広島の図書館(福山・呉・広島)


広島で友人たちと9/3に会う約束をした。僕が関東から行くほかは、博多と岡山と広島に住む人たちで、3都市の中では中央の広島に集まることにした。僕と博多の友人は妻も一緒で、計6人になるはず。
僕らは9/2の岡山空港行きの飛行機に乗った。空港でレンタカーを借り、しまなみライナーで瀬戸内の島づたいに大三島に行き、伊東豊雄の新しいミュージアムなどを見たいと思っていた。あとは島の盛港から本州側の忠海港にフェリーで渡り、宿を予約してある呉に向かうつもりでいた。
ところが大型の台風12号が接近している。フェリーが欠航したらしまなみライナーを戻って遠回りしなくてはならない。海上の橋だから、道も交通止めになる可能性もあり、すると島から出られなくなってしまう。
島は諦めて、岡山空港から福山に行って図書館を見て、ああとは山陽自動車道を一気に呉に行くことにした。


1.福山市中央図書館 まなびの館ローズコム
2.呉市音戸図書館
3.広島市立中央図書館

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 広島県福山市
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 福山市中央図書館 まなびの館ローズコム
福山市霞町1-10-1 tel. 084-932-7222
http://www.tosho.city.fukuyama.hiroshima.jp/Toshow/

駅から南へ、歩いたら10分ほどかというあたり、中央公園の中にある。
周囲が広々して、とてもいい環境で、しかも池に面して姿がいい。
薄いコンクリート板のひさしが外観の印象を特徴づけている。
高い吹き抜けのロビーを入ると、閲覧室の天井は、コンクリートの格天井で、ごつく、重量感がある。水や薄いひさしやガラスの壁面で、気持ちいい水平感や透明感を作っておきながら、なぜ天井に重い格子を組むのか、理由がわからない。構造として必要はないだろうし、装飾としては重すぎる。
床の色と材質、書棚の色や配置、照明などはとても快適で、庭をみおろす窓際の椅子で読書していたくなる。

福山市中央図書館の外観 福山市中央図書館の内部

□ 河口ウォッチング・芦田川

鞆の浦を目指して福山市街から南に向かう。
水呑町という水に関するいわくがありそうな町名があり、水呑橋で芦田川を渡る。
河口から6キロほどのところで、左岸に福山競馬場がある。
対岸の土手の道を走ると、競馬場の長い低い塀と並行していく。
対岸から遠く眺めたところでは、平たくて、のどかそうな競馬場に見える。時間があれば、台風が近づいていなければ、寄ってみたいところだが、先へ急ぐ。

● 衣笠

鞆の浦から少し山中に上がったところにある中川美術館を見たかった。
中国美術を展示するユニークな美術館で、いつか行きたいと思っていたところなのだが、夏休みの休館中だった。

鞆の浦の海岸沿いの道に降り、衣笠という店で昼を食べた。
妻は鯛めし膳、僕はお造り膳で、おいしかった。

雨はまだ強くないが、海岸沿いにいると、嵐の接近が余計に感じられる。
鞆の浦の古い風情のある街並みを、車に乗ったまま右折や左折を繰り返して。風情をいくらか味わっただけで出てしまった。
島村利正の『仙酔島』という短編小説には、鞆の浦の沖の仙酔島がとても印象的に描かれているのだが、確かめる余裕もなかった。

福山西i.c.から西に向かい、広島市街を南に抜けて一気に呉に到る。
途中、ときたま雨に会う。まだひどく激しくはないが、台風の予感で景色がすさんで見える。


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 広島県呉市
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□ 大和ミュージアム 呉市海事歴史科学館
呉の造船所で作られた戦艦ヤマトを中心にしたミュージアム。
大きなヤマトの模型があるが、見おろして眺めるので、迫力がない。
かえって小さな人間魚雷「回天」に存在感がある。
宇宙戦艦ヤマトは全然登場しない。

□ てつのくじら館

道を渡って反対側に、黒い鯨の形の建築物が道路沿いに堂々とある。
えげつないハリボテを作るなあと思っていたら、実際の潜水艦で、とても興味深いものだった。
てつのくじら館

狭い空間だから、個室があるのは艦長のみで、それさえとても小さい穴ぐら程度。
潜望鏡を覗くと遠くの港の岸壁が見えた。

 呉市音戸図書館
呉市市民部音戸市民センター 内
広島県呉市音戸町南隠渡1-7-1 tel. 0823-50-0020
http://library.kure-city.jp/index.jsp


レンタカーに乗って呉市街を南に出る。
海面から高い位置にある音戸大橋を渡るとき、左遠方の浜に大きな勾配の屋根が見えて、たぶん目的地はあれだなと見当がついた。
実際に着いてみると、そのとおり、緩やかに孤を描く海岸に面して呉市音戸市民センターがあった。
市役所の支所と、公民館と、500席のホールと、図書館が入っている。
隈研吾らしい大らかさ、スケール感があり、浜辺の開放感に似合っている。

