2012年5月第2週(2) 
川沿い作品展+遠山記念館
の松隈洋講演会 


5月の晴れた日に、川沿い作品展と遠山記念館に行った。

■ 川沿い作品展

午前中は川沿い作品展に行った。
熊谷市役所付近を農業用水が流れていて、その近くに住む人たちが、自分の絵や書や工芸や庭を展示・公開する。
行政や企業の支援もなく、町おこしなんていう目論見もなく、無理をしないでゆったりやりましょうという姿勢がかえってパワーになるのか、もう13回目になる。
B級グルメの楽しみもないが、訪れる人にはスローな手作り感が好評で、リピーターが多い。
去年は3.11の東日本大震災の影響で、本来は春開催なのを秋に延期して実施した。
今年は春に戻したので、前回から半年で今回の開催になった。
風があるが、良い天気で、水に沿って散策するのにちょうどいい日和だった。

今年は、埼玉県建築士会大里支部が休憩舎を作った。用水沿いを散策するときにちょっと一休みできるベンチがあり、日射しを遮ってくれる。
「ああ、こんなものが新しく建った」と気づかずに通り過ぎそうなほどに、目立ちすぎず、仮設的で、空気の流れがいい。
川沿い作品展・埼玉県建築士会大里支部が作った休憩舎

箱田神社の屋外展示では、蚕棚に絵を掛けることを恒例にしてきたが、これまで使ってきたものが傷んで使えなくなり困っていた。小川町に住むアーティスト、伊東孝志さんの実家が、かつて蚕農家で、お借りできることになり、遠くから運んでいただき展示できた。 川沿い作品展・箱田神社の展示

■ 遠山記念館で松隈洋さんの講演会
http://www.e-kinenkan.com/

午後は遠山記念館に行った。
建築的にも価値が高い遠山邸と美術館をめぐる連続講演の1つで、今日は美術館に焦点をあて、松隈洋・京都工芸繊維大学教授の「地域資源としてのモダニズム建築-その歴史と現代的意味」という講演があった。(2012.5.12)

2つの指摘が印象に残った。
1つは、建築をスタイルではなく、建築材料から区分する視点。
工業化以前には7000年の歴史があるが、工業化以後はほんの100年ほど。これを意識して、建築をどう見るか、どう作るか。

もう1つは、今井兼次(1895-1987)の最後の設計作品が竣工したのが1970年であること。
日本が大阪万博で熱くなっていた年で、近代的、科学的、前進志向的な風潮の中で、ひっそりと美しい「ささげものとしての建築」ができあがっていた。
今、当時の主流の建築と比べ、どちらが人の心に届くか、という指摘。
原発が全停止したのも1970年以来、42年ぶりという指摘も重ねる。

その2つのことにあわせて、松隈さんの師、前川國男の長い射程で遠い先まで見通していた文章が参照された。

このあと遠山記念館の久保木学芸員の案内で、美術館と遠山邸を見学した。
かねてから僕はここを偏愛している。つまり世間に知られている度合いに比べ、僕は異様にここが好き。
設計者、今井兼次は、この美術館についての文章の冒頭にこう記している。
新旧大小を問わず心ひく建築は貴いと思う。ささやくような美しい感動が、どこからともなく伝わってくるからである。
美術館は、まさにそのとおりの建築になっている。
それでしばしば訪れているが、まだ知らずにいたことがいくつもあったのを教えられた。
庭で木綿製の小ぶりな鯉のぼりが泳いでいた。
日を受けて白く輝くツツジがきれいだった。

遠山記念館・今井兼次設計による美術館

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参考:

  • 『一粒の生命を求めて-遠山美術館の設計に寄せて』今井兼次 「建築文化」1971.2
  • 『母の歴史』遠山元一 遠山記念館 1969