6月第1週 谷間の灰−埼玉県環境整備センター


前の週、隅田川の河口に作られた期間限定の美術館で『ashes and snow』という展覧会を見た。そのタイトルの意味がわからないうちに、荒川中流、寄居の谷間に灰を埋めているゴミの最終処分場を見学に行った。

■ 埼玉県環境整備センター
埼玉県大里郡寄居町大字三ヶ山368  tel.048-581-4070
http://www.pref.saitama.lg.jp/A09/BC01/index.htm

寄居町の三カ山(みかやま)という地域に、1988年、ゴミの最終処分場が作られた。最終というのは、これ以上処理のしようがない、燃えないゴミや、ゴミを燃したあとの灰を埋めることを意味する。
小川町との境界付近にあるが、三カ山は山とはいっても低い丘陵地帯で、その谷間に灰を埋めていく。やがて谷は埋め尽くされて平坦な土地になるから、そこは公園や運動場に整備される。

灰を置いていく谷間は斜面に囲まれているから、サッカーの競技場なんかに似ている。
1日分の灰をダンプカーで運び終えると、風でとばされないように土をかぶせる。
埼玉県環境整備センター:陸上競技場のような最終処分場

廃棄物の最終処分場では、廃棄物そのものの管理のほかに、水の処理も重要であることを教えられた。降った雨に灰の中の有害物質が溶けだして流れ出さないように処理しなくてはならない。
幾本か黒いパイプが地面からヌーと、とびだしていて、パイプにあけられた穴をとおして雨水はパイプの中に集められる。次に無害化処理をして、塩沢川に流し、塩沢川は荒川に流れこむ。
谷間の灰は、厚いゴムシートが敷かれたうえに捨てられていくが、シートの内側の水は、そのように処理され、シートの外側の地下水などは、また別系統で集められたうえ、同様に処理・放出される。
水質基準はとても厳しく、家庭からの雑排水のほうが汚れているという。

■ 彩の国資源循環工場

2006年には、環境整備センターの敷地内で、「彩の国資源循環工場」というものが稼働しはじめた。
最終処分場は捨てるだけの終着点だから、一方通行の終点で、遠からずいっぱいになってしまう。でも可能な限り資源を有効に使おうという発想で、ゴミを再利用するための工場が造られた。

・限りある資源を循環して使用する。
・最終処分場に埋められる灰の量が減るから、最終処分場を長く使える。
・ゴミの引き受け収入、再利用物資の販売代金、発電のうち、余剰電力の売電収入などにより、工場から収益が上がれば、税収にもなり、雇用も増える。

そういうといいことづくめだが、もちろんゴミが集まってくる量が増えるわけだから、再生に回るまでの間に環境汚染がないように、慎重に、厳格に操業されていかなくてはならない。

資源循環工場として9つの工場が操業しているが、この日、2つを見学した。

□ オリックス資源循環(株)

ここはPFI事業者といって、循環工場全体を統括してもいる。
いったんこの会社が埼玉県環境整備センター内の一定地域を借地したうえで、各工場の選定、使用契約、運営などを行い、この借地地域内は独立採算的に運用されている。

オリックス資源循環(株)じたいの工場は、ほとんどあらゆる種類のゴミを受け入れている。紙も、プラスチックも、食べ残しも、廃油も、汚泥も、分別しないままで処理される。
「熱分解ガス化改質方式」といって100%再資源化されるので、埋立処分に回る廃棄物がまったくでないという。
高温処理によって、気体のガスは発電に使われ、個体のスラグ、メタルなどは、建設資材や製鉄原料などとして再利用される。
分別なしで、100%再利用というのに驚かされた。

大きな工場を内側から見学する。
ガラス窓の向こうに、ダンプカーで運び込まれたゴミが大量に積み上がっている。
大きなクレーンでかきまぜて燃えやすくして、炉に送る。
ガラス窓のこちら側は、じゅうたんを敷いた床にコンピュータ仕掛けの運転室があって、無臭、無菌のクリーンルームといった雰囲気。
六堰の監視室もそうだったが、最新施設では、現場の熱気や臭気に満ちたナマナマしさと、操作する部屋のスズしさとの落差が激しい。
オリックス:膨大なゴミが集まる


オリックス:パイプが縦横に走る


オリックス:涼しくて清潔な操作室


□ 広域廃プラスチックリサイクル協同組合

わりと小ぶりな工場で、発泡スチロールを再生している。
説明のための部屋で実験を見せてもらった。ガラス容器に減溶剤というものが入っていて、発泡スチロールをいれると、すっと溶けるような感じでゲル化してしまう。
発泡スチロールは軽いけれどかさばる。こうすると体積が50分の1から100分の1まで減るので、用済みの発泡スチロールをゲル化したうえで工場に運ぶようにすれば、輸送コストが小さくなる。
工場では、分離・再生処理をしてプラスチック原料ペレットとして再利用に回す。これは元の製品と同じ品質があるので、何度でも繰り返し再利用できる。(ただし100の元製品から98の再生品になり、2%のロスがある。)
大きな量で発生する発泡スチロールをほぼ完全に再生できるから、小さな工場でも果たす役割は大きい。

          ◇          ◇

環境整備センターの案内施設に、開所前の時期と、開所後の時期の、航空写真が並べて展示されていた。前には低い丘陵が緑色の木々で覆われていたのに、後では緑が剥ぎとられて白っぽい建造物が建ち、道がうねっている。
ゴミの後始末のための施設がまた新たに自然を壊して作られる。
といって、環境整備センターがイケナイことをしているというのではなく、現代社会の暮らしようがこういう結果を招いているということになる。
ゴミの処理が、燃して灰にして埋めるだけでなく、再処理してまた使っていく資源循環型に転換しつつあるのは1つの前進だろうが、そもそも廃棄物の発生じたいを減らす、なくす暮らしようはできないものかと思う。

環境整備センターや資源循環工場で働く人たちの努力。
週に1度、代表3人が環境汚染がないかチェックにはいる近くに住む人たちの不安や負担。
丘陵を平坦地にしてしまうほどの自然への干渉。
そうしたことにはまた、多額の経費がかかってもいる。
日々の暮らしの最後の様子を見ると、さかのぼって日々の暮らしのありようまで考えさせられる。

● 鬼うどん 金勝 (おにうどん きんしょう) 
埼玉県比企郡小川町大字木呂子45
tel.0493-72-1901
 

環境整備センターをでて、国道254号を小川方面に向かう。バイパスと旧道が文治する信号があって、右の旧道に入る。埼玉県立小川げんきプラザの駐車場が左にある、ほんの少し先、道が左にカーブしている、左の曲がり際にうどん屋さんがある。
背後はすぐ金勝山の斜面で、木立がうっそうとしているし、道の反対側も林なので、山かげにひっそりとしてある−という独特の印象がある。

太麺の「鬼うどん」と細麺の「姫うどん」がある。
「鬼うどん」を注文すると、しっかりしたかみごたえがある、おいしいうどんだった。
「鬼」と「姫」が対語なのがどうしてなんだろうとちょっと考えてしまったがわからない。