1月第4週 柳橋からベニサンピット最終公演
      〜神田川河口+山国川河口    


久しぶりにギャラリーめぐりをしようと思っていたのに、あいにくの雨。めげそうになったが、ベニサンピット閉館前の最終公演のチケットを買ってあったのに促されて、午後になって家を出た。
秋葉原からバスに乗り、水天宮近くで降りてから、歩いて北上する。

■ ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション
  「空は晴れているけど」展

東京都中央区日本橋蛎殻町1-35-7 tel. 03-3665-0251
http://www.yamasa.com/musee/index.html

箱崎ジャンクションのすぐ下という異様な位置にギャラリーがある。もとはヤマサ醤油の倉庫だったのを鈴木エドワード設計でリノベーションしたという由来をきけば、立地にも納得する。
浜口陽三の作品のほかに「空は晴れているけど」という企画展示をしていて、元田久治(もとだひさはる)の廃墟の版画に興味をもって見に行った。
東京駅、日本橋、北京の鳥の巣競技場などが、放置されて何十年か経ったかのように彫られている。
本来、廃墟には心ひかれるのだけれど、この版画にはしっくりしなかった。廃墟の表面が、無機質ではなく、植物のようなナマっぽい感じがあって、生理的に拒絶反応が起きてしまった。

■ FOIL GALLERY 北村怜子作品展「2018」
東京都千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビル201
tel. 03-5835-2285

http://www.foiltokyo.com/gallery/galleryindex.html
馬喰町駅の近く。
一見すると、抽象的な色と形を無造作にキャンバスに置いていて汚れた画面のようでいて、じっと見ると3次元的な奥行きがある。
こういう効果を狙っているのだろうか。

■ CASHI゜ 杉浦慶太展「森−Dark Forest」
東京都中央区日本橋馬喰町2-5-18-1F  tel. 03-5825-4703
http://cashi.jp/jp/
写真を大判のマット紙に印刷している。
日が沈んで暗くなりきる前の夜の森を撮っている。
闇と木々が、黒ではなくて、茶とか藍とか、微妙な色合いをおびていて、不気味な生命力が潜んでいるかのようだ。
元田作品と同様に、この色合いに皮膚感覚的に拒絶反応が起きる。

■ ラディウムーレントゲンヴェルケ内海聖史展「十方視野」
東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17
tel. 03-3662-2666

http://www.roentgenwerke.com/index.html
その隣のギャラリーは1軒の住居まるごとをギャラリーのほとんど1室に改修している。白い壁に白い階段。むきだしの天井の梁まで白く塗ってある。
展示中の内海聖史の作品は、『絵画の美しさは絵の具の美しさ』という世界観とのことで、白い空間に鮮やかな色がちりばめられている。展示装置、建築と一体になったインスタレーションのようでみごとだった。
あまりにピッタリしていて、このギャラリーに他の作品を展示するとか、この作品を他のギャラリーに展示するとかが、考えにくいほどだ。

● 柳ばし小松屋
東京都台東区柳橋1-2-1 tel. 03-3851-2783
http://www.tsukudani.net/index.html
西から東に流れてきた神田川は、北から南に流れる隅田川に直角に注ぎ込む。
神田川の最後の橋が柳橋で、昔は色っぽい街だったろうけれど、今は小さなビルが並ぶ下町オフィス地区になっている。それでもときおり風情のある店があって、橋のほんとのたもとに小屋がけしたような佃煮屋があった。
ここでサザエさんをしてしまった。
そそっかしいサザエさんはデパートに買い物に行って、ゼロをひとつ見落としてうろたえることがよくあるのだが、僕はここで逆の見落としをした。
「冬期限定 特撰かき佃煮」があって、小さな箱のわきに「七八五円」と値段をかいた札が立っている。「これをひとつ」と言ってしまってから、その上に「一」があるのに気がついた。
この大きさの佃煮に、この値段...
でももう引き返せない...
(でもさすがにおいしかった。ふっくらとした身にいい味がこもっている。)

● 梅花亭
東京都台東区柳橋1-2-2 tel. 03-3851-8061
小松屋のほとんど向かい側にある和菓子屋さん。
幸田玉が客をもてなすのにわざわざ買いに行ったという子福餅のお店。
前にいただいて食べたこともあるが、店に来たのは初めて。
定番の子福餅と、季節を感じさせる「ふきのとう」「節分草」を買った。

■ ベニサン・ピット 『かもめ来るころ』 4000
東京都江東区新大橋2-17-12
http://www.benisan.com/index.html
染め屋である紅三がスタジオと公演会場を用意して演劇を支援してきたが、この公演の最終日で閉じることになった。
およそ25年、四半世紀の実績をつくってきたのに惜しい。

□ 『かもめ来るころ』
作・演出/ふたくちつよし トム・プロジェクトhttp://www.tomproject.com/
出演 高橋長英(松下竜一) 斉藤とも子(松下洋子)

『かもめ来るころ』は、松下竜一(1937-2004)の生涯を描く評伝の劇。
夫婦の結びつきを描きながら、豆腐を作っていた青年が社会のことに関わっていく思いを伝える。
舞台は大分県中津。
北門橋の手前を左に降りた山国川の河口がかもめに餌を投げ与えにいく夫婦の散歩コースになっている。

豆腐を作る模範青年であることをやめたときの歌。

 豆腐屋をやめてむなしき仕事場に包丁ひとつ瞬ちに錆ぶ

主題はこういうセリフに集約される。

気の弱い思うことの半分も言いきらんような連中なんや。そんな弱い人間が弱い人間のままに...その優しさに徹することで、何とか勁うなれんもんかなあち思うんよ。

社会に関わるために商売をやめるのだが、そのあつかっていたものが、いかにも壊れやすい豆腐だというのが象徴的に似つかわしい。

最後の公演にふさわしい、やさしい、あとあじのいい芝居だった。

参考: