4月第1週 早春、カタクリが咲く


春の早い時期、寄居の町中の林に入って足下をみると、カタクリの薄い紫の花を目にする。
川の博物館の裏手の崖の斜面でも見られる。
地面から伸びた茎の先がいったん垂れ下がった先に花の中心があり、そこから花びらが重力に逆らうように上向きに咲く。独特なアクロバティックな形をしていて、バレリーナが踊るような優雅な味わいがある。

早春、木が葉を茂らせる前に花を咲かせ、葉が茂って陰になるころには、地上部が枯れて地下の根茎や種子で翌春までをひっそりと生き延びる植物のことを「スプリング・エフェメラル」と名づけられているという。エフェメラルは、妖精とかカゲロウとか、はかないものをさす言葉で、語感もいかにもかすかで柔らかい。それが単純に早い春に咲く花の愛称というわけではなくて、生態学的な定義だというのが、なんだかできすぎみたいな気がするほど。心ひかれる言葉だ。

たいてい林の底で見かける、小さくて、地味な花だが、花びらのツンと気取ったような形から、いつも僕はなにかしら欧風な花のような印象を受ける。
でも、学名は Erythronium japonicum。
古く万葉集にも残って、「もののふの 八十乙女らが 汲みまがふ 寺井の上の 堅香子の花」(巻18)の、堅香子(かたかご)は、カタクリと考えられているという。

また、食用にもされていて、片栗粉は、茎の澱粉を抽出したもの。ただし、今はふつうに料理に使われているのはじゃがいもから作られている。
全草を採取して、洗い、茹でてから、おひたし、天ぷら、油いため、汁の実、あえもの、酢の物、煮びたしなどにしても食べるという。知らずに食べていることはあるかもしれないが、意識して、カタクリを食べたという記憶がない。花びらのおひたしなんて、ちょっと食べてみたい。 寄居町では、数カ所に自生地があって、町の花に指定されている。
春先に見学会が開催されたりもしているが、町を代表するイメージとして、もっといかしていくといいと思う。
カタクリを使った名物料理なんてできると、いっそう楽しい。

ちなみに町の木は「ヤマザクラ」。町の鳥は「キジ」。
荒川の川岸の草むらにキジが走っていくのを、何度か見かけたことがある。
3つを一度に見るなら、寄居の町中で足元を見下ろすと、マンホールのふたにそろって描かれている。

寄居のカタクリ 寄居のマンホール


● 上野屋(うわのや)製菓舗のすまんじゅう
(埼玉県大里郡寄居町寄居928 tel. 048-581-0313)

街歩きに持っていて、ちょっとおなかがすいたときなんかに便利なのが、すまんじゅう。寄居、秩父あたりにあるものらしくて、まんじゅうの皮に発酵させたこうじを含ませて、皮がフカフカ、スカスカに軽くなってるのをいうらしい。あとでおいしいものを予定しているときでも、これなら重くなり過ぎない。
寄居の街では出身地を店名にしているのをよく見かける。こちらは上野(こうずけ)の国なのかと思ったら、隣の深谷市上野台(うわのだい)の出だということだった。
ここの芋餡(いもあん)が好きなのだが、この日はあいにくなくて、写真は味噌、こし、枝豆の3種。

上野屋の店舗写真 上野屋のすまんじゅう