ミュージアムのトイレ ベスト5 / 山のトイレ




脇田美術館




長野県軽井沢町旧道1570-4
tel. 0267-42-2639
http://www.jade.dti.ne.jp/~wmoa/


軽井沢駅から旧軽ロータリー方面に向かう道の途中で少し左に入ったところにある、脇田和(1908- )の作品を展示する美術館。
吉村順三設計の1975年竣工のアトリエがある敷地に、画家と鹿島建設の設計で美術館が建てられた。

ゆったりとした展示室には、トップライトから自然の光がさしてきて適度に明るく、気持ちをなごませてくれる。細長い渡り廊下状ギャラリーもいい。
順路は、いったん外に出て、古い山荘ふうアトリエを眺め、深呼吸をして、また元に戻る。

そこでトイレに入ってみると、床にタイルを敷いて、壁で仕切って、便器を置いて−という当たり前のつくりではない。
1人用にこっそり作られた隠し部屋で、籠もるのに便利なように便器も置いてある−というくらいの印象を受ける。
外からの光を柔らかく取り入れて、居心地がよく、用があってもなくても関係なく長居したくなるほど。

 私は、京都や奈良の寺院へ行って、昔風の、うすぐらい、そうしてしかも掃除の行き届いた厠へ案内される毎に、つくづく日本建築の有難みを感じる。茶の間もいゝにはいゝけれども、日本の厠は実に精神が安まるように出来ている。それらは必ず母屋から離れて、青葉の匂や苔の匂のして来るような植え込みの蔭に設けてあり、廊下を伝わって行くのであるが、そのうすぐらい光線の中にうずくまって、ほんのり明るい障子の反射を受けながら瞑想に耽り、または窓外の庭のけしきを眺める気持は、何とも云えない。漱石先生は毎朝便通に行かれることを一つの楽しみに数えられ、それは寧ろ生理的快感であると云われたそうだが、その快感を味わう上にも、閑寂な壁と、清楚な木目に囲まれて、眼に青空や青葉の色を見ることの出来る日本の厠ほど、恰好な場所はあるまい。

陰翳礼賛 谷崎潤一郎 中央公論新社 中公文庫 1975 (1933)

ここは、谷崎が好んだ日本建築ではないが、モダンな建築にも快楽としてのトイレはありうることの好例である。
静かな休息のための空間としてとっておきたいような、すてきなトイレであった。

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