仙元山から山口蓬春記念館・神奈川県立近代美術館 葉山


 山口蓬春記念館 


神奈川県三浦郡葉山町一色2320
tel. 046−875−6094
http://www.jrtf.com/hoshun/


展示室とアトリエから成る。
展示室は、JR東海生涯学習財団の資金で、木造の住まいだったものを1991年に大江匡/プランテックの設計により記念館に改築した。

木造住宅の屋根と柱を残し、内壁と床をとる−つまり外形と構造を残して内側をからにし、そこに入れ子状に蔵を耐火壁でつくっている。
蔵は展示室兼収蔵庫であり、蔵の内側と外側の壁面を展示スペ−スとして利用する。
木造建築では、こういう改造にしかたもあるわけだ。


大峰山の裾の斜面にあり、入口から見上げると庭の多くの種類の木を前景に、山の木々を背景にして、日本風の家屋の屋根がのぞいている。風情がある。
スチ−ルとガラスによるゲ−ト空間があり、ガラスに刷り込まれた「山口蓬春記念館」は高山辰雄が書いた文字。

玄関の手前右側に、高さ50cm、長さ3mくらい、玄関に導くようにミニチュアの塀状のものがある。表も裏も赤い、ざらっとした材質のものが塗られていて、アクセントとしてきいている。
中に入ると、壁を一部、円形にくりぬいてガラス板をわたしたうえに花瓶を置いて、赤い花が1つだけ挿してある。これも離れたところから見たときに、おっ!という効果があった。
ここは吉田五十八の設計ではないだろうけれど、吉田五十八の文章を思い出し、こういうことをいうのかと思った。

お客にいい家だなあという気を起こさせるには、どこかで演出をしないと。(略)住宅は門をはいって玄関までのアプロ−チを歩いて、玄関をはいって座敷までの廊下、この間に点をかせがなきゃだめですよ。座敷にはいったら、座敷というのは、やりようがないんだ。
              (吉田五十八「饒舌抄」新建築社1980)
 
アトリエは、吉田五十八の設計で1954年に増築したもの。
基本的なつくりは「庭に長い1辺が面した、四角の箱」と定義できるような簡単なもの。
庭に対しては徹底的に開放して、庭側はほとんど全面(右から左まで、天井から床まで)ガラス戸、左手も1/4程度が透明なガラス戸。
外周の床は、室内中央の床より1段低くなり、あいだに戸が閉められるようにしてあるから、(そこまでは残念ながら立入禁止だが)外側の床に座ってみればほとんど屋外感覚になりそう。
(ふつうは建物の外に張り出しているはずの縁側を、ガラス戸をたてて室内にとりこんでしまったふうにしてある)
壁面に作りつけの収納棚があるが、扉のふちの線だけがモンドリアンの抽象図のように見えているだけで、模様も取っ手もない。

ソファにかけて全体を眺めてみると、ふつうの住宅ではないけれども、数寄屋の近代化をめざした建築家の意匠が生きて、すっきりしている。今の目からするとやや華奢に感じられるが、ガラス戸の外には庭の木々が広がり、そこに頑丈な家が対立してあるという感じがしない。




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