5月第5週 隅田川河口の美術館で象が泳ぐ


ノマディック美術館で開催中の『グレゴリー・コルベール ashes and snow 』を見に行った。

ノマディック美術館:コンテナを積み上げた移動式美術館を斜め横からとる

りんかい線の東京テレポート駅から地上に出ると、美術館の建物の横に立つことになった。コンテナ4層を積み上げた妙な長い壁が立ちふさがるようにある。
コルベールの作品を展示するために構想された美術館で、2005年3月にニューヨーク、2006年にサンタモニカ、お台場には2007年3月11日に現れ、6月24日まで期間限定の展覧会場になる。それでノマディック=遊牧の美術館。

移動といっても、鉄製貨物コンテナは現地でレンタルし、現地で返却する。廃棄物をださない。
建築家、坂茂(ばんしげる)が設計した、永続しない大建築。
ノマディック美術館:コンテナが4層積み上がる

中に入ると紙管の柱が並んでいる。中央の廊下を進みながら、両側に吊り下げられた大きな写真を見ていく。
動物と人間が穏やかに存在している。人間はたいてい眠るような状態でいる。
高い天井がゴシックの教会のようで、照明も宗教施設を意識しているかのよう。命をまつる神殿とでもいうか。

突き当たりにはスクリーンがあって、動く映像が映し出されている。女性とチンパンジーがボートの上で、水を飲んだり、体に触れたり、ほとんどエロチックに感じられる時間を送っている。
展示は3列あり、もう2列にも動く映像のスクリーンがあった。
中央では1時間ほどの長い映像が上映されていた。
象が泳ぐのを水中から撮影するシーンに驚かされた。あんなドロっと重たそうな動物が泳ぐなんて思ったことがなかった。
水面近くに浮いて、4本の脚で歩くように水を掻いていて、その下を人が泳いでいる。
泳いでいないときでも、水辺にいる象は、陸を歩いているときとは違う存在感を示している。塊としての迫力。黒い、もっこりした量感。脚の爪。
これが象だ、という感覚と、見知らぬ動物を見る驚きの感覚の両方を覚える。
柱廊の間を鳥が飛び抜けていくシーンがある。コンピュータグラフィックスか合成かと思ったら、実写でない操作的な映像はまったく使っていないという。
もう1つ思い違いしかけたのは、写真作品は動く映像から静止画としてとりだしたのかと思ったら、映像とは別に、スチルカメラで撮影したものだという。

人と動物の生きる姿が写されているが、もう1つの主役は水で、生命と水の濃密な関係が前提にあり、背後にある。
荒川は岩淵水門で隅田川に分かれる。隅田川は、かちどき橋を過ぎても陸(というか人工物)にはさまれていて、お台場を過ぎてようやく海に出ようとする。
コンテナも海(水)を渡るものという要素をかかえている。
作品と美術館と立地とが、水をキーにして、かみあっている。

それにしても、『ashes and snow 』というタイトルの意味をまだ考えている。

ノマディック美術館:隣では花祭りを開催中だった