大桁山から群馬県立自然史博物館・富岡製糸場


 群馬県立自然史博物館 


群馬県富岡市上黒岩1674−1
tel.0274−60−1200
http://www.gmnh.pref.gunma.jp/
設計:群馬県土木部建築課. 内井昭蔵+内井昭蔵建築設計事務所 1996



富岡市の北部の丘陵がもみじ平総合公園として整備された中にある。博物館には「かぶら文化ホール」という多目的ホールが併設され、富岡市立美術博物館も同じ公園内にある。

たくさんの恐竜の展示に力が入っていて見応えがあるのだが、全身骨格が多いなかに「ウルトラサウルスの一種の右前肢骨格 ジュラ紀 アメリカ・ユタ州」という骨がある。
前足1本だけ。
そばに立つと、僕の頭よりまだ上に膝がある。人間の身長が膝までも届かないほどの大きさ!ということを実感させられる。首までの高さ推定12m程度という数字だけでは、こういう実感には到らない。実物標本の力はすごい。


常設展示は「地球の時代」、「群馬の自然と環境」、「ダーウィンの部屋」、「自然界におけるヒト」、「かけがえのない地球」の5つのテーマで構成されている。
順路にしたがってまわると、最後にあるのがドードー鳥。
マダガスカル沖、モーリシャス島に生息していた鳥で、大きく、翼が退化していて、鳥なのに飛ぶことができない。発見されてから200年も経たずに絶滅した。
「不思議の国のアリス」など、いくつかの文学作品に登場している。鳥としての在理由を自己否定するような生態と、短期間に絶滅したことから、人の思いを誘うものがある。
大量の展示品の最後にドードー鳥をおくセンスがちょっといいち思う。


■ 「ニッポン・ヴンダーカマー 荒俣宏の驚異宝物館」展


この博物館には数回行ったが、2005年11月に見にいった企画展はおもしろかった。
現代日本のとびぬけた博物学者・荒俣宏と、恐竜化石の権威であり、また珍奇なもののコレクターでもある長谷川善和館長とが組み、日本大学藝術学部木村政司教授に指導された学生たちも加わった。
博物館の発生当時の、学問的には怪しいが、好奇の心を満たすものにみちていた驚異の部屋を再現しようとしている。

長谷川館長のコレクションでは、中国産の蛙の偽物化石や、爬虫類の偽物化石がある。ニセモノを承知で手にいれてきてるのだろう。
ゴキブリの化石に、えっと思ったが、これは本物らしい。
猿の頭骨飾りつき(タイ=右の写真)、ヒョウの頭骨飾りつき(タイ)、リクガメの頭骨飾りつき(中国)なんていうのは、本体は本物らしいけれど、金属片などで飾り立てて、SFアニメのキャラクターみたいに造形されている。




薬局には、あやしげな薬品材料。今では冗談かと思えるような薬品名の包装紙や看板。笑いながら見ている学生グループがいるが、並みの博物館ではこういう笑いは起きない。

芸術学部の学生たちは、異種の動物を合成するキマイラを考えだし、造形していた。

右の写真は、立っていることがめんどうになってゴロンゴロンしていて、アザラシになりかけた「ザラミンゴ」。

ここで学生たちが作っていたのは、ふつうの工作材料などをつかったものだろうが、実際の生物を寄せ集めて河童や人魚、一角獣、双頭の龍、鬼なんかが作られていたのを見たことがある。2000年秋、江戸東京博物館「日蘭交流400周年記念 秘蔵カピタンの江戸コレクション」展で見たもので、動物を組み合わせたうえ、和紙の細工を加えたりして作ったものが、シーボルトの時代にオランダに持ち帰られ、ライデンの博物館に収蔵されているという。

人体標本は、今でも新しい保存技術が開発されて、多くの人を集めることがあるけれど、初期から好奇の関心の対象だった。これもいくつか展示されていた。

長谷川館長を含む4人の博物学者について、生涯と業績を短い映像にまとめ、展示室で上映もし、CDつき図録として販売もしていた。(これが500円はお買い得だった。)ユーモアのある、楽しい映像だった。

学問が進むと、好奇の目で集められてきたモノは、分類され、体系づけられ、いかがわしいものは排除されてきた。専門に特化し、一般の人からは遠くなった。
専門領域に深く入り込み、体系を組み立てていく作業はおもしろそうだが、できあがった体系図をあとから眺めてもたいして感慨はない。多くの博物館の展示が退屈なのは無理もない。どこでも似たようなツルっとしたケースにおさまり、きれいなパネルやパソコンのディスプレーに説明がある。
初期の博物館にあった、え、これは何?こんなものがあるのか!という驚き、そのモノがそこにゴロっとある感覚が失われてしまっている。

今回の企画展は、初期と現在の博物館の状況を比べてみて、確かめ、そこからどうしたらモノと驚きながら向き合えるか考えようとしたのだろうと思う。
自然史博物館という科学の博物館が、美術系大学と共同して、現実にはない造形物を展示するのは、外から見ておもしろがっているのとは違って、なかなかたいへんなことだったかもしれない。常設展示の最後にドードー鳥を置くセンスのある博物館でこそできた企画と思われる。
買って帰ったCDつき図録とあわせ、とても楽しませてもらった。

















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