全国図書館大会奈良大会(第96回)


2010年9月16日(木)〜17日(金)
奈良県奈良市 なら100年会館ほか


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 第1日 全体会
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1.基調報告:社団法人日本図書館協会理事長 塩見昇
2.記念講演:亀山郁夫(ロシア文学者・東京外国語大学学長)


全国の図書館関係者が集まる大会が、今年は平城遷都1300年で盛り上がる奈良市で開催された。僕がいる図書館では、泊まりで出張させてくれるような余裕はなく、個人的に参加した。

全体会場は磯崎新の設計によるなら100年会館。JR奈良駅のすぐ前にあるから、外からはしばしば眺めているが、中に入ったのは初めて。
大ホールは、磯崎新のdark sideが表れた、黒い印象のつくり。
外観はくるりと丸まった形をしているので背が高い感じはしないのだが、大ホールの最上階の席から舞台を見おろすと、相当な高度感がある。

朝から天気が不安定な日で、一度明るい日が射してきて、もう大丈夫と思っていたのに、全体会が終わって外に出ると、また強い雨になっていた。
しばらく待とうと中に戻ると、中ホールで明日の第11分科会「図書館と出版流通」の準備をしていて、内部を見に入らせてもらった。
高い天井の先端は大きな弧になっている。大分県立図書館の入口ホールに大きな円の天井があるが、ここはその楕円(の一部)版。
その大空間の中に、透明な中ホールを入れ子状におさめている。
こちらはclear sideで、光と空間がトロリと官能的に構成されている。
この分科会には参加しないので、雨のおかげで素晴らしい建築を眺められた。
これで、今回の奈良旅行の大半の目的を達した感じになる。

なら100年会館の外観 なら100年会館の中ホール

□ 国際奈良学セミナーハウス
奈良市登大路町63番地 (2015.3.31閉館)

ほとんど東大寺の敷地といえるような位置にある宿に泊まる。
駅から東大寺に向かう主要な道に面しているが、土塀のあいだの小さな木戸をあけて入るので、目立たず、ひっそりして、とても落ち着く。
翌朝は東大寺の境内を散歩。朝日が木立ちの間に斜めに射して、すがすがしい。

今夜、「十七夜」の盆踊りがあることの案内掲示があり、とくに気がついていなかったので驚いた。
2年前、二月堂の院主で(この5月に別当になられた)北河原公敬さんにお会いしたのが、やはりちょうど盆踊りの日だった。東大寺がただ格式が高いだけでなく、間口が広く、懐が深いことは承知していたが、境内で盆踊りまであることに驚かされた。しかも生駒山を越えたすぐ先にある河内から、河内音頭の歌い手がやってきて、とてもリズミカルでノリがいい。
残念ながら今夜はその河内に住む友人宅に行くので、盆踊りには加われない。

→[荒川ゆらり 9月第3週 生駒山へ(寄居-生駒の6)]

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 第2日 分科会
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第9分科会(会場:奈良県立大学)
 「資料保存 地域資料をめぐる図書館とア−カイブズ−その現状と未来」


1 基調報告 藪田貫・関西大学文学部教授 (日本近世史)の講演概要

・ 「地域資料」から「地域遺産」に呼び変える動き
  大事なものを遺産として「守り、伝える」という意識変化

・ 地域資料は1つのものなのに分断される
  「1市民が文化遺産に囲まれて生きている」
   →住人が亡くなり、家が解体されると
     金目のものは骨董屋が持ち去る
     考古遺物にしか関心がない文化財保護課職員
     古文書にしか関心がない博物館職員
     図書の貸し出しにしか熱意のない図書館員

・ 法律も、文化財法、公文書法、図書館法に分かれている

・ 自治体史の編さんのときだけ、例外的に特権的体制ができて取り組む。
  これを恒常的にできないか

・ 地域資料を残すには、当面、やりくりするしかない
   「避難先」を確保する
   「守り手」としてのボランティアを見つける

2 事例報告@福島幸宏・京都府総合資料館主任 (日本近世史)
大状況:
・「公文書等の管理に関する法律」が2011年4月に施行される
・今後10年のスパンで見通せば、図書資料の多くは電子化され、図書館機能のかなりは代替される。図書館が埋没しないために図書館の将来像をどう描くか?
・起業支援、就職支援、医療情報は図書館の得意事項ではないだろう
・今までの蓄積を生かせる、「筋のいい」方向をめざすべき
   ↓
市民が情報にアクセスする中核機関へ:
・図書館にはすでに地域資料、郷土資料の蓄積がある
・どんな組織も公的存在であれば自らのアーカイブズを社会に公開すべき
・郷土資料概念を拡張する
   web情報、組織アーカイブズ、
   従来の図書館資料からはみだしたもの、こぼれたもの
・自ら資料を作り出す機関へ
 =地域、団体情報の拠点としての図書館へ
  「図書館が社会の根幹にあること」

3 事例報告A 長野裕子(滋賀県立図書館主査)
  「滋賀県立図書館における地域資料の保存活用に対する取り組み」

4 事例報告B 宮原みゆき(浦安市立中央図書館資料第2係長)
  「『改訂版資料保存展示パネル』について」

5 ワークショップ 真野節雄 (東京都立中央図書館司書)
  「図書資料補修の基本的な考え方と基礎技術」

感想:
○ 藪田さん、福島さんに共通して、図書館が従来より範囲を広げることを期待していた
○ 福島さんの意見にとくに共感した
  起業支援などより前に、図書館としてすべきことがあること
  =資料の保存と公開 価値を作る側への支援 自らが価値を作る
  電子化を見通したうえでの図書館のあり方を考えること
○ 4人の発表があったが、図書館外の発表者2人は大局的、横断的な話。
 図書館からの発表者は従来の延長上の話。
 分科会の構成上、たまたまそうなったとしても、図書館からの大局的な、図書館の枠を越えた話がなかったのが寂しい。
○ MLA連携の集まりに2度参加したことがあるが、ここでの話からも、将来的にはその方向に向かっていくことになる(べき)という思いを強くした。

(2010.9月 no.42)
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参考: