ミュージアム・図書館・文書館の連携を話し合う


「日本のMLA=M(useum) , L(ibrary), A(rchives)連携の方向性を探るラウンドテーブル」が開催された。
講演会やシンポジウムでは、壇上の専門家の話を客席で聴くのがふつうだが、ロの字形に座ったパネリストの周りにギャラリー席を設けてある。「拝聴する」のではなく、「一緒に考えよう」スタイル。全員がひきこまれていく集中感があってよかった。

主催:特定非営利活動法人知的資源イニシアティブ
会場:鹿島建設KIビル多目的ホール
開催日:2009年10月19日
パネリスト:
岡島尚志 (東京国立近代美術館フィルムセンター主幹)
金容媛  (駿河台大学メディア情報学部教授)
栗原祐司 (文化庁文化財部美術学芸課長)
小出いずみ(渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター長)
後藤和子 (埼玉大学経済学部教授)
佐々木秀彦(東京都美術館施設活用担当係長)
高山正也 (国立公文書館長)
常世田良 (日本図書館協会理事・事務局次長)
豊田高広 (静岡市立御幸町図書館長)
保坂裕興 (学習院大学人文科学研究科教授)
水嶋英治 (常磐大学コミュニティ振興学部教授)
水谷長志 (東京国立近代美術館企画課情報資料室長)
柳与志夫 (国立国会図書館電子資料課長:司会)
行吉正一 (東京都江戸東京博物館都市歴史研究室学芸員)


自己紹介を兼ねてテーマについて考えがひとわたり述べられると、まずコレクション・マネジメントに焦点が絞られていった。

どのようにコレクションするか。
図書館では網羅的に集めようとする。コピーでもよい。
ミュージアムでは選択する。後世に残すべき価値のある作品を見極めることに学芸員の存在価値がある。オリジナルに価値があり、偽物は排除しなくてはならない。
文書館では、網羅することは物量の点から現実的に不可能だが、何を残すか、政治的判断が入りこむことがある。

コレクションにアクセスできるか。
図書館では公開が本旨になっている。
ミュージアムでは、資料は(企画の趣旨に沿った)展示や、研究のためにあって、常時・一般的に公開はされない。図書館にあれば公開されるのに、ミュージアムに収められると見えなくなってしまう。
文書館では、公開か非公開か、政治的判断が加わってアクセスが限定されることがある。

それぞれの領域の相違点が見えてきて、単純簡単に連携はできなそうだが、いくつかの提言があった。

コレクションの網羅、メタ・データの共有:
ミュージアムや図書館や公文書館が、トータルとして網羅を確保する。
そして館種をこえた横断検索ができるようにする。(たとえばミュージアムのコレクションが図書館の蔵書のように検索できる。)

内なるMLA:
資料の調査に行くと図書館では図書館のフィールドだけで答えようとする→図書館の人がミュージアムやアーカイブを想起する。
他でも同じ。職業倫理で、学芸員は学芸員らしく、司書は司書らしくと志向してきたのをかえる。
平等・客観的・禁欲的な司書から、学芸員的価値判断をする司書へ。
ミュージアムに死蔵しているコレクションを、図書館的に公開する。
ミュージアムに所蔵図書があったり、図書館でも展示機能があったりするから、まず内なるMLA連携を実践することは、すぐにも可能ではないか。
その目的は、もっている資料の公開にある。

紺屋の白袴:
ミュージアムや図書館が、自身の活動をしっかり記録していない。
それら自体が重要な文化的存在であり、設立からその後の活動まで、きっちり記録していくべきである。

       ◇       ◇

僕はたまたま美術館、自然系博物館、民俗資料も扱う博物館に勤務したことがあり、今は図書館にいる。ひとりML連携をしているようなもの。異動するたびに、それぞれのいわば文化の違いに驚かされた。
美術館から自然系博物館にいくと、資料の保存の丁寧さが1けたも2けたも違った。中には乾燥系植物標本のように24時間空調で管理しているのもあるが、岩石標本などはかなり粗い。対象と点数の膨大さもたいしたもので、あらためて「博物」という言葉の意味を思った。
図書館では、一部に直射日光があたる棚に本が置かれていた。美術館的感覚からすると許されざること。唯一、オリジナルということに特段の価値がなくて、初版でもサイン入りでも関係なく、代替可能であることにも目新しかった。(「稀覯本」になれば事情はかわるが)
そんな経験を経てきていて、「内なるMLA」という意見に共感した。それぞれが固有の慣習や考え方にとらわれなけらば、知的領域の活動がもっと活きておもしろくなるだろうと思う。

主催者としては、関係者だけの閉じた内輪の議論ではなく、外に向けて、現実的な法改正や制度改正にまで持っていこうというという意図があった。議論がそこまで集約しなかったが、終了後にチラホラ言葉をかわしたなかでも「今日の集まりはよかったね」と継続を期待する声があるほどに充実していた。

→ 第2回は、MLA(ミュージアム・図書館・文書館)の連携U (2010.6.24)

(2009.10月 no.14)

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