12月第1週 桂川から淀川


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 第1日
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紅葉の京都に行った。妻と京都を旅するのは初めて。

■ 京都芸術センター
京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2
tel. 075-213-1000
http://www.kac.or.jp/


1993年に統廃合のため閉校した明倫小学校を芸術拠点につくりかえた。
元は1931年の建築で、ていねいに作られたことが外壁や門の意匠に伺われる。
教室の1つが図書館になっていた。美術や演劇などに特化した蔵書が4000冊。展覧会のカタログや、アート関係のイベントを記録した映像もある。
近くに住んで、散歩感覚で来られたらすてきだと、残念のような、うらやましいような。

● 東華菜館
京都市下京区四条大橋西詰 tel. 075-221-1147

古めかしいエレベータで4階に上がって窓際の席に座る。眼下を鴨川が流れていて、対岸には南座があり、その背後には東山の峰々が連なるという好展望が広がる。
いかにも中華料理の店という内装、雰囲気で、これがヴォーリズ、1926年設計の建築かと不思議な思いがする。でも元は矢尾政というフランス料理店として作られたときくと、いくらか納得する。
干烹蝦(揚げエビと胡瓜・椎茸の甘酢がけ)、炒肉片(豚肉と筍・胡瓜・木クラゲの炒め物)、五色炒飯(かやく入り炒めご飯)、青島ビールを注文する。
ほかにスープもとったら、たぷたぷと大量にあった。
たっぷり満ち足りて、2人で5000円ちょっと。建築、内装、景色、味、量ともに存分に味わった。

■ 何必館・京都現代美術館
http://www.kahitsukan.or.jp/

小さなビルが現代美術館になっている。
大きすぎないのがむしろ快適に楽しめる。
圧巻は屋上庭園。エレベータで最上階に上がると、小さな庭があり、その部分は屋根がなくて、日の光も射すし、雨も降りかかる。空気が空に向かって抜けている。こんなビルを1つ持ってみたい。

■ 桂離宮
http://sankan.kunaicho.go.jp/guide/katsura.html

紅葉の桂に行った。
木の建築と草木で構成されているという先入観があるが、石も大量、多様で、むしろ石の離宮という感じがあるほど。

狭い道を回遊していくが、新御殿にいたって広い芝の庭が広がり、書院が雁行していく。モンドリアンのようでもあり、ピアノの鍵盤の美のようでもある。
ブルーノ・タウトは長い憧憬がみたされたと感激したのだが、気のむくままに歩いてこそ、とも思う。
夜の月見台に座って、月の景色にひたってみたいとも、叶わないことを思った。


● 堂島ホテル
大阪市北区堂島浜2-1-31 tel. 06-6341-3000
http://www.dojima-hotel.com/

紅葉の時期の週末の京都は宿をなかなか確保できなくて、苦しまぎれで妙なところに泊まるよりは大阪で好きに選ぼうと考えて、堂島ホテルに予約した。
大阪駅から歩いて堂島川の手前にある。
(堂島川は旧淀川の下流部の名称。旧荒川が隅田川なのと同じような関係にある。)
重厚な入口を入ると、両側の壁が本のディスプレーになっていて、ガラスの中には大型の美術書や写真集が置かれている。こういう本の使い方もある。
ツインの部屋では、ベッドの脇が透明なガラス壁で、その向こうの浴槽がまる見え。いつかこんなラブホテルがあったっけ。

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 第2日
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■ 大阪市立東洋陶磁美術館
大阪市北区中之島1-1-26 tel. 06-6223-0055
http://www.moco.or.jp/


堂島川を中之島に渡って上流に向かって歩く。
住友グループから大阪市に寄贈された「安宅コレクション」を核として設立された美術館。「李秉昌コレクション」も韓国の国宝級。
9月に神戸であった全国図書館大会で、東京大学経済学部の小島浩之さんから、破綻後の山一證券の資料がほぼ一括して東京大学に収まった経緯の話があった。
貴重な美術品は大阪に収まっている。

■ 大山崎山荘美術館「青のコレクション」
京都府乙訓郡大山崎町字大山崎小字銭原5-3 tel. 075-957-3123
http://www.asahibeer-oyamazaki.com/


大阪から京都に戻る途中で大山崎駅で下車して、かねて行きたかった大山崎山荘美術館に寄った。
紅葉の坂道を上がると、邸宅を改装した本館とコンクリート打ち放しの新館がある。
新館の内部は円形の展示室で、モネの睡蓮などが掛かっている。
設計は安藤忠雄で、僕はその大きな版画作品を持っている。1996年に竣工したのに、ようやく来られた。
桂川、宇治川、木津川の3つの川が合流して淀川に名をかえるダイナミックなところだが、合流点を眺めるにはどこの地点にいけばいいのかわからないし、妻と一緒ではあちこちとウロつくのもはばかられて行けなかった。

● レストラン菊水
京都市東山区四条大橋東詰 tel. 075-561-1001
http://www.restaurant-kikusui.com/


きのう昼食をとった東華菜館とは橋をはさんで対角線上にある。
南座の正面、道をはさんで向かい側にあたり、南座の幕間の食事を届けるサービスもしているらしい。
きのうは中華、今日は洋食。
気楽にランチを食べた。

