1月第3週 タウト日記の「上野さん」(冬の京都)


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 第1日
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1. フローイング・カラスマ  
http://www.flowing.co.jp/index.php
辰野・片岡建築事務所、1916年竣工の北國銀行京都支店を2007年に複合商業施設に再生した。
1階のレストランで食事。カウンターの雰囲気や金庫室の入り口の意匠などをさりげなく残して、居心地のいい空間にしあげている。

2. 顔の家 [山下和正 1974 ]

実際にこういうことをやってしまった建築家がいて、施主がいる!
目が窓、口は入り口、右耳はベランダと、顔の部品が実用的機能をもってはいる。
鼻はアクセントだけ。
入り口からのぞくと、少なくとも1階は何かの営業所のような使い方をされているようだ。

3. 京都府庁旧本館 [松室重光+久留正通+一井九平 1904 ]
  京都府庁2号館 [岡田新一 1990 ]
http://www.pref.kyoto.jp/rikatuyou/outline.html
旧知事室などが一般公開されているほか、今も執務室や会議室として使われている。
正面に見下ろせるのは釜座(かまんざ)通りで、茶の湯の釜を作る鋳物職人が並び住んでいたのだという。

4. 楽美術館
http://www.raku-yaki.or.jp/museum/index-j.html
「梅衣」にひかれた。つや消しの肌。両手でくるんでみたい形。
作品もすごいし、系図もすごい。

* 京都御所を西から東に横切る。

5. 京都府立医大旧図書館 [京都府営繕課 1929 ]
http://www.kpu-m.ac.jp/

新図書館は道の反対側にできている。
キャンパスの更新計画があり、解体予定になっているが、保存を求める動きもある。
今は一部を部室などに使われているが、かなりいたんでいる。

6. 旧毎日新聞社京都支局 [武田五一 1928 ]
http://www.artcomplex.net/ac1928/
現所有者は建築家の若林広幸さん。「アートコンプレックス1928」に改称して、アート系のイベントなどに使われているようだ。
ギャラリーとカフェも同居している。

□ 同時代ギャラリー
では、「四人の御絵描き妄想展...」を開催中で、おもしろかった。

□ カフェアンデパンダン 
http://www.cafe-independants.com/
モザイクがはめ込まれた階段を地下に下りると、異様なカフェがあった。
床もやはりモザイク模様。配線がむきだし。丸い柱もあれば四角い柱もあり、塗装がはげている。たっぷり8人以上が囲める大きなテーブル。
70年代、反体制の空気が漂っていた頃、京都に来てロックをきかせる店なんかに入ると、こんな雰囲気だった。
とても気に入った。
でも、新聞社だった頃、このままではなかったにしても、新聞社としてはここをどういう使い方をしていたのだろう?

7. ゆうりぞうと京都 洛翠(らくすい)
http://www.rakusui.com/

部屋の正面に琵琶湖の形をうつした池が横たわっている。その水も琵琶湖から疏水を通って引き入れている。
夜には、部屋とは別の2階の一室に案内されて庭を見下ろす。ライトアップされていて、橋や、小屋や、島や、草の密集など、庭の組み立てが立体的に見えて、昼とはまた違った興趣がある。
作庭は明治42年、7代小川治兵衛(おがわじへえ)。

食事にはかもち鍋というものがでた。
えび、あわ、よもぎの3色の薄くスライスした餅に、鴨肉数片。
夕飯はたっぷりと、朝は簡素だが湯豆腐もついて、とても満ち足りた。

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 第2日
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1. 金地院
宿から出て通りかかり、冬の特別拝観があるので入った。
「鶴亀の庭」は、小堀遠州作と伝えられる庭は多いなかで、資料が残っている唯一の例。
特別拝観の「八窓席」も、小堀遠州が好んだ三畳台目の茶室。にじり口や床の間のつくりのくふうがおもしろい。
もう1つ特別拝観の「長谷川等伯 猿猴図」。猿の長い手が、水に映る月をすくいとろうとしている。
足は冷たくなるが、思いがけずたっぷり鑑賞できた。

2. 河井寛次郎記念館
http://hcn.plala.or.jp/fc211/sagi/
1937年に、自分で設計して自宅を新築したのが、今の記念館になっている。
1966年、76歳で亡くなるまで暮らした。
ふつうサイズの住宅が建て込んでいる地域なのに、登り窯がある。
こんな場所でモクモク盛大に煙を吐いて釜を焚いたのか。

3. 鳴海屋
http://www.gion7638.com/
1931年創業し、戦後、祇園の石段下の現在地に移った。
夕べ泊まった洛翠で食べた餅がおいしかったので、店を探し当てて買った。

4. 何必館「-十牛図に挑む- MAYA MAXX 展」
http://www.kahitsukan.or.jp/
秋に続いて何必館へ。

5. 京都国立近代美術館 http://www.momak.go.jp/
『上野伊三郎+リチ コレクション展 ウィーンから京都へ、建築から工芸へ』
記念講演会「上野伊三郎+リチ先生を語る」中井貞次(京都市立芸術大学名誉教授、日展理事)+田坪良次(京都市立芸術大学名誉教授)

