観音山から高崎市美術館・高崎哲学堂・群馬音楽センター



 6  高崎市営駐車場ウエストパーク−隈研吾 熱海・日向邸 井上工業


高崎市旭町45−1
tel. 027−321−1000
高崎市 http://www.city.takasaki.gunma.jp/

ブルーノ・タウトは日本では設計の機会がほとんどなかったのだが、1936年、熱海の日向邸の内装の設計をしている。とても小さな仕事なのだが、日本でえたものを集大成する結果となり、タウト自身、出来栄えにとても満足して完成を見届けたうえで、まもなくトルコに向かった。
隈研吾が、企業のゲストハウスの設計を引き受けたところ、たまたまその敷地は熱海の日向邸の隣に位置していた。「水/ガラス」と名づけられ、1995年に完成している。
その後、これもたまたま、タウトの日本での生活を世話した井上房一郎が経営者であった井上工業の慰霊施設の設計を任される。

隈研吾は「反オブジェクト」という著書で、タウトの建築との関わりを書いている。
「建築を溶かし、砕く」という副題にもあるように、また「自己中心的で威圧的な建築を批判したかった」とはじめに要約しているように、オブジェクトとしての建築を批判している。

隈研吾はタウトが桂離宮について書いた文章から次のものを引用したうえで、こう続けている。

「来客の控えの間の前に竹縁のいわゆる月見の縁がある、此処から御苑全体が池を含めて見渡せる。それは実に泣きたいくらいに美しい。形状の豊かさ、石の上に数多くの亀がいて、その首を高く擡げているものもある。…この理解に最も好い助けとなるものは池畔の船着場の斜線である。…この斜の船着場によって視線はその動きの線の方向のままに一叢の躑躅の茂みへと導かれ、さらに前方、撞堂と四阿へ通じる橋へと導かれる。」(ブルーノ・タウト、篠田英雄訳、タウト著作集『桂離宮』、育生社、1946)

異色の建築論である。慎重な手つきでオブジェクトはふるい落とされ、接続における関係性が拾いあげられるのである。しかも関係性という曖昧なもの、微妙なものをとりあげながら、可能な限り科学的であり、客観的であろうとするのである。
(「反オブジェクト 建築を溶かし、砕く」 隈研吾 筑摩書房 2000)


静止した建築の様子を叙述するのではなく、自分が歩いていくのにしたがって移り変わってゆく建築と庭と印象とをえがいていく。
コルビュジェふうの写真うつりのいい建築ではないものを目指そうとする隈研吾は、タウトに、自身の建築に対する考え方を先駆する意味を読みとっている。

駐車場の設計にあたって高崎市が提示した条件は、建築らしくないこと、高崎のシティカラーであるレンガ色を基調とすることの2点だったという。
たしかに、駅から間近のところに、長さ150mもある、窓のない、壁ばかりの巨大な箱ができては、そばを通るたびに威圧されるばかりだ。

そこで隈研吾は、べったりとした平面、巨大な量感をもつ塊ではなく、小さなもの、細いものへ分解しようとする。
「水/ガラス」のときと同じ考え方で、ガラスとコンクリートの日よけで壁面を構成する。
風が抜けるような、視線を跳ね返さない建築ができあがり、夜には内部が透けてみえるという。



高崎市美術館高崎哲学堂に行くには、そのすぐ前に「駅前駐車場」があるが、高崎の歴史と文化に敬意を表して「ウエストパーク」に車を置きたい。やや離れているが、それでも徒歩5分くらい。
長い建築物の両端にあるらせんの走路を上がり、降りることになる。車で中に入ったら、まるで、やはりらせん状に作品を見ていくグッゲンハイム美術館(ニューヨーク。フランク・ロイド・ライト設計。1959。)に車で突っ込んだような気分になって、痛快で笑ってしまった。


高崎市営駐車場の内部

高崎市営駐車場 
グッゲンハイム美術館



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