全国図書館大会多摩大会


全国図書館大会多摩大会 11.10.13(木)−14(金)
 第2日 第3分科会 電子書籍と図書館
 調布市文化会館たづくり くすのきホール

コーディネーター 小西和信(武蔵野大学文学部教授)
1 基調講演 湯浅俊彦(立命館大学文学部准教授)
   「電子書籍をめぐる図書館政策の動向とこれからの図書館の役割」
2 報告 橋元博樹(東京大学出版会営業局販売部長)
   「学術出版社の電子書籍戦略−図書館との関わりの視点から−」
3 報告 田中久徳(国立国会図書館総務部企画課長)
   「国立国会図書館所蔵資料のデジタル化と利活用の課題」
4 報告 時実象一(愛知大学文学部教授)
   「日米公立図書館での電子書籍利用実態と課題」
5 報告 河村宏(DAISY Consortium会長)
   「電子出版による知識アクセスのユニバーサルデザインの促進−DAISY4とEPUB3による開かれた国際標準のめざすもの−」
6 報告 島田貴史(慶應義塾大学理工学メディアセンター係主任)
   「慶應義塾大学における電子学術書利用実験プロジェクト」


(余計な?)前置き1:タブレット
auの携帯電話を使っているが、2012年7月で使えなくなるという。しかたなく新しい機種に交換しにいって、あわせてandroidのタブレットを手に入れた。
タブレットとモバイルルーターをセットで揃える。
どこに行ってもモバイルルーターを一緒に持っていれば、タブレットがインターネットにつながる。
タブレットは35,280円で、月割りにして1,470円を2年間払う。ほかに月6,510円(1年目のみ4,935円)の通信料がかかる。
モバイルルーターは携帯電話ほどの大きさ。
タブレットを持って外出すると、ちょっと持ち重りのする板(タブレット)と携帯2つ持ったような感じになる。

旅行先でつかえるパソコン(のようなもの)を欲しいと思っていた。
1 現地情報の確認
 図書館や美術館の開館状況などを調べる。
2 地図とナビ
 携帯にもナビ機能はあるが、画面が小さいので広い位置関係を把握しにくい。
タブレットはやや大きく重いが、カバーする範囲が広いので自分の位置と周囲の地理の把握に便利。
ナビでなくても、地図のアプリがあり、たとえば車窓から、あの山は何だろう、あの建物は何だろうと気になったことことが手軽にわかる。(地図でも現在地が表示され、近くのレストランやガソリンスタンドを選択表示できる。)
3 旅先でのメモを電子dataで保存する
 今まで紙のノートにメモして、あとでパソコンに入力するという2度手間をかけていた。
dataを複数点から共有するにはいくつかの方法があるうち、僕でも簡単に使えそうなDropboxにした。
このアプリケーションを家のパソコンとタブレットにインストールしておく。
あとはDropboxのファイルに文書を保存しておけば、パソコンからでもタブレットからでもアクセスできる。どちらかで文書を更新すると、他方からアクセスしたときにも更新後の最新dataを見ることになる。いちいちusbメモリなんかで移動する手間がなくて、これは感動的に便利だ。
もちろん旅先でメモするだけでなく、旅先で、事前に自分が調べておいたdataを参照するような使い方もできて、利用価値が高い。
4 旅先で気軽に本を読む
 今まで旅に出るときにはどの本を持っていこうかと悩んでいたが、タブレットがあれば電子書籍を読めるはず。タブレットを持ってしまえば、別に本を持つ重量を気にしないで本を読めるだろう。
−ところが、上記3つは期待どおりだったが、これは大はずれ。
電子書籍を検索しても、読む本がない(あるいは見つからない)。
機種に依存していたり、特定の提供者に特定の書籍群が限定されている。そもそも電子書籍の絶対数が少ないうえに、アクセスの経路が限られているから、もしかすると興味をもつ本があるかもしれないけれど、行き着けない。せめて収蔵元はまちまちでも一元的に横断検索できるシステムでもあればいいのだけれど、それもない。
おもしろい本があるとしても、そこに行き着くまでの道のりは気が遠くなりそう。
まだ電子書籍はつかいものにならないのだと実感した。

(余計な?)前置き2:電子書籍元年
昨年2010年は電子書籍元年といわれた。
「本を電子dataでもつことは、現行の技術では将来的に安定でないのではないか」という理由で僕は電子書籍を否定的に考えていたが、その2010年の7月に開催された東京国際ブックフェアに行って、考えを肯定に改めた。
電子書籍のための図書館のシステム例を見たり、電子書籍で知のあり方が変わるという革新的な見通しが語られるのを聞いたり、会場の熱気にあおられたということもある。→[東京国際ブックフェア(2010.7.10)
新聞でも連日のようにハードメーカーや出版社などの活発な動きが報道された。
ところが2012年、元号ふうにいうと電子書籍2年、電子書籍に関する報道はあまり目立たなくなった。タブレットを持ってみても、未だにろくに読む本がない。動きがとまったのだろうか?