図書館は20時まで開館していて、僕らが着いたのはまだ明るいが市役所支所は閉まったあと。
一見壁のようだが、戸籍係とかの案内表示が飛び出ている前の通路を進んでつきあたりに図書館があった。
館内は全般に白が基調で、家具に黒い色が混じる。
木のブラインドが珍しい。

音戸図書館の外観 音戸図書館の閲覧室

郷土資料の棚を見ると、「TSSひろしま満天ママ!!2000回放送記念」に作られた『まんてん文庫01 満天ママスタッフのいちおしグルメ』(株)ザメディアジョンなんていう地元色いっぱいのガイドブックがあっておもしろい。
もちろんかつては軍事的地域だったから『呉・江田島・広島 戦争遺跡ガイドブック』(奥本剛 光人社 2009)など、戦争に関わる書も多い。

台風が近づいている影響か、ほかに利用者もないので、館長の村田忠義さんから、図書館のこと、音戸のことなどおききした。
平清盛が音戸の瀬戸を1日で切り開いたという言い伝えにあやかって、新しい音戸の端は1日で架けたという。あらかじめ組み立てておいて、1日でセットした。当日は予告にしたがって大勢の市民が見物に訪れた。
その新聞記事など関連資料が1つのファイルにまとめてあり、図書館資料として公開されている。
橋はあるが、渡し船も今も動いているとのこと。料金は70円。乗っていくといいと勧められる。

駐車場に戻って車に乗ったところで、明日会う予定の岡山に住む友人から携帯に電話がくる。
大型の台風が近づいているので、呉から広島に向かう呉線は今夜から運行を止めてしまう。明日も台風が去るまで運休を決めたという。
明日の朝、呉営業所でレンタカーを返して、呉線で広島に向かうつもりでいた。
友人達と明日の昼を広島で一緒にする予定だから、それまでには広島に行かなくてはならない。
まだ雨が激しくはないから、今夜のうちに車で広島に行ってしまうのが確実なように思える。
でもレンタカーとホテルの予約を変えなくてはならない。
早朝から長距離を移動してきて、かなりくたびれてもいてる。
レンタカーを借りたままだと、かえって束縛になることがあるかもしれないから、今夜のうちにレンタカーを返して、予約してある呉のホテルに泊まることにした。

市街に戻るのに音戸大橋を渡り終えると、渡し船の乗り場の前を通った。小さな小屋で、古びているけどかわいらしい。天気がよければ渡し船にも乗ってみたいところだが、そんな状況ではない。
市街に向かうと反対側が渋滞していた。中心部からの通勤帰りの車のようだ。
レンタカーを返し、その車で送ってもらってホテルに着いた。


● 呉海員会館(ビュー・ポートくれ)
広島県呉市中通1-1-2 tel. 0823-20-0660
http://www.viewportkure-hotel.or.jp/


船員向けのホテルに泊まるのは3度目。
広島は簡素な部屋だった。
宇部は簡素を通り越して、寒かった。
呉はちょっとしたシティホテル並みの快適さだった。

海割・自衛官割なんていうのもあるが、僕らは普通料金で泊まる。
それでも税、サービス料、朝食込みでひとり4,500円。
港に注ぐ川のほとりにあって、港も見える。
僕には最高のロケーションでもあり、とてもよかった。
ビュー・ポートくれからの河口風景

● 海軍さんの麦酒館
ホテルの1階にあるレストランに行った。
ご当地の呉吟醸ビールに続いて、吟醸酒「鉄のくじら」。
がんす天なんていうものがあって、白身魚のすり身をフライにしたもの。広島特有のものらしい。
たこガーリック焼きは、皿に盛られてくるのかと思っていたら、鍋にタコのぶつぎりが入っていて、下から熱しながら食べる。
最後には石焼じゃこ飯。
台風が近いのにグループ客が2つもあって、にぎやかに盛り上がっていた。

向こうの白い高層が宿泊棟。
手前の川沿いが「海軍さんの麦酒巻」。
ビュー・ポートくれ

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 広島県広島市
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朝、防災無線で「市市営バスは全面運休です」と放送しているのが、ホテルの窓から聞こえてきた。
朝食後、タクシー会社に電話して尋ねると「広島まで5,500円くらい」とのこと。
小降りなので、とにかく駅までと行ってみたが、電車はたしかに運休。
階段を降りて広島行きのバス停に行くと、数人の人が並んでいる。
バス関係の人もいて、きいてみると、まもなく広島行きのバスが来るという。
そのとおりにバスが来て、海岸沿いを走って、意外に簡単に広島に着いた。


現代美術館に行くにはタクシーに乗った。
でも運転手さんは現代美術館がわからない。
「ひじさんのところの」というと「ああ、ひじやまの」とわかってくれた。さらに
「まんが図書館のあるところの」と付け加えて言ってみると「うんうん」とうなづく。
現代美術館よりまんが図書館のほうが知られているようなのだった。

