箱の家
数年前に建築家・難波和彦氏に設計をお願いして自宅を新築したが、その建築家が「箱の家に住みたい」という本を出版された。
依頼主それぞれのさまざまな要求を満たしたうえで、ちょっと変わったデザインでくるむような、1回限りの家を設計するのではなく、現代の家族が暮らす住まいはどういうのがいいのだろう−ということを考えながら設計されている。東京大学で池辺陽(きよし)研究室に在籍したが、池辺は住宅問題を社会問題としてとらえ、「立体最小限住宅」という、日本の建築史に残る住宅を設計している。いわばその志を継いで設計を続けている建築家の、ここ数年シリーズで設計を続けている「箱の家」の実例・考え方が本には収められている。



(難波和彦氏の自画像ふうサイン。設計の打ち合わせのFAXなどは、このサインをして送られてくる。サインだからササッと書くのだろうけれど、どういう筆順なのだろう?)




住み手の欲しいものがすべてそろっているような住宅を見ると、住み手も建築家も、あまり尊敬できるような人ではないように思えてしまう。
と、この建築家がいうのに同意するし、自分の家のことを書くのは「僕はこんな家を作ったんだもんね」という自慢話のようで気恥ずかしくもある。でも、大きなことをいうと、日本の住まいをどう作るかに関わってくるので、いくつかの文章を引用してみる。


引用 1
箱の家の定義
ひとことでいうなら、「箱の家」とは、外形が単純な箱型で、内部は一室空間に近く、外部に開かれ、構造・構方・材料・設備が標準化されたローコスト高性能の住宅である。



(下の2点の写真は新建築写真部。元はカラー。スキャナーで取り込むと微妙に色が違うのでモノクロにしました。)


引用 2
箱の家が現代に誕生する背景
これまで住宅の平面構成は寝室の数とリビング・ダイニングキッチンを示すnLDKで呼ぶのが一般的だったが、そうした呼称は住宅の「質」とはほとんど関係ないことに、誰もが気づきはじめている。(中略)子供の自立を促すという名目で提案された子供部屋は、せいぜい受験勉強に集中できる空間になるだけで、眼に見えない親子のコミュニケーションを絶ってしまった。

引用 3
箱の家の誕生と発展
 「箱の家−1」はそれまで僕が設計した住宅の中で、もっともローコストの住宅であり、当初は実現できるかどうかさえ自信がなかった。ぎりぎりの予算内で与えられたプログラムを実現するには、平面、空間構成、形態、構造、仕上、構法など、すべての条件を徴底的に単純化するしか方法はなかった。その結果、室内はほぽ一室空間となり、単純な箱型の住まいとなった。(中略)
 もっとも意外だったのは、特殊解であるにもかかわらず、「箱の家−1」に興味を持った沢山のクライアント候補から、同じような住まいの設計依頼があったことである。彼らはこの住宅を、自分たちの住まいにも適用できるプロトタイプ(原型)のようにとらえていた。




箱の家に住みたい 難波和彦 王国社 1800円 


日本の建築界は、現在、世界のトップレベルを走っているが、そうした先端のヒリヒリするような風を身に受けながらしかし中小住宅作りにまいしんする建築家として知られる難波和彦が、一般向けの住宅本をはじめて書いた。ちゃんとした建築家が住むという営みについて何を考え、どのように作っているかを知りたい人には、必読の一冊。
藤森照信「家族の気配が感じられる住宅」 2000.10.1の毎日新聞の書評欄


界工作舎 東京都渋谷区神宮前 3−16−10 
  tel. 03-3478-5579
  fax. 03-3478-5686
  http://www.kai-workshop.com/


(室内写真については新建築社、本の表紙写真については王国社、サインについてはご本人の承認を得ています。)


なぜ山を歩いて初めて感動した去りがたかった気に入りの|箱の家|TOP