(ようやく本題の)全国図書館大会第3分科会「電子書籍」:
大学図書館部会、出版流通委員会、著作権委員会、障害者サービス委員会の協同で企画され、多様な観点からの電子書籍像が聞かれてよかった。
大学では早くから電子ジャーナルによる論文参照という必要があったから例外として、一般には電子書籍の普及は停滞しているという認識の報告が続いた。
「離陸しない電子書籍」「100万円投資して1万円きり回収できない」というような言い方がされていた。
時実象一・愛知大学文学部教授の報告で、アメリカで図書館における電子書籍の普及が著しいのは、もともとオーディオ・ブックの素地があったからという説明があった。ベストセラーなどでも発売と同時に音に記録された媒体が売り出される。かつてはカセットテープ、その後CDやMP3などにおさめられ、それらが図書館でも借りられて、車を運転しながら聞く。
そういう下地がなかった日本で電子書籍の普及が進みにくいのは仕方のない面がある。
それにしても、先進的な国での進展に比べ、日本の図書館では電子書籍を活用した知の拡大再生産への取り組み遅い、したがって「喫緊の課題」だ−というという認識は各方面で持たれているらしい。(「喫緊の課題」なんて言い回しは何だか役所的だ)。
でも課題なのは承知してるよ、ではどうするのという、1歩先の内容を聞きたかった気がする。

具体的な内容があるのは「国会図書館の資料がデジタル化され、公立図書館や大学図書館で閲覧できるようにしていく」くらいのこと。
ところが、このデジタル化というのは画像処理にすぎない。田中久徳・国立国会図書館総務部企画課長の報告によれば、全文テキスト化するには、OCRで読みこむときの文字認識の精度が低く(おおむね90%で、古い文書はそれより低く、新しいのはやや高い)、確実なdataにするには膨大な経費がかかるという。
小説を読むくらいならまだしも、調べ物などしようとするには、画像処理だけの資料では知的生産性が低い。
生産性という言葉が市場原理的にすぎるなら、アクセスしやすさの問題といってもいい。
画像処理のデータでは求める知にアクセスしにくい。国立国会図書館は「真理がわれらを自由にする」という理念を掲げているが、真理に近づくのを困難にしている。

何だかすっきりしない報告が続く中で、河村宏・DAISY Consortium会長の報告は希望を感じさせるものだった。
EPUB3という電子書籍の規格があり、PDFより柔軟で使いやすい。DAISYの開発の中核にいる人が、EPUBの新版の制作にも加わり、DAISYの特徴であるアクセシビリティが電子書籍にくみこまれるという。
電子書籍を作る段階でDAISYの特質をもってしまうならこんないいことはない。

参考:「デジタル・インクルージョンを支えるDAISYとEPUB」(河村宏 情報管理 Vol.54 (2011), No.6

国内では、いくつかの図書館で電子書籍の貸出が始まっているくらいだが、湯浅俊彦・立命館大学文学部准教授は札幌市立中央図書館の取り組みを紹介した。
同館では、「いつでも・どこでも利用できる図書館サービス」を実現する手段のひとつとして電子書籍の貸出の意義を認めて、実験を始めている。そして
・ 既存の出版物の収集・電子書籍化
・ 地域資料の収集・電子書籍化
のために、電子書籍化する承諾を求めて図書館員が地域の出版社を回っているという。出版社や国会図書館が電子書籍を揃えるのを待つのではなく、自分たちで必要を満たす環境を作り出していく積極的な姿勢を湯浅氏は評価された。

       ◇       ◇

昼休みには12階のレストラン「たづくり」で食事をした。
公共施設に入っているレストランは味は期待できないことが多いが、ここはおいしかった。
南向きの大きな窓からは多摩川が東西に流れているのを望む。
かつて立川に住んでいた頃、多摩川の土手のサイクリング・ロードをよく走ったものだった。懐かしい。
同じ建物に調布市立中央図書館があるのだが、今は図書館システムの入れ替えのために休館中だった。(全国から人が集まるときに休館しなくてもと思うが、もちろん事情があるのだろう。)
ロビーでは、東日本大震災で被災した図書館の映像が流れていた。そのDVDを配布していたので1枚いただく。

今年の大会には、僕は2日目だけ参加した。きのうも参加した人に話をきくと、1日目の参加者が少なかったとのこと。関東圏の人が2日目だけ日帰りで参加というのが多かったようだ。
今年は距離的には近くて気楽だったが、来年は10/25,26、島根で開催される。

(2011.10月 no.81)
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