大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ 2003−秋


 7  ほくほく線くびき駅 −今回も妻有圏外に寄り道する−


■ ほくほく線初乗り

2003年の夏には、妻有地域を抜けて、松代の北、高柳町の荻ノ島環状集落にある陽の楽家(ひかりのらくや・隈研吾設計)に行った。
今回も圏外に寄り道した。
松代駅の駐車場に車を置いて、ほくほく線に乗り、西に向かって、毛綱毅曠(もづなきこう)設計のくびき駅を見る。戻るには、くびき駅発がおよそ1時間後になるので、その間に、駅を眺め、駅の近くを散歩してきた。

ほくほく線に乗るのは初めて。たまたまイベント列車だった。トンネルに入ると車内の照明が落ち、天井にプラネタリウムみたいに映像が映される。
ほくほく線はトンネルの多い線で、松代駅も、どちらに走ってもすぐトンネルになる。十日町駅から2つ六日町寄りの美佐島駅は、完全な地下駅で、地上には小さなレストランかと思うような建物が道沿いにあるだけだった。
ふつうトンネルに入ると、ひたすら抜けるまで耐えるしかないという閉塞感があるけれど、この映像のアイデアはなかなかいい感じだ。



■ 目玉のくびき駅

くびき駅あたりでは、ほくほく線は田園地帯を高架で走っている。
列車が駅に近づくと、左側にむき出しの目玉のような駅舎が見えた。線路を跨ぐのではなく、高架の片側にホームの階段を降りたところにあった。
背の高い建物ではないし、高架のそばに静かに収まっている印象を受けた。
うすぐもりの秋の午後だったが、夏の晴れた日だと、印象が違うかもしれない。

話題になるような建築でも、その建築自体に建築的説明があることなどないのだが、ここでは待合室に立派な金属のプレートがはめこまれ、設計意図を説明する文章が記されていた。
過不足なく説明してあるので、全文を引用する。

新しい頸城の「シンボル」であり「情報交流の拠点」となるくびき駅。その外観は、半卵型のドームを据えたような特異な形態をしています。これは建物にボリューム感を持たせ、従来の駅には無いエネルギーを発信して、その存在をアピールするためのものです。
 赤く塗られた杉の外壁は、日常の利用客に対しては正面になります。こちらの面は鮮やかさと同時に、季節の移り変わりの中でさまざまな表情の変化を見せてくれます。また、反対側の外壁には銀色に塗られたコンクリートに、目玉のようなガラス窓が開いた鉄板がはめ込まれています。新たに訪れる人々に対しては、逆にこちら側が正面になるという二つの顔を持っています。
 丸いガラス窓は太陽系をモチーフにしています。それは内と外とをつなぐ一体感と、周辺の環境を取り込むといった宇宙的な広がりを表現しています。東から差し込む太陽の光は、そのイメージを床へと映し出してくれます。内部空間は、深みと落ち着きを感じてもらえるように曲面壁を黒に塗っています。また、広がりと高さを感じてもらえるように、入口側の壁は白で塗られています。これらの塗り分けによって、空間をより大きく感じられるようにしています。上部には雲をデフォルメしたようなパネルがつり下げられていて、柔らかな浮遊感を演出しています。パネルは白から黒へ向かうグラデーションで塗り分け、単調になりがちなドーム空間につながりを持たせています。
 人々が待ち合い、ふれあう部分には木を使って、空間に変化を与えると同時に、自然素材の温もりや安心感を与えられるよう配慮しています。
 駅とは本来、日常とは異なる場所への出発の場でした。その気持ちの変化を演出するための工夫をちりばめて「駅本来の役割」を訪れる人々に感じてもらえるようにと考えています。
    設計   毛綱毅曠建築事務所


隣の大池いこいの森駅も、同じ毛綱毅曠建築事務所の設計で、やはり村のホ−ムペ−ジに写真と説明がある。一度、列車を降りると1時間を覚悟しなくてはなので、今回は降りなかった。次の機会にでも行ってみよう。)

















こちらが駅の出入り口。
向こう側(裏側)が上の写真の目玉になる。
■ くびき駅周辺を散歩する

戻る列車が出るまでの1時間くらい、駅付近を歩いて、頸城村がどんなところか見てこようと思ったのだが、降りてみると、駅は村はずれにあるのだった。
こんなところで1時間...失敗したかなと思う。

線路の右手には、刈り入れの終わった田の向こうに、米山(よねやま)が青くかすんでいる。
線路の左には数件の人家。境界にブロック塀なんかなくて、ゆるやかで、のびやかな暮らしが感じられる。
駅舎の写真をとったり、遠くの山を眺めたり、人家の間をぷらぷら歩いているうちに、思いがけず早く1時間が経ってしまった。



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