1月第2週 隅田川七福神  


年明けに初詣にあわせて寄居七福神の1つに寄ってみた。隅田川にも七福神参りがあるが、細切れに近くをかすめながら、しっかりまとめて歩いたことがなかったので、七草も過ぎた8日の成人の日になってでかけてみた。

1 多聞寺 毘沙門天
墨田区墨田5-31-13 tel.03-3619-6002

七福神めぐりを北から南に向かう道順ですると、いちばんはじめがこの寺になる。東武の鐘ヶ淵駅から歩き出した。
観光情報などでは、七福神巡りは7日までになっていたが、1日過ぎても休日のためかスタンプなどが用意されていた。
小さなガイドブック300円に地図や由緒が案内してあって、各所でそれぞれのスタンプを押すようにできている。

草葺きの山門は1649年に作られた区内最古の建造物。関東大震災にも戦災にも残ったという奇跡を目の当たりにする。 多聞寺の草葺き屋根がのった山門

□ 木母寺(もくぼじ)・梅若塚
墨田区堤通2-16 tel.03-3612-5880

荒川沿いに向かうと、鐘紡(カネボウ)の跡地に高層団地が数棟並んでいる。高速6号向島線から巨大屏風が見えるうちの1つ。

東白髭公園のなかに木母寺がある。
かつてこのあたりに隅田の渡しがあり、伊勢物語で在原業平が「名にしおはば いざこととはん都鳥 わが思ふ人はありやなしや」とうたい、謡曲『隅田川』では梅若丸が息絶えた。
その梅若丸を葬った梅若塚を供養するために創建された寺で、木母寺という名前が寺にしてはなじまない珍しい名前だと思ったら、「梅」の字を分けて「木母」にしたというのだった。
塚はガラスとコンクリートで全体がすっぽり覆われている。この左には新しい納骨堂が四角い箱を積み上げる大胆な造形でつくられている。寺の主が建築好きなんだろうか。 塚ごとガラスの小屋に入っている

□ 隅田川神社
墨田区堤通2-17 tel.03-3611-3097

木母寺に続いてこの神社がある。
隅田川の総鎮守の水神社(すいじんじゃ)。
背後にある山がそっくりご神体という神社はよくあるが、ここでは高速道路が後ろに控える。まあすぐ下を隅田川が流れてはいるけれど。
本殿の入り口、両側に、狛犬ではなく狛亀がいる。それもSFかコンピュータのゲームにありそうな鋭い不気味な顔をしている。

隅田川神社の向こうには高速道路の高架 狛犬のかわりに怖い顔の亀がいる

2 白髭神社 寿老人 
墨田区東向島3-5-2 tel.03-3611-2750


白髭神社は近江の国(滋賀県)に総本社がある。
賽銭箱の向こうの廊下で、猫が気持ちよさそうに日向ぼっこしていた。
日向の幸福な猫

3 向島百花園 福禄寿尊
墨田区東向島3-18-3 tel.03-3611-8705

入口前に屋台があって、吉備団子5本250円。昼食前だから小腹すきだけれど、団子5本は多すぎるなと思ってのぞくと、ブルーベリーの実くらいのを4つ串にとおしたのが1本だから、てごろなようだ。
注文すると5本とりだし、湯の中の網にいれて温めてから、きなこをまぶしてくれる。やさしい味わいでうまい。
屋台で吉備団子を作る

向島百花園は隅田川七福神の発祥の地で、江戸時代に人気作家、蜀山人が、七福神を巡る遊びを考え出した。
庭の草木のあいだにたくさんの石碑があり、ああだこうだと蘊蓄(うんちく)しながら散策するのは楽しかったことだろう。
今日も、浮かんだ句を紙にかきつける人を見かけた。
茶店では七草粥を食べられ、七草をそろえて植えた小さな籠を土産に売っている。

□蝸牛庵跡 (露伴児童遊園)
墨田区東向島1-7-11
幸田露伴が「蝸牛庵」と名づけていた住まいの跡が公園になっている。
ここは去年の春歩いたところで、行程がずいぶん重なる。(→[ 4月第4週 露伴の家はカタツムリハウス])

● こぐま
墨田区東向島1-23-14 (鳩の街通り)
http://www.ko-gu-ma.com/index.html

向島という地名は懐かしい情緒を感じさせるが、一方では、現代美術製作所があって意欲的なアートの企画をみせているし、向島学会が、やはりアートと結びながらまちづくりに関わっている。
現代美術製作所は向島百花園から近いのだけれど、残念ながら今日は休みだった。七福神めぐりの人が気軽に寄ってフンフンと批評していったり、現代美術関係の人が百花園に寄って一句詠んでいったりするようだと楽しい。

