大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ 2003



 5  小屋を配置する 

番号は公式ガイドブックとガイドマップのもの。
2000-は、第1回に恒久設置されたもの。


67 母袋俊也 「絵画のための見晴らし小屋」 川西

三角形のサンドイッチを立てたような小屋。階段を上がると、黒く塗られた狭い空間があり、いくつか開けられた小さな窓から外を覗く。遠くの景色や、近くの木々の葉のかたまりが見える。
ただそれだけの仕掛けという感じで、格別の感興がわいてこない。







2000-59 伊藤嘉朗 「小さな家−聞き忘れないように−」 十日町


母袋の作品が凸型の小屋とすれば、こちらは凹型の小屋。地面を掘ってコンクリートで固めた小空間を作ってある。
中に座って外を眺めると、細い流れを隔てた対岸の森の一部が切り取られて見える。コンクリートの暗い部屋から眺めると、明るい緑の葉が風にそよいでいるのが、妙に生き生きと感じられる。生き物がざわざわとうごめいている感覚。森が生きているという感覚。
似たような作りなのに、母袋作品にはあまり感動を受けず、伊藤作品には反応したのは、なぜだかわからない。
切り取って眺められる風景の選択の相違か?
見る側の、たまたまの気分ののり方か?

http://homepage.mac.com/itopen/index.html





40 牛嶋均 「十日町基地制作隊」 十日町

十日町市内のNTT跡地の空き地。後ろには墓地がある。
開会の前日には、作家が1人で、中央に骨組みを作っているところだった。
明日からは、地域の子どもや大人と共同作業で、段ボールや廃材を使って基地を広げていく計画らしい。
楽しそう。


159 大阪教育大学・佐藤賢司ゼミ 「道草-MICHIKUSA-あるいはメッセージの<小屋>」 松代

中央の机に、鉛筆と便箋と封筒がある。何か書いたら、壁にあるたくさんの棚のどれかに置く。前に置いた人のを読んでもいい。
こんなふうなやり方は、いく度か見た覚えがある。
それぞれに違う意味づけがあったろうけれど、手法としては同じことをするのにあたって、ここではどういう意味づけをしているのだろう?
また、会期がすんだあと、残されたモノとしての手紙をどうするのだろう?

この小屋は、松代の通りのなかの空き地に置かれている。公共空間に造形物を置くことは、都会でも賛否があるのに、妻有のように自然の豊かな地域では、なお厳しい見方がありうる。この小屋は短期間だけ置かれるのだとしても、その点を十分に考えた外観だろうかと、アート系のゼミの展示にしてはやや物足りない気がした。


165 信州大学・藤田英樹ゼミ 「試験管プロジェクト」 松代

公式ガイドブックによれば、「松代の家並みに見られる木の壁や、雪囲いの木の塀を連想させる板材で建てた小屋」ということだけれど、駐車場の低い天井の下なので、窮屈になってしまったのが惜しい。

内部では、松代の中学生の町への思いを試験管に入れ、天井から吊してある。
壁には中学生が選んだ、残したい風景の写真。
でも、たくさんの試験管の中の、細い紙に書かれた文字を読むのは、ちょっとつらい。


196 川俣正 「松之山プロジェクト」 松之山

キョロロや、町の各所に「小屋状の構造物をつくり、その場所の特産品などを地元の人に出してもらう」とガイドブックにはあるのだが、道端の野菜販売所みたいなもので、小屋というほどのものではなかった。


122 小沢剛 「かまぼこ型倉庫プロジェクト」 松代

3年前に来たとき、あちこちに「かまぼこ型」の倉庫があるので不思議に思っていた。(たてに長いので僕は「釣り鐘型」と名づけていた)
いろいろな大きさ、いろいろな材料で作られているが、新しい薄い金属を加工したものばかり。昔から蔵とか、保管庫のようなものがあって、それを新しい材料に置き換えて作っているにしては、古いタイプのものを見ないのが不思議だし、木材で作るには、なかなか難しい形だろうとも思っていた。

小沢剛が調査してみると、トンネル工事の型枠が工事後は不要になって倉庫に転用され、雪国には機能的にも便利なので普及したのだという。
一般に、小型のが鉄道のトンネル。大きいのは道路のトンネルのもの。
でも、この形態の有利さから、トンネル工事に関係なく、この型の倉庫が作られている。町を歩いていても、車で走っていても、大きさといい、材料の選択、組み合わせその他、じつにさまざまなのを見かけるのだけれど、レディ・メイドの規格品もあるらしい。

*小沢剛の調査結果は、松代町の広報誌「広報まつだい」に2002年8月から連載されている

つるっとしたかまぼこ屋根より、鉄人28号のように頭の尖端にかぶと(?)みたいのがあると、雪が左右に分かれて落ちやすいのだという。

小沢のプロジェクトは、かまぼこ屋根に敬意を表して、大小7個の倉庫をつくって貸し出すというもの。いわば家ほめ。



190 ジャン=ミッシェル・アルベローラ フランス 「リトル・ユートピアン・ハウス」 松代
Jean Michel Alberola  Little Utopian House