□ 広島市現代美術館『第8回ヒロシマ賞受賞記念オノ・ヨーコ展 希望の路 YOKO ONO 2011』
http://www.hiroshima-moca.jp/

台風にピッタリあってしまったけれど、この展覧会の会期中に広島に来られてしみじみよかったと思う展覧会だった。

ガラス壁の外に見えるのは『再建−また建てればいいんだ、いいんだ』という作品。
東日本大震災で壊れた家の部材やテレビや扇風機などの家具が置かれている。
見る者はそれを頭の中で組み立て、再建するよう指示される。
僕は津波の被害の惨状を見るたび、悲観的で後ろ向きの気分になっていた。
でも、また組み立てることを少なくとも想像しなくては次にいけないと気づかされる。
言葉による指示で見る側の心のバネをはじくような作品はオノ・ヨーコが若い頃から仕掛けてきたスタイルで、大震災にあたってそのスタイルがこのように表現されたのかとあらためて感嘆し、imagineとyesを根にすえるアーティストならではの作品だと感じた。

オノ・ヨーコの作品『再建−また建てればいいんだ、いいんだ』 作家:オノ・ヨーコ
CC:BY-NC-ND 2.1日本



『影』という作品では、人の形をした透明なオブジェが並んでいて、間歇的に強烈な光を受けると、人の形が闇の中に浮かびあがる。
暗い一室には『カバー』という作品。
人をくるんでいるらしい毛布が整然と並んでいる。人は死者であり、並んでいるというより安置されている。
僕は7月に石巻に行って、破壊された風景に圧倒された。そのとき、モノが破壊された様子は見ることができるけれど、たくさんの命も失われているのにそれは見ることができないことに−もちろん死体を見たいわけではないけれど−何か欠けているような、もどかしい、落ち着かない気分を覚えた。
たくさんの命が失われて、どこに行ってしまったのだろう?

2か月後に広島に来て、オノ・ヨーコの展示の前に立って、「ああ、ここにいた」と思った。
広島での展示は、時間的に遠くて距離的に近い核爆弾の被害者を暗示しているだろうけれど、時間的に近くて距離的に遠い大震災の死者も念頭にあるだろう。
死者に思いを寄せるアーティストがいることによって、石巻で感じた不安定な気分に落ち着きどころを与えられた。
この時代には悲惨なことがいくつもあるが、同じ時代にオノ・ヨーコが生きていてくれることをよかったと思う。
(石巻について→[東日本大震災後の石巻と仙台])
◇       ◇
その後、広島駅で友人達と落ち合った。
福岡から来た友人は、新幹線で順調に着いた。
岡山の友人は高速バスで来た。激しい雨にあい、距離的にはいちばん近いのに、いちばんたいへんだったようだ。
奈良から岡山あたりまでが暴風雨圏で、広島は外れたようだ。
このあと、原爆ドーム、原民喜詩碑(下の写真)、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館、広島平和記念資料館、イサム・ノグチの橋と歩いたが、傘がいらずにすんだ。

原民喜の詩碑と原爆ドーム

● シェラトンホテル広島
広島のお好み焼きを食べてから、ホテルに入る。

ラウンジで、目がひかれてしまったケーキを食べながらワインを飲む。
ちょうど季節と時間限定の宿泊プランがあり、豪華な部屋に安く泊まって快適だった。
シェラトンホテル広島

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 岩国・広島
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■ 錦帯橋

最終日はすっかり晴れてよい天気になった。
午前中は山口県・岩国に行って錦帯橋を渡った。
錦帯橋

□ 広島市環境局中工場 (河口ウォッチング−太田川)

北端に平和記念公園がある中州を、ずっと南端まで下るとごみ処理工場がある。
東京国立博物館法隆寺宝物館を設計した谷口吉生の設計で、大雑把にいえばその宝物館を清掃工場にしたふうな印象だった。
薄い水平線と垂直線を組み合わせてガラスをいれてある。
エコリアムと名づけて、内部も透明なガラスごしに焼却機械などを眺められる。

工場を通り抜けると太田川の河口に出る。
散歩する人や釣りをする人がポツリポツリといて、のどか。

広島市環境局中工場 太田川の河口

 広島市立中央図書館
    広島市中区基町3番1号
    http://www.library.city.hiroshima.jp/index.html

□ ひろしま美術館
   http://www.hiroshima-museum.jp/

空港に向かいバスの時間まで図書館と美術館に寄った。
美術館には前にも来たが、その頃は図書館が隣にあるのに気が向かなかった。
美術館にはいい作品があり、図書館もおもしろそうなところだが、軽く見て回っただけで、ゆっくりする時間はなかった。

広島市立中央図書館 ひろしま美術館

バスセンターから空港行きのバスが走り出すと、移転がすんで解体工事中の広島市民球場が見えた。

(2011.9月 no.88)
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参考:

  • 「仙酔島」 島村利正 『名短編 新潮創刊100周年記念 通巻1200号記念』荒川洋治編集長 2005 所収