2006年11月に、また新しい拠点が鳩の街通りにできたので寄ってみた。
1927年に建てられた木造家屋を改修している。関東大震災よりはあとにできたのだが、戦災によく無事で残った。
薬屋で使われていたときの様子を残してあって、ガラスに緑の文字で「化粧品 クスリ」なんて読める。
しっとりいい風情の店内

祁門(キームン)紅茶というものを初めて味わった。中国の高級な紅茶だそう。
ポットで供されるので、カップに3杯、澄んだ味わいでおいしいし、かなり歩いてきたこともあって、すうすうと飲んでしまった。
営業時間は「お昼頃〜19時まで」というちょっと緩い感じがいい。

4 長命寺(ちょうめいじ)  弁財天 
墨田区向島5-4-4 tel.03-3622-7771
有名な桜もちを通りに面した店で買うばかりで、寺に入ったことがなかった。
今日は桜もちを素通りして寺の境内に入ってお参りをした。
鷹狩りにきた徳川家光が境内の井戸水で薬を飲んで回復したので長命水と名づけたというが、井戸は今はない。
にぎわう長命寺の境内

5 弘福寺 布袋尊 
墨田区向島5-3-2 tel.03-3622-4889

黄檗宗の寺で、唐風の堂々とした独特の構えをしている。
堂内の広い空間の中央に布袋像がドンとある。
長命寺のすぐ下流側にあり、ここも幾度か通り過ぎていたので、こんな立派な寺だったかと今ごろ知った。

本堂の正面上に「天開泰運」の大文字を掲げてある。 色鮮やかな本堂正面

6 三囲(みめぐり)神社 大国神+恵比寿神
墨田区向島2-5-17 tel.03-3622-2672

かわった名前だが、狐が3度回って消えていったという故事によるという。
三井を囲う=守るということで、三井の氏神でもあるという。

          ◇          ◇

ようやくきっちりと七福神めぐりをした。それぞれに特色があって、楽しかった。
冬でもまだ日が高い時間で、そのあと寄り道したのは...


□ すみだ郷土文化資料館(墨田区向島2-3-5 tel. 03-5619-7034)で、ちょうど「隅田川七福神」展を開催中だった。

□ 牛嶋神社(墨田区向島1-4 tel. 03-3622-0973)では、法被(はっぴ)を来た男が十数人並んで木遣りを唄っているのにいきあたった。

□ 満願堂(吾妻橋店 墨田区吾妻橋1-19-16 tel. 03-3622-3128)に寄って、みやげに1個110円の名物の「芋きん」と大福を買う。

□ 江戸東京博物館まで歩いて下ると「江戸城」展を開催中。
(東京都墨田区横網1-4-1 tel. 03-3626-9974
http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/ )

チケット売場に「最後尾はここです」と札を掲げる係がでているほどの盛況で、展示室内も混んでいた。
欧州の宮殿展なんかだと、宝飾品や家具や食器など、きらきらした華麗な展示品が並ぶところだが、江戸城では、和紙に墨で線を引いた城の図面だの、発掘品のかけらだの、格段にジミで、それなのにこんなに人が入って、しかも熱心に見ているのは、よほど歴史好きの人が多いのだろうか。
(僕は人の頭のうしろからさらりさらりと眺めて過ぎる...)

● まつや
千代田区神田須田町1-13 tel. 03-3251-1556

両国まで下ってしまったので、浅草に戻るのも面倒だし、総武線に乗って秋葉原で途中下車して万世橋を渡り、「まつや」でひと休みした。
お酒を1本頼むと、蕎麦の実を入れた舐め味噌が突き出しに添えられる。
焼鳥は串にさしてない、そばにはわさびがない−という伝統ルール?がある。
日本橋あたりの有名蕎麦屋でもりを頼むと、ひとすくいで拾いあげられそうにごく少量だけ盛られたのがでてくるような店がある。腹が立つような、情けないような気分になる。
ここも名高い店だが、しっかりした量があるのがうれしいし、もちろんうまい。
混んでいるが居心地は悪くないし、ほろ酔いになる。
帰り道、交通博物館は、さいたま新都心に移転準備中だが、前の建物はまだそのままで、閉館のあいさつ文がでていた。
さすがに日が暮れてきて、秋葉原のビル群がにぎやかに輝きだしている。
電車に乗り、ウトウト機嫌よくまどろんで帰った。

参考:

  • 『隅田川七福神めぐり−墨堤名所案内』 隅田川文庫 2007
  • 『江戸名所 隅田川 絵解き案内』 棚橋正博 小学館 1998
  • 現代美術製作所
      東京都墨田区墨田1-15-3 tel. 03-5630-3216
      http://www.ask.ne.jp/~factory/
  • 向島学会 http://www.mukojima.org/
    *「学会」といっても難しい研究団体ではない。
     「向島」を、「隅田川、荒川、中川、綾瀬川、北十間川に囲われた地域」と、川で定義している。