11月第2週(4) 鶴見線に降りたアートたち展+多摩川アートラインプロジェクト


■ 駅2008 鶴見線に降りたアートたち展

京浜東北線の大宮から大船に至る長い路線は埼玉県内区間も東京都内区間も神奈川県内区間も、何度も利用してきた。ところが鶴見駅から海岸に向かって走る鶴見線には、ずっと昔から気になったまま、一度も乗ったことがなかった。とくに、そこからさらにわかれて盲腸のように行き止まりになる海芝浦なんて、どんなところだろう?
その沿線にアート作品を置くイベントがあって、これこそいい機会と出かけて行った。

□ 国道駅−高明根

鶴見駅の次の駅。最初に降りた駅から興奮してしまった。こんな駅は見たことがない!

高架のホームから降りていくと、地面まで降りる前に空中廊下があって上り下りのホームをつないでいる。そこにアーティストの作品−高架下の通路と鶴見川の水面の映像−を展示してあった。

地面まで降りて改札を出る。
上り下りのホームの下が,それぞれビルになり店舗が並んでいて、ホームにはさまれた線路の下が中央通路になっている。簡潔でわかりやすい構造だが、他にはこのスタイルの駅を見たことがない。法規的な規制でもあるのだろうか。
午前中は魚市場、午後は花月園の客でにぎわったというが、今はくすんでいる。
朝早いせいか店は閉まっているのだが、遅い時間になればもっと活気があるのかもしれないし、いつか出直してみよう。
ホームに戻ると、フェンスに「この附近はカモメ公害が発生しています。頭上に注意してください。」と注意書きがある。さすが港町。
ちょうど海芝浦行きの電車がきたので乗る。
国道駅を出るとすぐに鶴見川を渡る。

□ 海芝浦駅−林武史

電車は浅野駅で扇町行きの線路から分かれ、運河に沿って走る。
海に面する方角に向きをかえても、人工島にさえぎられて、広い海の景色が広がるわけではない。
終点の海芝浦駅は、海(または運河)に面している。ホームのフェンスのすぐ先には水。
駅は東芝の敷地内にあるので、東芝に関係ない一般客は改札口から外に出ることができない。海芝浦7時58分に着いて、戻る電車の時刻を見ておこうとホームにあった時刻表を見て驚く。すぐに8時01分発があるが、その次は9時18分。いくらかわった眺めでも、このホームに釘付けになったまま1時間以上待つのはつらい。
作品を見るのは諦め、あわただしく何枚か風景を写真にとっただけで、乗ってきた電車にまた戻った。
国道駅でちょうど海芝浦駅行きが来たのは、たいした幸運だったわけだ。

浅野駅と扇町駅の作品も見たが、鉄道の眺めに興奮して、作品に向かう気持ちが薄まってしまっていた。
扇町駅から南武線、京浜東北線に乗り継いで蒲田駅にでた。

■ 多摩川アートラインプロジェクト

で、蒲田からは東急多摩川線に沿って別のアートプロジェクト。

□ 矢口渡駅〜新田神社〜武蔵新田駅
  浅葉克己『LOVE』『卓球台』


矢口渡駅で降りて多摩川の土手まで歩いた。
相模国と武蔵国の境の川をこえる「矢口の渡し」があったあたりで、6月に国立劇場で見た『神霊矢口渡 頓兵衛住家の場』の舞台だ。
[2008年6月第3週 多摩川・矢口の渡しから隅田川・かちどき橋 (寄居-生駒の2) ]
とくに渡しがあったことをしのばせるような特別な景観や地理的特徴があるわけではない。かつて立川に住んでいた頃、休日には自転車で多摩川の土手をよく走ったもので、そこから続くなじみのある風景が広がっている。一度だけ自転車で川崎まで走ったことがあるから、ここも通ったことになる。

武蔵新田駅に向かう途中に新田神社がある。歌舞伎の話のもとになった史実として、新田義興が矢口の渡しで船頭らに謀られ、船を沈められて討ち死にしたということがある。その後、新田義興の怨霊が現れて災いをふりまくので、恨みを鎮めるために神社が造られた。

浅葉克己の『LOVE』という作品。
神木の根元に黒い石がある。4分割された枠に、LOVEの文字が1つずつ刻まれ、Oの文字の中に鳥居の形が赤く描かれている。
LOVEの文字を重ねるのは新宿にあるロバート・インディアナの作品に似すぎるように思う。
奥には『卓球台』があった。石の卓球台で、ネットが張ってあり、ラケットと球は神社で貸してくれて、本当に卓球ができるようになっている。
この日は七五三のお参りの家族が幾組もいたが、正装では卓球する子はいないようだ。

□ 鵜の木駅−鴻池朋子「Sixth forest」

駅の正面の壁や柱に、黒い闇の中に生きる生き物の絵が描かれている。
鵜の木駅というのは変わった名前でもあり、大学時代に友人の福島富士郎がしばらく暮らしていたところとして記憶にある。
この日、帰ってから、鵜の木駅の現況の写真を福島富士郎にメールで送った。
「懐かしい。あまり変わっていないようだ。鵜の木から次のアパートに越す時、渡辺が来て手伝ってくれたよね。」という返事がきた。
学生時代、ほかに池亀芳彦や門田陽なんかと、ひんぱんに引っ越しの手伝いをしたり、されたりしていた。でも鵜の木からの引っ越しは思い出せない。僕が忘れたか、福島が他の誰かと勘違いしているか。今ではもう確かめようがない。

□ 多摩川駅−関根伸夫『位相-大地』

「駅2008 鶴見線に降りたアートたち展」の一番の目的は海芝浦駅だったが、こちらの一番は、現代美術史の伝説的作品、関根伸夫『位相-大地』の40年ぶりの再制作。1968年に須磨離宮公園で作った元の作品は見たことがないので、楽しみにしていった。
多摩川駅から公園のなかの坂を上がると、芝地の中央に作られていた。


残念なことにかなり離れた位置にロープが張ってあり、作品に近寄れないようになっている。警備員までいて穴に落ちないように配慮してある。方がないとは思うけれど、穴の底が見えるところまで近づき、円柱の間近で土の肌、量感を確かめてこそではないかとも思う。これだけ離されては写真で見るのとたいして違わないようで、拍子抜けした。

離れて見ると、ハラミュージアムアークにあるウォーホルの巨大な缶「キャンベルズ トマト スープ」(1981)を思い出した。
キャンベルスープ缶は高さ305cm 直径198cm。
関根伸夫の土柱は高さ270cm直径220cm。
ほぼ同じ大きさをしている。

今週は川とアートを集中的に見て歩いて、せわしいが充実した1週間になった。