■ 京都府立図書館
京都市左京区岡崎円勝寺町9 tel. 075-762-4655
http://www.library.pref.kyoto.jp/


武田五一1909年設計の図書館。
1995年の阪神淡路大震災で深刻な打撃があったので、2001年に新館が建設された。
外壁のみ保存され、壁1枚向こうはまったく現在の建築。SF的にいえば、顔だけ残して、体をすっかり取り替えた。内部は明るく快適に作ってあるが、やや薄っぺらな感じがする。
外側中央の「京都府立図書館」の字体がいいと思う。

美術館的機能もあり、竹久夢二の個展が1912年と1918年に開催された。
森鴎外の実弟である森潤三郎は、明治42〜大正6年、京都府立図書館職員として勤務して、津和野市の森鴎外記念館には、彼が兄の鴎外からのレファレンスに応えた手紙が保存されているという。


■ 永観堂
京都市左京区永観堂町48 tel. 075-761-0007
http://www.eikando.or.jp/


世田谷公園の近くに真言宗西山派の圓光寺という寺があって、僕の家ではここに墓がある。その寺の本山が京都の永観堂禅林寺で、いつか行ってみようと思いながら叶わずにいた。ようやく行こうとしてみると、紅葉の名所なのだった。
夜、行列に並んで入った。ライトアップされた紅葉がきれいだった。

本尊は国の重要文化財の通称「みかえり阿弥陀像」。
東大寺開創供養の時、宮中から東大寺に仏像が下賜された。宝蔵に秘蔵されていたのだが、たまたま永観はその尊像を拝する機会があり、「しまっておくのはもったいない」と嘆いた。それが白河法皇の耳にとどき、永観が護持し、供養することとなった。
永観が東大寺別当職を辞して京に戻るとき、阿弥陀像も持ち帰った。
1082年の2月15日の明け方、永観が念仏していると、阿弥陀像が壇を下りて永観を先導し行道をはじめた。永観が驚き立ちつくしていると、振り返って「永観、おそし」と声をかけた。
といういわくがあって、左の肩越しに振り返る、仏像にしては珍しいスタイルをしている。
そのいわくの年月日まで明確なのも珍しい。

● ホテルグランヴィア京都
京都府京都市下京区烏丸通塩小路下ル JR京都駅中央口
tel. 075-344-8888

http://www.granvia-kyoto.co.jp/index.html

数年前、初めて新装後の京都駅に着いたのは夜だった。
メカニックで近未来的、SF的風景に魅惑されたが、初めて泊まった。
内部もいいデザインがされていた。

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 第3日
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■ 修学院離宮
http://sankan.kunaicho.go.jp/guide/shugakuin.html

広くのびやかな離宮は、民の暮らしの様子も眺めのうちで、畑も鑑賞対象に含んでいた。見学者は事前に申請し、案内者に連れられて見て回るのだが、今も畑には自転車でやってきた農夫が仕事をしていて、宅急便のトラックが荷物を届けにやってきたりする。
離宮の池は、その畑に水をもたらす用水であって、堤の上の道は散策路に、堤の盛り上がりは低木でおおわれた植え込みになっている。
すばらしい発想の柔軟さだ。

最高点にある隣雲亭まで上がりきって振り返ると、その浴龍池と、その先の京の市街を見下ろすことになる。
修学院離宮というと座敷の内側から外を眺める写真になじんでいたので、あれはどこ?と、とまどってしまった。部屋の中には入れなくて、先端の縁側から景色を眺めるのだった。
足下の斜面や、池を囲む木々の紅葉が鮮やかだ。

落ち葉を清掃する人も、女性は大原女の格好をしていた。

■ 新風館
http://www.shin-puh-kan.com/index.html

1926年にできた電話交換所が、2001年にリチャード・ロジャースほかの構想で再生された。
ロの字型の建物が中庭を取り囲む。建物には商業施設が入り、中庭ではイベントが開催される。
パイプや階段がむきだしなところが、表面的にはロジャースっぽいが、それ以上の深みや新味はないようだ。

■ 京都国際マンガミュージアム
京都市中京区金吹町452  tel. 075-254-7414
http://www.kyotomm.com/


とてもユニークなミュージアム。
・元龍池小学校の1929年建造の校舎を改築・再生している。
 (これだけなら今どきそう珍しくないが)
・京都市と京都精華大学の共同運営
・マンガの収集・保管・展示およびマンガ文化に関する調査研究及び事業を行う
・したがって、博物館的機能と図書館的機能をあわせもつ

圧巻は全長約140mの「マンガの壁」で、5万冊のマンガが並んでいて、もちろん読める。若者があちこちに座って、静かに集中して読みふけっている。

ヤッサン一座の紙芝居というのもあった。
「ヤッサン」こと、安野侑志(やすのゆうし)さんが率いていて、この日は一座のなかの若手、「Do・ビンゴ」こと、坂下智宏さんが語ってくれた。
大学では地方財政改革の研究をしていたが、紙芝居の魅力に取りつかれて畑違いの道に進んだという人。明快な語り口で楽しかった。
あらかたの博物館、図書館がしまっている月曜日なのに、開館していて、しかもこんなイベントまでやっている!

京都駅で駅弁を買い、帰りの新幹線で食べながら帰った。

参考: