1月第4週(2) オリオン大星雲〜オリオンライブ  


■ 金勝山でオリオン大星雲を見る
埼玉県立小川げんきプラザ:
埼玉県比企郡小川町木呂子561 tel.0493-72-2220
http://www.genki.spec.ed.jp/ogawa/


金勝山にある小川げんきプラザで「落ち葉で焼き芋」というイベントをやった。
山の中に大量にある落ち葉を集めて燃し、芋を焼いた。参加した人まで香りがうつって香ばしくなりながら、ほかほか食べていた。

参加者たちは、今夜は泊まって、明日は野鳥観察をする予定になっているが、夜には天体観測ドームと屋上で星空観察をした。
冬の星空は華やかで、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、オリオン座のペテルギウスで形づくる冬の大三角をはじめ、たくさんの明るい星が輝いていた。

いつか見てみたいと憧れていたオリオン座大星雲を見た。
天文の講師が望遠鏡をオリオン座の方向にセットしたところで、わくわくしながら小さなレンズを覗きこんだ。
ところが、写真で見ていたような「雲」ではなかった。
トラペジウム(不等辺四辺形)という4重星が、寄り集まった白い点としてある。少し離れて魚の口といわれる3つ星が、やはり小さな白い点として並んでいる。
粒であって、雲ではない。
え、こんなの?!という感じだった。
コマクサと同じだと思った。プロが撮影して、堂々と主役でおしだしている写真になじんで、ある程度の大きさのあるリッパな花だと思いこんでいたのだが、蔵王で初めて岩のあいだにひっそりと咲くほんものを見たとき、とても小さいのに驚いたことがある。
でも寒さに耐えて望遠鏡を覗いているうち、暗いところに目が慣れてきて、小さな粒の背景に、半透明のクラゲのようなモヤモヤした星雲が見えてきた。
でもやはり目だけでは驚かない。とても微かなものに、時間や空間への想像や、知識や記憶を動員して、ようやくはるかな思いにさそわれた。

僕は泊まらずに、星を見たところで山を下りた。
金勝山の急坂を、荒川に沿って東から西に延びる夜景を見おろしながら下る。
寄居の町並みへは、もう一段、河岸段丘につくられた坂道を下る。

■ オリオンライブ−寄居の電気屋さんのライブハウス
オリオンライブ:
埼玉県大里郡寄居町大字寄居992-5
tel. 048-581-0166 (株)オリオン商会


寄居にジャズのライブハウスがあって毎週土曜日に演奏があると、トンボの里公園で音楽祭があったときに柴崎猛さんから聞いた。
( → [9月第3週(2) トンボの里公園で音楽祭] )
なかなか機会がなかったが、オリオン大星雲を見ていてちょうど手頃な時間になったので、「オリオンライブ」という名のライブハウスにようやく行けた。
寄居駅から歩いて5分くらいの位置、正喜橋に向かう途中にある。
電気関係を扱う店の半分を演奏会場につかっているらしい。

ドアを入るとすぐに店の人がいて、1500円払う。
ドリンク1杯つき−なのだが、缶入りのコーヒーかお茶だった。
軽くつまみながらアルコール系飲料をボチボチ−と楽しみにしていたのだが、はずれた。

演奏はもう始まっていて、ほぼ満員の場内は30人くらいだろうか。
小さな丸テーブル、折りたたみ椅子、隅には、どこかに余っていたから持ってきたかのようなソファ。
ステージ壁は赤く塗ってあり、青や緑の照明がチカチカしている。
簡単に改造して作ったらしいチープな感じが、かえって素で生きている。
横浜に住んでいた学生のころ、よくでかけた黄金町駅近くのロック喫茶を久しぶりに思い出した。

店の名を思い出せなかったのだが、机の奥にしまいこんであったマッチの袋を探してみると横浜でなじんだ店のがいくつかでてきた。これは「クレオ」だった。
写真は、左から「塾」(伊勢佐木町・ロック)。
中央上のちぐさ(野毛・ジャズ)は去年あたり閉店した。
中央下が「クレオ」。
右の赤と黒の2色は「ダウンビート」(桜木町・ジャズ)。オリオンでステージ方向に歩いていってトイレに入る人を見かけて、「ダンウンビート」も音源である大スピーカの裏側にトイレがあったことを思い出した。

寄居のどこにこんなサマになる不良たちがいたかと思える人たちが集まっている。不良というのは、もちろん敬意をもっていっているので、男も女も、若いのも中高年も、何か自由な感じ、無頼な感じを漂わせている。
寄居の町はさすがに奥が深いと思い入る。
造り酒屋があり、歌舞伎役者が別荘をもち、わけありで流れてきたらしい画家の世話をし、渡し船があって色街があり、味にうるさい作家がほれこむ宿があり、など、数え上げていたら長々しくなってしまうが、そんないろんなことが積み重なってきて、今、電気業を営む人がミュージシャンでもあって、ライブハウスを始めている。

今夜の演奏は熊谷サウスサイドブルースバンド。
ここでは初めてというが、厚いキャリアを感じさせる、がっちりした演奏だった。
ハモニカとギターがボーカルでもあり、あとベースとドラムの4人。
ギターがせりあがり、ハモニカが空を駈け、ドラムが地響きをおこして、嵐に襲われたような、連れ去られそう!な感じに幾度かなった。
ずっと嵐つづきにならないのは、僕が初めて入った店で少し緊張してたからか、星空を見てきた寒さがまだ残ってたからかもしれないし、お茶かコーヒーかなので少し寂しい気分だったからだろう。(酒類もあるようなのだが、とにかく体が冷えているので、暖かいものが飲みたかった...)

オリオンライブの夜景:ひっそりした街に、ここだけ明るい。

店を出ると駅まで行く間にほとんど人とあわなかった。
通りは冷たい風に掃かれ、冴えた月明かりを浴びている。
雑多なものがなく、オリオン座の記憶も、オリオンライブの演奏の記憶も、日陰の雪のようにそのまま残っている。