6月第2週 雨の日に堀切菖蒲園

■ 堀切菖蒲園
(葛飾区堀切2 tel.03−3697−5237)

6月半ば、菖蒲を見に行こうとした日に雨に降られた。雨は苦手なのだが、菖蒲には似合うかと考えて、行くことにした。
そして、そのとおり、雨に似合って、大ぶりの、品種改良を重ねられてとりどりの意匠が並ぶ花々がきれいだった。

『かつしかブックレット13 花菖蒲U』によると、このあたりは、江戸時代、鈴木春信や安藤広重の錦絵に描かれたほどの、有名な景勝の地だった。
第二次世界大戦前まで、いくつかの菖蒲園があったが、食料生産のために田にかえられた。戦後に1つだけ復興した堀切園が、曲折を経て、今は葛飾区が管理する無料の公園になっている。まわりは住宅や高速道路に囲まれてしまっても由緒ある歴史をしのばせる。

この近くに半年ほど住んでいたことがある。吉祥寺から越してきたのだが、菖蒲を一度も見ないうちに、横須賀に仕事に行くのに便利なように横浜に引っ越してしまった。それから30年も経ってから、ようやく行った。怠惰さ、月日の経つことの早さに、今さら思い入る。
堀切菖蒲園 東武伊勢崎線堀切駅
高速道路を右に行くと、堀切jcを経て、荒川を渡り、右の写真にでる。 左に荒川。電車が向かって来る右手前が堀切駅。土手の斜面、中央付近が口をあけている下には、荒川と隅田川を結ぶ水路が流れている。

■ 堀切駅
(足立区千住曙町34−1)

菖蒲園の最寄りの駅は京成線の堀切菖蒲園駅(1931年開業)で荒川区だが、荒川をこえた反対側には、東武伊勢崎線の堀切駅があって足立区になっている。
堀切駅は1902年に開業したが、1923年に荒川放水路の掘削のために伊勢崎線がルートを変え、現在地に移転再開した。
ホームは低い位置にある。改札口をでて、土手を上がると、荒川が流れている。
土手の上で川に向かって立つと、右に、首都高速8号向島線があり、川の向こう側には堀切ジャンクション。
左に堀切橋
川面の眺めは、高速道路と橋にはさまれいるので、遠くから流れてきて、遠くに流れていく、川らしい情緒が、いくらか欠けている。
このあたりでは、隅田川と荒川がとても近づいていて、2つを結ぶ水路があり、駅のすぐ脇に水門がある。
3年B組金八先生は、このあたりの街が舞台で、実際にロケに使われた場所があちこちに散在している。

芝木好子の『奈良の里』という短編集に『堀切橋』という1編がおさめられている。堀切橋ができる前、堀切駅から土手を上がったところに木橋があったころの話。
新婚のころ、医師の夫が、木橋の向こうの診療所へ夜勤のアルバイトに通っていた。「私」も一度だけ同行して、その木橋を渡った。まもなく夫は自殺し、それから堀切を避けようとしている−という、ブンガクっぽい湿った話。
ちょっとなあ、と思いながら読んでいったのだが、ラストに、人の心の優しさがふわっと伝わってきた。むしろ久しぶりにいい読後感が残って、ブンガクも悪くない、と思った。

● 賞賛:( しょうざん)
(葛飾区東四つ木2−18−4 tel.03−3696−5665 )

堀切菖蒲園駅から新小岩駅に向かうバスに乗って、川端小学校前バス停で降りる。工事現場のプレハブ小屋みたいな外見だが、中に入ると、意外に奥が深く、居心地よくできている。ごてごて作りすぎてなくていい。

メニューはいろいろあって迷ったが、「熱々ぶっかけ肉うどん」を注文した。
白い大根おろしと黄色い生姜がのっていて、いろどりがきれい。
肉は薄いが、ふくふくして、感触も味わいも淡い感じが、なんだかいい。具の取り合わせがよくできているし、麺はコシがあってしっかりしていて、おいしかった。

食べ終わって、隣の男が頼んだのをのぞく。つけめん肉汁にかきあげのせだったか。つけめんのうどんは、もっとしっかりした歯ごたえがありそうな太いめんで、やっぱりそれを食べてみなくては、とすぐもう一度行きたくなった。
(でも、気軽に行くには、ちょっと遠いなあ..)

さぬきうどん「賞賛」外観 ぶっかけ肉うどん

参考:

『花菖蒲U』かつしかブックレット13 葛飾区郷土と天文の博物館 2002
『奈良の里』 芝木好子 文藝春秋 1988