2月第4週 少林山達磨寺・北斗七星


井上房一郎が芸術村を作ることを構想した六合村(くにむら)に暮らすスタン・アンダソンの展覧会がある。
友人の茨木孝雄君が、前から北斗七星を祀る達磨寺に行きたいと言ってたので、あわせて行くのにちょうどいいと誘って、群馬に向かった。

■ 少林山達磨寺
群馬県高崎市鼻高町296 tel. 027-322-8800
http://www.daruma.or.jp/

霊符堂に上がっていく階段下の左右に、門のように燈明台がある。左に蛇、右に亀の石像がのっていることを、茨木君が見つけて教えてくれた。
玄武(げんぶ)という北の方角の守護神は、亀と蛇の合体した姿として表徴されるのがふつうで、こんなふうに亀と蛇が別の独立した像としてあるのは珍しいという。
僕はもう何度か来ているが、茨木君はここには初めてなのに、専門家はそういうことを発見して教えてくらる。
こういうことがあるから異分野の専門家と歩くことは楽しい。

霊符堂は北辰鎮宅霊符尊をまつっている。北辰は北斗七星のことで、妙見菩薩ともいう。左右にいるのは、「抱卦(ほうけ)童子」と「示卦(じけ)童郎」という、珍しい名前をしている。
3尊が描かれたお札を買った。

瑞雲閣で廣瀬正史住職にお会いして話を伺った。
ここにはブルーノ・タウト展示室がある。
「わが頭上の星 わが内なる道徳律」とかいたタウトの色紙も展示されている。
タウトが、尊敬するカントと北辰をまつる達磨寺とにつながりを見いだしたことを示す象徴的な意味がある。
色紙に描かれた北斗七星などのイメージは、3尊のお札と同じものだ。
住職が「ふきかえる前の霊符堂の屋根の瓦にも、同じ北斗七星の図像があった」といわれる。
いずれのイメージにも、柄の端から2番目にある星ミザールの近くにある伴星アルコルまできちんと描かれている。

北辰鎮宅霊符尊のお札の上部の図像。
屋根の瓦にも、同じ形の北斗七星が描かれていた。


寺報「福」のバックナンバーを見ると、黄檗宗第56代管長安部禅梁の書が掲載されていた。
 一点梅花蘂(いってんばいかのずい)
 三千世界香(さんざんせかいにかんばし)
小さな梅の花一輪でも、宇宙全体に香りがいきわたっている。
あらゆることがつながり、響き合っている。
このところいろんな偶然が重なって驚かされることがひんぱんにあるが、そうした思いを禅の世界ではこういう美しい言葉にしている。

● 食の駅 高崎棟高店
群馬県高崎市棟高町東石田2411 tel. 027-310-0011
http://www.farmdo.com/

どこかで食事にしようと思いながら国道17号を北西に向かう。
レストランがいくつもあるのに入りそこねたまま左折したら、一気に店がなくなった。失敗したかなと思っているところに、「食の駅」というかなり大規模な建物があって、入った。
食事もうまかったし、酒やら菓子やら野菜やら土産になるものも豊富で、正解だった。

■ 妙見寺
群馬県高崎市引間町213 tel. 027-373-6838

「七星山息災寺」と号し、妙見菩薩を祀る寺として信仰されてきた。
古代中国の思想では、北極星(北辰とも言う)は天帝と見なされた。これに仏教思想が流入して「菩薩」の名が付けられ、妙見菩薩と称するようになった。
妙見菩薩をまつる寺は多いが、ここはダイレクトに「妙見寺」という。
由緒があるらしいのだが、外から一回り眺めても、際だった特徴が見つからない。拍子抜けする。
(ところがあとで茨木君から、やはり奥深い意味があるところだから、住職に話を伺えばよかったとメールがきた。また折りをみて出直すことにする。)

● 妙見茶屋
群馬県 群馬県高崎市引間町161-1  tel. 027-373-1217

すぐ近くの和菓子屋で、酒まんじゅう(120円)を1つずつ買って試食した。
平べったい、しっとりと水分を含んで光を反射する皮に、上品な甘さのあんが入っている。
気に入って土産に買った。

■ 群馬県立近代美術館
群馬県高崎市綿貫町992-1 群馬の森公園内
tel.027-346-5560

http://www.mmag.gsn.ed.jp/

□ スタン・アンダソン「東西南北天と地−六合の1年」

六合村は、井上房一郎が芸術村をつくることを構想した所。
スタン・アンダソンは、そこで集めた木や、動物の骨、巣など、土地の自然な素材を用いた立体作品を配置して、美術館の展示室に六合村の世界を凝縮させた。
デヴィッド・ナッシュやアンディ・ゴールズワージィのこと、グライスデールの森のことなど思い出した。それでイギリスのアーティストかと思ったが、1947年アメリカ合衆国ユタ州ソルトレイク・シティ生まれ。
ナッシュなどの作品が、自然の素材にときにやや強引ともいえる加工をして、作りすぎという印象を僕はときどき抱いた。でもスタン・アンダソンの作品からはナイーブな自然がそこなわれていないふうに感じられて、作品の間を歩くのが心地よかった。

□ 田中功起「たとえばここ最近の作品をすこし違ったかたちでみせること」

こんなに笑えた展示も珍しい。
《そうして森美術館にたくさんのたらいが落ちる》「群馬県立近代美術館ヴァージョン」は、積み上げた200個のたらいが、一気に崩れ落ちる様子を映した映像が流れる部屋に、実際にたらいが散乱している。大きな音を立てて、たらいを散らかすばからしさ。

別な映像作品では、画面の左から右に向かって軽トラックが走る。トラックの後方が画面に入ってくると、運転席の後部から洗濯物を結びつけた紐が伸びていて、白い下着やなにかがヒラヒラはためいたまま、右に走り抜けていく。
ただそれだけ。
おかしくて吹き出してしまった。