フランスの香をかぎに


1.東京日仏学院メディアテーク-フランスの香をかぎに
2.フランス国立図書館-紙の本の未来は?

■ 東京日仏学院メディアテーク.
東京都新宿区市谷船河原町15
http://www.institut.jp/

飯田橋駅を降り、堀を渡り、坂を上がると、日仏学院がある。1930年代にル・コルビュジエの事務所にいた坂倉準三(1904 - 1969)が1951年に設計した。
本体から飛び出した階段塔がある。白を基調にして、なまめかしいような、彫塑のような造形のらせん階段が空に向かっていて、うっとりさせられる。
日仏学院のらせん階段

2階にあるメディアテークという名の図書室で、『Naissance d'une bibliothèque 』(図書館の誕生)というビデオを見た。
フランス国立図書館は、1367年にシャルル5世によって創立されたビブリオテーク・ド・ロワ(王の図書館)を起源としている。
ミッテランのパリ大改造計画、グラン・プロジェの1つとして、新しいフランス国立図書館が1996年に竣工した。
その工事の過程の映像にあわせて、ときおり設計者ドミニク・ペローが現れて建築の過程について語っている。中庭の森の造成など、こんなふうにできあがっていったのかとおもしろかった。

● 東京日仏学院 ラ·ブラスリー 
http://www.institut.jp/ja/brasserie

芝生の庭を歩いて別棟にあるレストランで昼食をとる。
ランチに、グラスの赤ワイン。
フランス的に鮮やかな色づかいの本館に、コルビュジエを思わせる階段に、非日本的感じが漂うレストラン。
手軽に手頃にフランス滞在感覚を味わえる。遠くに旅をしている気分になる。とてもいい。

■ ジャンヌネー前フランス国立図書館長講演

地下鉄有楽町線で飯田橋から永田町に行き、国立国会図書館で講演と対談を聴いた。

1. ジャンヌネー前フランス国立図書館長講演
  「インターネットと文化:チャンスか危機か」
2. 対談 ジャン-ノエル・ジャンヌネー氏
     長尾真(国立国会図書館長)

ジャンヌネー元館長の講演要旨:

今は電子化の大きな変革期にある。
その新しい技術は軽やかに受けとめるべき。
私は歴史家だから、印刷技術の発明と対比して考える。
印刷技術は、大学や僧院に限定されていた知識を開放した。ただし文化の不均衡ももたらした。ローカルなもの、少数派は恩恵を受けない。

デジタル化の進展も+-の2面性に注意すべき。
○ 文化の多様性、言語の多様性、最大の人が知にアクセスできる。
× 利潤追求、うそ、大量の情報を整理しないで伝えるのは過剰で乱暴。

私はグーグルの動きには反対。
グーグルは「1000万冊を無料で提供する」というが、
印刷の発明後、1億3000万タイトルほどが出版された。
1000万冊のデジタル化は、どういう基準で選ばれるのか。
アングロサクソンが優先されるのではないか。
「悪貨は良貨を駆逐する」ということは、情報についても同じ。
グーグルは広告収入で生きる企業。閲覧はタダではない。『雪国』を見るとアイスクリームの広告がでてくることになる。
人類の記憶を保管するのは商業施設とは一線を画すべき。
デジタル・データを、唯一つのアメリカ企業がもっているという状況は避けるべき。

フランス国立図書館の年間デジタル化予算は有名なサッカー選手1人の移籍金にも届かないが、私たちも、Europeana(欧州デジタル図書館)、ガリカ(フランス国立図書館のサイト)を運営している。

インターネットは使うべきもの。
複雑を簡単にする。
多様性を確認する。
小さな団体が固有性を確認する手段にもなっている。
知識は我らを豊かにする。

講演と、それに続く対談をききながらの感想など:

・日本から見ると、「欧米」とひとくくりにしてしまいそうになるが、アングロサクソンvsラテンの対立がある。ジャンヌネー元館長は、電子化によって英語の支配が強まるのを危惧している。
日中韓の漢字圏の連合の動きもあり、デジタル化には文化の覇権の争いの一面があるようだ。
元館長はグーグルを拒否していたが、後任の館長がグーグルと交渉を始めたと報道された。「こおりついたが、批判が広がっている効果もあった」という。

・長尾館長はマイクロ・ペイメントを進めたい考えでいる。
マイクロ・ペイメントは、新聞の記事やリンク、図書館の所蔵電子データを有料にして、その少額の支払いを電子的に決済するシステムのこと。
あとでインターネットで検索してみると、これまでいくつか失敗例があるくらいで、将来展望は明るくないらしい。

・長尾館長はデジタル化を当然のことという前提で話している。
でも、デジタル資料は劣化しないと当初考えられたが、その保存はやはりモノに依存するが、どう永続性を確保するか。
すべての資料をデジタル化できるものではないだろうが、実物資料との関係をどうつけていくか。
フランスの新国立図書館は、本が開いた形をし、木を多用し、中心に森を置いている。紙の本への敬意を表現たデザインで作られ、大量の収蔵能力をもつ。
デジタル化=善と、簡単に前提してしまうのではなく、総体として実物資料とデジタル資料をどう収集し、保存し、使っていくかという根本の構想をききたかった。

□ フランス国立図書館
http://www.bnf.fr/

2002年にフランス国内にあるル・コルビュジエの建築を見て回るツアーに参加した。マルセイユから北上してパリに至り、パリでは少しだけ、勝手に動ける時間があった。
新しい図書館は、巨大な本を立てた形の書庫が4隅にそびえ、その間を木のデッキがつなぎ、中央、地下レベルには森が繁っている。
フランス国立図書館は本の形

このあと自然史博物館に行くつもりでいて、そちらに大きな期待があり、(実際それは空前絶後、唯一無二というほどの大感動空間だったのだが)、図書館はあわただしく眺めてすませてしまった。今になるときっちり見ておけばよかったのにと思う。
なかなかパリは遠いなとため息をつきながら、日仏学院に行って食事したりコーヒーを飲んだりしてなぐさめることになる。
→ 国立自然史博物館についてはこちら

(2009.9月 no.8)
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参考:

  • 『Naissance d'une bibliothèque 』Madeleine Caillard, Bibliothèque nationale de France, 1995, 40mn, NTSC VO