1月第4週(1) 池田一の水の展示を見に行く−川口  


■ 川口市立アートギャラリー・アトリア 『水箱アートミュージアム2008』
川口市立アートギャラリー・アトリア:
埼玉県川口市並木元町1-76 tel. 048-253-0222
http://www.atlia.jp/


出勤の途中、寄居駅の階段で「荒川を撮る会」を主宰する岩田省三さんにお会いした。川口市立アートギャラリー・アトリアで、会の写真展を開催中だという。何カ所か巡回してきて、最後の会場になるという。
ちょうど埼玉県立近代美術館の『ニュー・ビジョン・サイタマ』展を見に行くつもりだったので、あわせて写真展を見に行った。
アトリアでの『荒川を撮る会写真展』の次の企画は、池田一さんというアーティストの『水箱アートミュージアム2008』で、水に関わる展示がたまたま続いている。
またちょうどついでがあったので出かけた。

壁面にたくさんの人の3分割の写真が並んでいるのに圧倒された。1人につき、水に濡れた顔−水をすくう手−水がはげしくかかる足、の3枚をたてに並べてある。それが横に幾人分も並んでいる。
人に対すればまず顔に視線が向かいそうなのに、手にまず目がいった。
水をすくう手はいい表情をしている。
水をすくうのは命をすくうこと。
また水をすくうようにあわせた手は、「どうぞ差し上げます」とものを与える手でもあり、「どうもありがとう」とものを受け取る手でもあるように見えてくる。

僕が何とか生きていられるように支えてくれているのは何だろうとときたま考えることがある。
まず水。
それと大地からとれる穀物や野菜や果物。
(これだけあればなんとか生きられそうだが、あと、ちょっとした励ましの言葉とか、小さなことでも、あの人が僕のことを気にかけていてくれるいう心が伝わってくると、とても生きやすくなる。)

床には立方体=水箱が並んでいる。
アメリカで最大に水を使う人の1日の使用量1000リットルの大きさの箱。
日本人の平均的水使用量は324リットル。
人間が最低限必要とする量は50リットル。
でも、いちばんはしには、それに満たない量で暮らす砂漠地帯の人のとても小さな箱。
アトリア、池田一展。人間が1日に必要な水の量を示す箱。砂漠を歩く長靴

僕は数字だけではなかなか頭にスッとはいらないことがよくあって、こうして示されるとなるほどと実感的に理解できる。ただ、美術表現が絵解きになっているようで、美術としてはどうなのだろうとも引っかかる。

奥の1室では、「国際環境アートムーブ川口」の崔誠圭さんたちがした「川を造る」というワークショップの結果が展示されていた。
5歳の子どもから小学5年生まで17人が水槽に石ころや砂を入れ、思い思いの川を作った。
できあがった水槽=川を、高低差をつけて並べて、下りきった水はモーターで戻して循環させるようにして展示してあった。
崔誠圭さんたちがした「川を造る」というワークショップ
でも、子どもたちは水がうまくつながって流れていくようにということに集中してしまったのか、こういう川辺がいい!という明るさ、楽しさがもっとあるといいと感じた。

■ masuii R.D.R. 『芝川フラッグ・プロジェクト』
masuii R.D.R.:
埼玉県川口市幸町3-8-25-109 tel.048-252-1735
http://www.masuii.co.jp/rdr-top.html


『水箱..』展には第2会場があって、歩いて数分、masuii R.D.R.というギャラリーと店舗を兼ねたところで開かれていた。
こちらでは、池田一さんのほか、カモン・パオサワット、崔誠圭、相田ちひろ、児玉龍郎、NPOエコ・リンク・アソシエーションという、複数のアーティスト・団体が参加していた。
芝川の橋にフラッグをかけるという構想があって、屋外での実行前のフラッグを展示してあった。
芝川は見沼田んぼを流れて荒川に合流する川だが、市街地を流れるので水質が悪い。そういう川にフラッグをかけるとすれば、当然、単純に自然を賛美するようなのではなく、水の汚染という問題意識を前提にすることになる。

会場は1階から2階に続いているのだが、その階段がすさまじかった。
踏面(足をのせていく板の奥行き)がとても小さい。

建築基準法の最低基準では、蹴上げ(1段ごとの高さ)を22cm以下、踏面を15cm以上ときまっている。
もしかするとこの最低基準ギリギリではないだろうか。
しかもコンクリートそのままで、滑り止めがあるわけでもなく、装飾もなく、脇に手すりもない。
足をまっすぐ乗せられなくて、体を斜めというか、ほとんど真横にして、脇の壁につかまりながら昇っていくふうだった。
ほとんどトマソン(実用にならないオカシな建築)の1歩手前で、こんなの初めて見た。
体を横にしないと進めない階段

masuii R.D.R.の主宰者、増井真理子さんに話を伺いながら展示を見たのだが、昼近くなり、おすすめの食事の店も教えてもらった。

● 串まる
埼玉県川口市幸町2-17-1 tel.048-256-2455

細いにぎやかな商店街の中ほどにあった。
通りを歩いていて、たぶん前に通ったことがある道だと思い出した。
埼玉県立近代美術館にいた頃、川口市と共催でアーティスト・インレジデンスをした。打ち合わせか何かで市役所にいった帰り道にでも通ったのではないかと思う。
(ほぼ1年間にわたる共催事業が終わったあとも、川口市ではいくつかの美術関係の事業を実施した。美術館との共催事業が川口市立アートギャラリーが誕生する1つのきっかけだったと思う。)

串まるは通りから少し奥まったところにあって、落ち着いていて、中のデザインにも気を配ってある。

昼の串揚げ御膳(850円)には、5本の串揚げがついた。
こんにゃく(コロモと違う食感が新鮮)、たけのこ(細長い三角棒。たよりなげなやさしい味わい。)、きす(小さいが、薄くついたコロモがかりっとする。淡い魚の身と、軽い油みをおびたコロモがいい組み合わせになっている。)、えび(うん)、豚肉(これはもうひとつだった。コロモと分かれてしまう。)
串まるの膳

もう少し食べたいな、という感じが残るが、それくらいでいいのだと思う。
いい店を教えてもらって、トクした気分になった。

■ 彩の国さいたま芸術劇場映像ホール
『埼玉県文化芸術振興シンポジウム アートで地域資源を再発見する』


さいたま芸術劇場:
埼玉県さいたま市中央区上峰3-15-1  tel. 048-858-5500
http://www.saf.or.jp/index.html
さいたま芸術劇場

基調講演:財団法人アサヒビール芸術文化財団事務局長 加藤種男
活動報告:1.深谷シネマなどによる文化新興 竹石研二
       2.小江戸川越観光ルネサンス事業 中野みどり
討議:上記3人+跡見学園女子大学マネジメント学部教授 曽田修司
開催日:2008年1月25日(金)


午後、こういうンポジウムに行った。
この国では、アートについてのマネジメントとか、アートと都市との関わりなんかに関わってしまうと、現状も将来もつい悲観的になる。その点、自分の美学だけを追求していけるアーティストは幸福だと感じられるほど。
シンポジウムの参加者は、そういう状況のなかで健闘されている人たちで、少しづつ進めていくしかないのだろう。

竹石さんが主宰する深谷シネマの上映予定を見たら、近く『水になった村』が上映されるので見に行こうと思った。

参考: