幕末の探検家 松浦武四郎と一畳敷展』


■ INAXギャラリー1『幕末の探検家 松浦武四郎と一畳敷展』
http://www.inax.co.jp/gallery/

京橋のINAXギャラリー1で『幕末の探検家 松浦武四郎と一畳敷展』を見た。
松浦武四郎(1818-1888)は、幕末に蝦夷地を探検・測量するなど、一生を旅した人。
晩年、神田の住まいに一畳の書斎を加えた。旅で知り合った人たちとの縁をたよりに集めた由緒ある木材を部材として使っている。法隆寺や、平等院や、かわったところでは渡月橋の橋桁など。極小の空間だが、松浦個人の思い出と、日本建築の歴史が凝縮されている。
松浦の没後20年して、徳川頼倫が営む私設図書館の南葵文庫に移築されたが、財政難に陥り、三鷹に建てられる別荘の一部として譲られていった。そこはのちに国際基督教大学となり、今も大学構内に現存しているという。

厳しい条件のなかで蝦夷地を測量し、その過程で知り合ったアイヌを守ろうとした松浦武四郎の情熱はすごいが、コレクターとしても並外れた人で、さらに自分が集めたものを永続させる意志の強さにも圧倒される。
手に入れた書簡などの紙資料は、松坂の実家に送り、屏風に仕立てさせる。散逸しないようにという配慮であって、家族が掛軸や巻物にしたりすると、それでは散逸しやすくなると苦情を言う。
河鍋暁斎に、自分を釈迦に見立てた涅槃図を描かせ、周囲に自分のコレクションを並べる。
柿渋のうちわを持ち歩いて、しかるべき人にあうと絵やサインをかいてもらいもした。
歴史の中に自分を位置づける確固とした意志が貫かれている。

おもしろいので、この展示にあわせて出版されたブックレットを買ったら、松浦が旅に持ち歩いた「野帳」を再現する横長の和紙を7枚も挿入してあった。
道中双六を折り込みで入れてもいる。
主題の人に敬意を表するかのように、1575円にしては、ずいぶん凝った、気合いの入った本だった。

       ◇       ◇

INAXギャラリー2では、『松井亜希子展−冬の水 うつろう光彩−』を開催していた。
大きな画面に、川か、用水路かで、水が堰を越えて流れの様子が激しく変化することろとか、遊園地の回転木馬の周囲を水が複雑に渦巻いているところとかが、描かれている。
どうどうと音を立てるようなダイナミックな水の動きが目に迫ってくるのに、近づいてみると、思いがけず固い線が見える。
画法を見れば、銅版とある。
固と流の思いがけない対比がおもしろかった。

□ TOHOシネマズ シャンテ 『しあわせの雨傘』
監督: フランソワ・オゾン 出演: カトリーヌ・ドヌーブ ジェラール・ドパルデュー

原題は「Potiche」。実用に役立たない飾り物の壺のことで、娘からそんなふうにいわれていた裕福な社長夫人が、夫が心臓発作で倒れると変身して、傘を作る工場を立て直し、自立していく。
かつて大きな瞳そのものに愁いをおびているようだったドヌーブが、軽やかで明るい魅力をみせている。
現実はそう簡単にはいかないだろう、ややおとぎ話めいた物語だが、フランス映画は「人生は・・なもの」と語るのが得意。
この映画は「人生はこんなにいいもの」ということをいっていて、最後にC'est beau la vie! (セボラヴィ)と歌う場面ではいっしょに拍手をしたくなった。

□ 藤屋画廊『六朝会展』
友人たちが年1回銀座で開催しているグループ展を見る。
高校時代からの友人、浜島義雄『りんどう』が、花の美しさにひらめきを受けて一気に描かれたかのよう。りんどうの存在感と画面の輝きにひかれた。

□ 日比谷松本楼
http://www.matsumotoro.co.jp/
その友人も含めて、3人の同級生とその妻たちの6人で、日比谷公園内のレストランで食事をした。今夜はお祝いの集まりだったのだが、料理は老舗に期待したほどではなかった。ここで仕上げるつもりだったのに、いい1日がおしまいに、ちょっと落ちた。
風と雨の中を着いたのだが、食事を終えて外に出ると星と月が鮮やかに光っていた。

(2011.2月 no.60)
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参考:

  • 『幕末の探検家 松浦武四郎と一畳敷』ヘンリー・スミス、安村敏信他 INAX出版 INAX BOOKLET 2010 1575円
  • 『人生凝縮「一畳」に 探検家・松浦武四郎の書斎ゆかりの地 巡礼』ヘンリー・スミス 日本経済新聞 2011.1.28