10月第4週 元荒川の十三夜の人工月 


山の向こうに月がかかる

9月25日の十五夜には、小川町の金勝山から月を眺めた。
10月23日は十三夜で、両方の月見をすると願いが叶うが、片方しかだと片見月といって、よくないという。
十三夜も、どこか特別な場所まで出かけていく余裕がなくて、家の前を流れる元荒川に沿った道をひと歩きしてきた。ゆるやかに蛇行しているので、右に見えているのを眺めたあと、よそ見しながら歩いていて、また見上げるといつのまにか正面になっていたりする。
満月は3日先で、まだ左が少し欠けているが、それでも冴え冴えと明るい。
十五夜も十三夜も晴れた秋は珍しい。

十五夜は芋名月で、十三夜は栗名月とか豆名月とかいわれる。夕方、和菓子屋に行って、栗饅頭にしようか、豆大福にしようか迷って栗饅頭にした。
団子も買った。

庭の側の戸をあけるとすぐ前が元荒川で、春にははなやかな桜を眺められるのだが、月を見るには枝がじゃまになる。

家の中では月見ができないので、思いついて山の向こうに月が見えている状景を作ってみた。
東京・青山にある「ときの忘れもの」という画廊で去年買った関根伸夫『三つの山』というブロンズの作品を床に置く。
その向こうに、さっき買ってきた団子の1つを置いて、山越しに見える月−というつもり。
胡麻つきの団子なので、月面の凸凹までがリアルに再現されている?
山に月のしかけ:関根伸夫の彫刻の向こうに団子を置いて撮影した

関根伸夫は1968年、第1回現代日本野外彫刻展に『位相−大地』という作品を発表して衝撃を与えたアーティスト。
大地に円柱形の大きな穴を掘り、すぐ脇にその土で円柱を作った。そのデッサンには、「思考実験 裏がえしの地球−反地球の証明」と書いていた。
『三つの山』は小品だが、そういう宇宙的思考をする人の作品だから月見にふさわしい。

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翌朝、庭にでて空を見上げると、きのう月が昇りかけるのを見た東の空には、金星が明るく輝いている
南に上がりきったのを眺めたあたりには、オリオンの3つ星が並んでいる。
天頂にはふたご座の明るい3つの星が長い二等辺三角形に並んでいる。
今年、プラネタリウムに関わることになって、これくらいの星は判別できるようになった。今まではただ無意味でつながりのない光の点でしかなかった。
こういうことでも、僕はオクテで、知ること、気がつくことが、並みはずれて遅い。
でも遅ればせながらでも、夜空が見えるようになったことが嬉しい。

薄明るくなっていく空を見上げていると、双子座の間を人工衛星がす───と一定速度で西から東方向に過ぎて行った。
飛行機より高く速いし、流れ星ほど速くないから、人工衛星だろう。
地表から人工衛星が飛んでいるのが見えることは知識としては知っていたが、実際に自分の目で見るのは、これもこのときが初めてだった。