今回の京都旅行の主目的の展覧会。
ブルーノ・タウトの日記には、しばしば上野伊三郎が登場する。でも上野本人がどういうひとだったか、姿がなかなか見えなかった。京都ではちょっと遠いけれど、はずせない!とやってきた。午前中に展示を見て、午後の講演会の整理券をもらった。

展示を見ると、上野の建築より、上野がウイーンで知り合い、結婚した妻、リチのセンスにひかれた。
アール・ヌボーの影響から出発したとみていいのだろうと思う。植物や動物など、自然を多用し、色、線、形と配置など、とても魅力的だった。

講演でも、上野は(自分の)仕事を放棄して、リチのアシスタントに回ったと語られていた。

6. 嘉ねた
夕飯は錦市場を歩いて、客引きのおじさんの風情に誘われて、海産物を扱う店の奥にある料理処に入った。
明治時代から続いている店らしい。
軽く飲みながら、ふぐ飯のついたお弁当を食べた。
おいしかったが、つきだしとサービス料が加わるので、満足度と支払いが見合わない感じがした。

京都ガーデンホテルに泊まる。
http://www.kyoto-gardenhotel.co.jp/index.html

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 第3日
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1. 東福寺
http://www.tofukuji.jp/index2.html
重森三玲が方丈の四方に庭を作ったのを見たいと思っていた。
1939年の作。
北庭は苔と石とで桂離宮のような市松模様。
東庭は短い円柱を北斗七星に並べている。
紅葉で名高いが、新緑のときにでももう一度来てみたい。


2. 京都国立博物館「京都御所」
http://www.kyohaku.go.jp/
消息とか覚書とかいう書がおもしろかった。

3. 建仁寺
http://www.kenninji.jp/
一番星画廊の星忠伸さんのご縁で、小泉淳作さんにはしばしばお目にかかり、話に伺ってもいたのだが、『双龍図』をようやく見ることができた。
体育館を借り切って描くほどの、108畳分もの大きさがあるが、高い法堂の天井にあるから、それほどには感じにくい。
龍の絵はしばしば見ることがあり、何か隔たった感じ、僕がふだん住くらしている感覚からはやや異質、というふうに感じる。
でも小泉さんの絵には、そういう隔絶感がない。
やさしいというのか、今生きていると時代の感覚が共通するからなのか、すっと絵のイメージを受けとめることができる。

寺には宗達の『風神雷神図』だの、建仁寺垣だの、ほかにも貴重な宝がある。

4. みやこメッセ京都市勧業館(+京都伝統産業ふれあい館) [川崎清 1996 ]
  京都会館 [前川國男 1960]

5.京都市美術館「ふたつで1つ」 [京都市建築課 1933-34]
http://www.city.kyoto.jp/bunshi/kmma/

京都市美術館別館で警察関係者制作の作品を並べた「警察美術展」という珍しいものを見たあと、本館に行った。
「ふたつで1つ」は、「対」をテーマにした展示で、とてもおもしろかった。
1つの絵にたとえば2人のきょうだいのように対になるものが描かれているものもある。
また、2点の作品で対の関係にあるもの、それも同一作家のこともあれば、人も時代も違う2人の作家によるものもある、という具合で、いろんな見方から集められていた。

土田麦僊『平牀』1933は、朝鮮の2人の姉妹。清楚で美しい。
やなぎみわ『案内嬢の部屋』1997は、場面を変えた2点の作品を対比している。
いちばん惹かれたのは、菊池契月『少女』1932。長い髪をして着物を着た少女が座ってこちらに顔を向けている。赤く唇を描いているが、唇の形より左右にわずかずつ、一筋の線で口が伸びている。その数ミリずつの線がたまらない。写真などでは気づきにくい、実作を間近に見てこその至福だ。
「対」という企画もおもしろかったが、それぞれの作品が十分な魅力をもつものばかりで、しかもすべて自館のコレクション。すばらしい蓄積だと思う。

6. 白河院 
http://www.shigakukyosai.jp/yado/kyoto/index.html
和風−洋風と泊まって、また和風の宿に。私学共済の宿だが、庭が京都市の名称に指定されるほどの由緒あるところ。
料理もゆっくり庭を眺めながらで、いい感じだった。

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 第4日
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長楽館(ガーディナー)、祇園閣(伊東忠太)、丸東祇園ビル(高松伸)などを眺めてから鴨川畔の南座へ。

1. 京都四条南座 前進座初春特別公演『出雲の阿国』
http://www.shochiku.co.jp/play/minamiza/index.html
http://www.zenshinza.com/index2.htm

幕間に「阿国弁当」を食べたりして芝居を楽しみ、実りが多かった旅をしめくくる。


参考: