9月第4週 寄居にも乳の山


浅草の真土山がなぜ待乳山になったのかわからないけれど、寄居にもきれいな乳の形をした山がある。
かつて長瀞の埼玉県立自然史博物館に通っていた頃、秩父鉄道の電車が寄居駅をでると、すぐ左、低い山並みのなかにツンと1つ、みごとなふくらみが突きだしていて、ときおり気になっていた。
最近、その山すそに仙元名水といういい水場があることを教えられた。そういうこともあるならと、ようやく思い立って行ってみた。

おっぱいの形をした車山 (この写真は6月に行った象ケ鼻
付近で撮影したもの)

■ 車山

でも、その仙元山じたいからは展望がよくなくて、北にある車山からは仙元山がよく見えるときいて、そちらに登ってみることにした。
歩くには遠いし、行く先の地理がよくわからないので右往左往するには車より便利かと考えて、自転車で向かった。
寄居駅からまっすぐ進んで、正喜橋を渡る。
すぐ右に折れ、鉢形城趾のゆるやかな起伏を抜けて、八高線の踏切を渡る。
線路に沿って左折していくと折原小学校がある、
その手前の道に曲がると、「車山」という案内標識があり、砂利道が終わるあたりで自転車を置いて山道に入る。
昨日までの雨で、道がときどきぬかるんでいる。
道を横切ってクモが糸を張っていて、ときどき顔にかかってしまう。
蚊が皮膚にとりつこうとする。
3重苦に悩まされたが、短時間で山頂に着いた。
標高はいちおう227mある。
残念ながら木が繁っていて、仙元山は、はっきりとは見えなかった。
木の間ごしに市街は見えて、駅前のスーパーマーケット「ライフ」、町役場、秩父方面に向かう有料道路の赤い橋げたなどが判別できた。

■ 仙元名水
(埼玉県大里郡寄居町三品)

仙元名水は、仙元山の麓に湧き出ている。
車山からは近くて、谷を隔てるくらいで隣り合っているのかと思っていたのだが、意外に距離があった。いったん平倉の集落に入り、観光ぶどう園を抜けて、開けた細い道を上がっていく。
木立の中に入ると、まもなく仙元名水の水場があった。
すぐそこで湧きでているのではなく、離れたところから導いてきたパイプから、激しい勢いで流れ出ている。
蜘蛛や蚊や汗で汚れた手や顔を洗い、さっぱりした。飲むと冷たくてうまい。
名水と別に流れてきている川の流れも速くて、大きな音をたてている。その音が気持ちいい。
あとから車でやってきた女性は常連らしいのだが、「今日は凄いね!」と話しかけられた。いつもはこんなに水量があるのではないらしい。
付近には、蛙や観音の像があり、注意書き、名水維持のための募金箱、その箱を保護するための傘などがあり、おまけにその傘は破れかけ、湿気の多いあたりだから苔がついて汚らしい。善意にしても人が構いすぎてうっとうしい。もっとひっそりと自然にあるといいのにと思う。
この山には、形からして当然のように「おっぱい山」の愛称がある。
おっぱい山の裾から名水が湧き出ているとすると、なにかしら神話的(あるいはエロチックな)物語がありそうだが、どうだろう?

■ 白髭神社
(埼玉県大里郡寄居町寄居町三品219)

来る途中にあった白髭神社に、市街に戻るときに寄り道してみた。
ごく小さな山の上にあって、「森山」と呼ばれる山全体が信仰の対象になっているという。

神社の本堂は小さいが、隣にある、小さな祠を置く岩がとても大きい。こんなものがあるなんて思ってなかったので、驚いてしまった。
案内板に「重忠が残す三品のひずめ石−折原かるた」とある。畠山重忠が馬で駆け上がったときにひづめの跡が残ったといういわれがあるという。
そこに根を置いているヒノキも大きい。
意外なみものがあった。
白髭神社の大きな岩

坂を下っていくとT字路に突き当たって、正面に折原駅があった。気づかずに通り過ぎるところだった。単線の駅で、駅員もいない。

● 喜楽
(埼玉県大里郡寄居町寄居998
tel.048-581-0200 )
http://kiraku-yorii.co.jp/

喜楽の入口には花が咲き、おしゃれなのれんがかかる

市街に戻ると昼少し前。
駅に自転車を置いて、喜楽にランチを食べに入った。
喜楽は、料亭で、夜が中心。最近、西川さんにランチもやっていると教えられて、数日前に初めていったばかり。バラチラシを食べておいしかったのだが、隣の客が食べていた膳もおいしそうで気になってしまった。
で、今日は「花ご膳」を注文。
刺身、天ぷら、吸い物などがのる。
天ぷらの揚げ具合がとてもよくて、うれしくなってしまった。カラっとして歯ごたえがいいし、油っこいしつこさがない。
それに動いてきたあとに飲む生ビールの感動的うまさ!
古代米をつかった、赤い色をしたご飯もおいしくて、ゆっくり味わい、かみしめながら食べた。


● 岸傳(きしでん)
(埼玉県大里郡寄居町寄居816  tel.048-581-0238 )
http://www.yorii.or.jp/~kishiden/index.htm

帰りの電車までかなりの時間があるので、ゆらゆら歩いて、今の時期の菓子はどんなのがあるだろうと、岸傳に寄った。
ひとつは柿。少し黄色くしたところいう。その前は緑色。もう少しすると、赤い、熟したのになるのだろう。
着せ綿(きせわた)というのがあった。9月9日の重陽(ちょうよう)の節句にちなむものだと教えてもらった。前日の夜、菊に綿をのせる。夜のあいだに、露と、菊の香がつく。9日の当日、その綿で顔を拭うと、若さが保たれるといういわれのあるものだという。
着せ綿の風俗は節句の日だけのものだが、菓子は9月中の茶会には使われるので売られている。
それと栗があり、1つずつ買った。

上:着せ綿
左下:色づきはじめた柿
右下:栗
和菓子3つ

そのあと町立図書館にも寄って、秩父線の電車に乗って帰った。
ウトウト、のんびりして、いい日だった。