『写楽』展


□ 東京国立博物館『写楽』展
http://www.tnm.jp/

4月半ばに見に行ってしまったときは、3.11の地震と原発事故の影響で開会が延長されていて、空振りになってしまった。地震の影響で海外から借りる作品が止まり、国内の作品で穴埋めを準備しているとうわさ話を聞いた。

開会して5月半ばに行ってみると、写楽の全作品146図(総数は研究者により異説あり)のうち141点が展示されるという壮観だった。
展示されないのは、写真でだけ知られて今は所在不明だとか、所有者が非公開に指定しているとか、特別なわけありの作品ばかりで、ほぼ全容がそろったといっていい。
海外から借りる予定の作品で展示されなかったのは、
・ 『六代目市川団十郎の行成の息男みまな行教』ドイツ・ブレーメン美術館
のみだったようだ。会場に写真だけ掛けられ、地震の影響で展示できなかったと記してあった。

借りた先はイギリス、オランダ、ベルギー、フランス、アメリカで、それぞれ1館だけとは限らない。もともと美術品の輸送はデリケートなもので、まして海外からとなると作業量も気の使い方も増す。さらに今回は、貸す側にしてみれば地震は大丈夫か、放射線汚染はないかと心配して当然のところ。
ふつうのときでも、海外から作品を借りるには、展示室の温度や湿度、警備の体制など、作品の安全を確保するために詳細なデータを求められることがある。地震国日本にもともと警戒的な美術館もある。
会場には、海外の所有者の日本への支援の志で借りられたと謝意が表されていた。
とはいえ、支援の気持ちだけでアブナイところに貸し出すはずはないから、安全であることを説得するための東京国立博物館側の苦労の大きさがしのばれる。
写楽のそろいぶみに圧倒されたが、準備に関わった人たちの熱意にも感謝しながら感銘を受けた。

東京大学総合図書館、国立国会図書館、大阪大学附属図書館から関連資料がでていたが、ベルギー王立図書館からは写楽の作品1点が来ていた。

(2011.5月 no.68)
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