入笠山から (旧)富士見高原療養所・富士見町高原のミュージアム



3-2  尾崎喜八   
 ■■■■■ 山の詩・自然の詩 


尾崎喜八は小さい頃から雲に強い関心をもっていて、1942年、50歳のときには写真と天気の解説書「雲」を刊行したほどだった。その書の愛読者でありながら、尾崎が詩人であることを長く知らずにいたという人もいるくらいだという。
(『花咲ける孤独−評伝・尾崎喜八』 重本恵津子 潮出版社 1995)

もともと自然への関心が強かった尾崎がよく山に行くようになったのは、30代半ばに、登山家・河田禎(みき)に導かれてからで、山野を歩く喜びが詩に表現されるようになる。
尾崎喜八の詩には、山を歩くときの更新するような気分、山頂の高みについて、背筋を伸ばして空を仰ぎ、深く呼吸するときの、精神的な昂揚感と沈潜感がともにあるような気分などが、鮮やかに言葉に表現されている、という印象をもった。

しかも、気分だけでなく、自然への、科学への知識があるので、漠然と空や花や木や石をうたうのではない。雲の名、花の名、鳴き声が聞こえる鳥の名を、1つ1つ知っているところがすごい。

たとえば「久方の山」という詩の一節...

・・・
青い蛇紋石の崩壊斜面や
脂肪光沢をした華麗なチャートが
きれいに露出している日当たりの朝の沢、
・・・
そういうのが今日のわたしの山旅だ。

山を登るのに−地質学者なんかは別にして−こういう用語を思い浮かべる人は珍しいだろうと思う。


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