5月第1週 相模川河口で荒川育ちのアーティストの展覧会 


■ 平塚市美術館
「村田朋泰展−夢がしゃがんでいる」


神奈川県平塚市西八幡1-3-3 tel.0463-35-2111

平塚市美術館

美術館の中がテーマパークになっていた。
展示室に入る前から、ミュージアム・ショップが村田朋泰展にあわせて駄菓子屋のように作ってある。
展示室には懐かしい家や路地を再現してあって、手作りの架空の街が構成されている。
(奈良美智が弘前の工場跡に、こんなふうに街を再現していたのを思い出す。)
村田朋泰(むらたともやす)さんは、1秒分を撮影するのに人形を15回動かして撮影する「立体アニメーション」を作る人で、架空の街のあちこちにその映像が仕掛けてあって、街が映像のなかの世界につながっている。

『檸檬の路』では図書館に通う人が主役。
高いところからみおろした風景が繰り返し映され、バイクに乗った男が、右から左へ図書館に向かい、左から右へ図書館から帰る。
閲覧室では本を読む。
昼になると片隅の席で持参のパンを食べる。
ただそれだけのとりとめのない日常で、起承転結のある話が語られることがない。それでかえってあの男はどんな気分で、何を読んでいるのか、あるいは今日も図書館に通っているだろうかと、想像をそそられる。

村田さんは荒川下流、西日暮里で生まれ育って、今も荒川遊園地に近い住宅街のアトリエで制作されている。

● ラ パレット (平塚市美術館内レストラン)

美術館があるのは、もと兵器工場の跡地で、美術館や博物館や会社など広い敷地を構えるところが多い。近くに食事をするところはあまりなさそうでもあり、美術館内のレストランがなかなか感じがよさそうなので、昼食に入った。
自然な食材にこだわったメニューで、こんにゃくハンバーグ、野菜スープ、サラダ、五穀米ライスに、コーヒーがついたランチにした。
それにグラスの赤ワインを加えて2000円程度。
重い味つけをしていない素直なおいしさで、店のふんいきもいいし、とてもよかった。

■ 平塚市博物館

すぐ近くにある博物館に寄った。
市民参加がさかんな博物館で、僕が埼玉県立自然の博物館で一緒に勤務した田口さんから、こどものころ平塚に住んでいてよく博物館の事業に参加したと聞いた。今は博物館で指導するような人を育ててきたことになる。

平塚市の大きな航空写真を眺めていたら、ボランティアの方が説明してくれた。
ベルマーレ平塚のグランドはどこ?すぐそこ。(と博物館からすぐ近くを示される)
相模川河口、右岸に四角い窪みがあるのは何かと思ったら、外海に面しない、安全な港を作ったのだという。でも高くて使われてないというので、え?外の海から離して作ったのに波が高いことはないだろうに...と思ったら、使用料が高いので敬遠されているのだった。

今日は時間に余裕があれば相模川を見に行こうかと思っていた。
でも航空写真を見ながらいろいろ聞いてしまったし、僕が河口に行こうかという日がいつもそうであるように、今日も雨の気配がたっぷりなので、河口ウォッチングには行かないことにした。

● 香川屋分店 

それで茅ヶ崎に行った。
バス停を降りて、開高健記念館=海岸方面とは逆方向に歩いて、開高健が好んだという肉屋さんに行った。
茅ヶ崎はサザンオールスターズの地でもあって、サザンコロッケを買った。
(天気がよければ海岸でビールを飲みながら食べてもよかったのだが、あいにく空があぶなそう。家に帰ってから食べたら、柔らかいバッグにいれて持ち歩いたためか、サザンのようには元気のないコロッケになってしまっていた。)
香川屋分店

■ 開高健記念館
神奈川県茅ケ崎市東海岸南6-6-64 tel. 0467-87-0567

開高健が暮らした住まいをほとんどそのまま残して記念館にしてある。
書斎には、遠くまで行って獲得した魚や獣の剥製を壁にかけてある。
ここから旅に出て、ここに獲物を持ち帰り、ここのあの机で原稿を書いていたのだな−とシミジミする。
開高健を読んでいると、僕には文字が線香花火のように感じられてくる。赤い珠に凝縮したときの線香花火のように、ウルウルとふるえて熱を帯びている。

開高健は僕にとっては憧れと導きの師であって、早い死が惜しい。
亡くなって惜しいひとはたくさんいるが、まずそれなりに残すべきことは残したと思いたい。でも決定的に早すぎる死が惜しいと思われるのは、ジョン・レノンと開高健の2人。生きて、もっと音を、言葉を残してほしかった、生きていたらこの世に生み出され、伝わったはずの音、言葉が永遠に失われてしまった、という喪失感に、幾度となくとらわれる。

石に文字を刻む−明日世界が滅びるとしても、今日あなたはリンゴの木を植える 開高健

参考:

  • 『生は荒川、名は村田朋泰』 (dvd) 来海昌哉監督
    『ルリカケス〜八釜磯辺と満月定休日〜』 村田朋泰 講談社 2007
    『村田朋泰全絵コンテ集』 目黒区美術館 2006