて説明をしている。そうか、いい時に通りかかって、おもしろい話をきいてしまった。

用水は、中央小学校付近で北西に曲がって日本海に向かうが、その折れ曲がる地点のほんの少し北の先に、玉川図書館がある。

□ 石川県金沢大野からくり記念館・浅野川河口
石川県金沢市大野町4丁目甲2番29 TEL:076-266-1311
http://www.ohno-karakuri.jp/

金沢駅からは用水をたどらずに、西口から日本海に向かう広い通りを走って、浅野川の河口に向かう。
河口を見下ろす左岸の先端に、金沢大野からくり記念館がある。
金沢の幕末の科学技術者、大野弁吉に関わる記念館で、からくり人形が茶を運ぶ実演も見せてもらった。
内井昭蔵の設計は、地面からはえるようなザラっとした壁と、傘のような屋根を斜めになって支える木材の列に特徴がある。

からくり記念館の外観 陸地の先端にある建築は、海を背景にして、なんとなし哀愁を帯びて感じられる。

浅野川の河口はそう広くない。対岸にはいくつか白い石油タンクが並んでいる。
海も川も穏やか。波の動きも川の流れもなく、じっと静止しているふうだった。

□ 犀川河口の旧・宮腰港

浅野川河口から、南にある犀川河口までは、海岸に沿ってまっすぐな道があり、およそ2.5km。
おおの大橋を渡るあたりは、海岸寄りの一帯を工事中で、砂の丘にクレーン車がいくつか散っている。イタリアの不条理映画にでもでてきそうな景色。
まもなく道の海岸側に高いフェンスが現れ、あと延々と続いている。
途中、反対側にコンクリートの立方体のビルが現れ、「碁会所 喫茶」なんていう看板がかかっている。これもシュール。

犀川河口付近に着く。
道は河口よりわずかに内陸側にあり、川はそこから大きく左に曲がって海に向かっているので、道からは川が曲がった先の河口が見えない。
少し先に、大野庄用水(下流では木曳川と名前を変えている)が犀川に流れこむ地点があり、橋がかかっている。

さらに先に進み、犀川を越える小さな橋を渡る。
右に小さな港があるのが旧・宮腰港で、かつて水運の拠点だったところ。今は小さなボートが数隻泊まっているだけ。
振り返って上流側を臨めば、きのう見た犀川らしいゆるやかな流れがある。
すみよしやに泊まった伊能忠敬は、翌日宮腰に来て悪天候に悩まされた。
今日はよい天気だ。

橋を越えても、左岸の川岸は工事中で立ち入り禁止だし、その上の高いところには病院があって先に進めない。
結局、犀川が海に接する河口には近づけなかった。
犀川の河口付近

木曳川(大野庄用水)が犀川に合流する地点に戻って、川(用水)をさかのぼると、すぐ上流に「南無阿弥陀(なむあみだ)橋」がある。
さらにさかのぼると、神社がある。

□ 大野湊神社
http://oonominato.blog45.fc2.com/

名前に由緒が残るとおり、現在地に移転する前は海の近くにあり、宮腰港に出入りする船の守り神だった神社。
広い神社にはいろいろな方角から入り口があり、鳥居が立っている。
社殿正面の鳥居の前で、結婚式の前か後かで、親族が集まって記念写真を撮っていた。よい天気になってよかった。
この神社のブログに、この神社の社紋の説明があった。
http://oonominato.blog45.fc2.com/
「洲浜紋に波」で、「洲浜」とは、海に面した海岸に出来る三角州のことだという。

旧・宮腰往還を、かつて伊能忠敬が歩いたのと逆にたどって金沢駅に戻った。
浅野川河口にある金沢大野からくり記念館まではバスで行くつもりだったが、冬の北陸で犀川まで行くのは無理と諦めていた。思いがけず好天に恵まれ、風もなく、犀川の終わり地点まで行けてよかった。

(2010.2月 no.25)
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参考:

  • 『建築に生きる』谷口吉郎 日本経済新聞社 1974
    『雪あかり日記』谷口吉郎 中央公論美術出版 1974
    『谷口吉郎の世界』彰国社 1998
  • 『かなざわ偉人物語』(金沢こども読書研究会編 金沢市立泉野図書館刊 1-7巻 1997-2009
  • 『花美術館』vol.13 蒼海出版 2010.2.10
  • 『私の履歴書15』室生犀星ほか 日本経済新聞社 1962
  • 『金沢用水散歩』笹宮信行 1995
  • 『そらあるき 06』そらあるき編集部 2007.10
    『そらあるき 07』そらあるき編集部 2008.4
    『そらあるき 09』そらあるき編集部 2009.4
     http://www.soraaruki.com/
  • 今回はテーマに沿って並べ替えて記しました。実際の行程はおよそ以下のとおりです。(第3日にレンタサイクルを使ったほかは、すべて徒歩)
    第1日:
    ・ 西町教育研修館 金沢中央ビル 金沢商工会議所
    ・ 金沢市立玉川図書館
    ・ 大野庄用水(足軽史料館など)
    ・ 金沢21世紀美術館
    ・ 大衆割烹大関 片町のホテル泊
    第2日:
    ・ 兼六園 石川県立伝統産業工芸館
    ・ 石川県立能楽堂 石川県立美術館 石川県立歴史博物館 
    ・ ホテルアクティくず葉
    ・ 石川県立図書館 金沢歌劇座 桜橋
    ・ にし茶屋街(甘納豆かわむら 室生犀星記念館) 犀川大橋
    ・ 近江町いちば館 金沢アートグミ 浅野川大橋
    ・ あうん堂
    ・ ひがし茶屋街(あぶらとり箔座 箔座ひかり蔵 懐華楼 森八)
    ・ すみよしや泊
    第3日:
    ・ 浅野川河口 石川県金沢大野からくり記念館
    ・ 犀川河口 旧宮腰港 大野湊神社
  • 交通費:
    北陸フリーきっぷ 21,000 レンタサイクル 600(200*3h)
    宿泊費+夕食:
    ホテル 5,500 大衆割烹大関 4,200
    すみよしや 13,500 (2食に菊姫2合)