小屋丸という集落に作られた小屋。
フランスの作家が日本で見つけた言葉とイメージを10点の壁画に描いている。
「盲導犬のように」「あらゆる少年時代の守護者」「大根ひき 大根で道を 教へけり」というような言葉は、「隣人との助け合いなど、日常の小さな行動を通して、自分が今いる場所から良い世界をつくっていこうと呼びかける内容」(公式ガイドブックから)をもつものとして作家が選んだ。

内側は鮮やかな配色だが、外は単純な簡素な形と色。
広い自然の中に小さな展示室をいくつも配置したインゼル・ホンブロイヒを思い出した。

天井に空気抜きがあるが、機械的な空調設備はない。制作は冬におこなわれ、結露がひどくて、壁にかくのはたいへん困難で、作家は日仏の気候の違いに感じ入っていたという。
また冬がきて、作品がいい状態で維持されるか、不安がある。

集落住民の集会所としても使われるという。
展示施設としても、集会所としても、よく使われるといいと思う。





2000-90 蔡國強 「ドラゴン現代美術館」 津南
91 キキ・スミス アメリカ  「小休止」 津南

Kiki Smith  Pause

2000年のとき、作家・蔡國強caiguoqiangとボランティアの人たちがほとんど1晩中、汗だくになって焼いて作った窯は、ドラゴン現代美術館と名づけられていた。
蔡國強館長と大英博物館のキューレータは、この美術館で個展を開く最初のアーティストにキキ・スミスを選んだ。
窯の前には爆竹の屑がたくさん落ちていた。今回のトリエンナーレの開会の前日、関係者が揃って開かれた前夜祭のときのものとのこと。
窯を焚いているときは、煙と炎と汗と熱気が渦巻いていたし、今回の前夜祭も爆竹の音で騒がしかったろうが、始まってからは、陶製の白い少女がひっそりした薄暗い階段で休んでいる。


220 ペドロ・レイエス メキシコ 「コンピュータ穴居人のための家」
Pedro Reyes  The House for Cpmputer Cavemen

樋田川公園という、渓流に沿って作られた公園に設置されている。
古い農具などと現代の機器を組み合わせて、新しいライフスタイルの住まいを提示する意図らしいが、コンクリートのボコボコの外形が、自然いっぱいの風景になじまない。
がっちりした作りから推察すると、この作品は恒久設置されるのだろうけれど、こういう場所にこういう人工物を置いていいものだろうかと思う。
ここに住んでいる人たちがどんな感想をもっているか、聞けなかったが、僕が近くの住民で、散歩に出るたびにこういうものが目に入るとしたら、散歩のコースをかえることにするかもしれない。


89 キム・クーハン(金九漢) 韓国 「かささぎたちの家」 津南

陶の家だときいたので、陶片を組み立てるか、張りつけるかしたのかと思ったら、この形を作ってそのまま焼いたものだった。
ここに作品を置くのにあたっては公園にしたいという住民の条件があり、その条件に沿った作品の制作時には、この地域の人たちの大きな協力があったという。
道の向かい側にある屋台の野菜販売所に、制作風景の写真が展示してあり、店番の人が熱心に説明してくれた。
こんなふうに歓迎されるアーティストと作品は幸福だ。

でもなぜかささぎなのかを聞きもらした。たしか、かささぎは九州に多い鳥。このあたりにもいるのだろうか?




* 陽の楽家(ひかりのらくや) 
設計:隈研吾建築都市設計事務所
 http://www02.so-net.ne.jp/~kuma/

これは越後妻有トリエンナーレの区域外の高柳町にあるが、川西から松代に向かう途中で回り道して寄る。
荻ノ島環状集落にある。環状といっても、完全な円環ではないが、田をぐるりと囲むように茅葺きの民家が建っている。のどかな、いい風景である。


そのなかに茅葺きの宿泊施設「荻の家」「島の家」が完成していたが、さらに交流のための施設として、県の「個性豊かなまちづくり推進事業」を導入し、町が2つの施設に隣接して「陽の楽家」を建設した。
この近くに住む、清酒「久保田」のラベルで知られる和紙職人、小林康生と交流のある隈研吾に設計が依頼された。

基本的に茅葺き屋根の家。形は茅葺き屋根の民家だし、実際に屋根は茅葺き。
縁側感覚で人の交流ができるように、壁はなく、障子だけ。障子を開いてしまえば、こちらの道からあちらの田まで見通せてしまう。


障子だけでなく、壁も柱も床も薄い、白い和紙が覆っている。
壁がないので、撥水のためにコンニャクを塗ってあるという。
障子は、紙の面と、ガラスの面が縦縞を作り、紙は淡く光をため、ガラス越しには鮮やかな緑の田をのぞむ。
雪の時期には落とし板の雪囲いを用意している。でも空調は備えているにしても、このつくりで寒さは防げるだろうか。


伝統的形態を基本にしながら、すっきりと近代的でもあり、茅と紙からは柔らかな印象を受ける。



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