今帰仁城 ( なきじんグスク) から 今帰仁村中央公民館・海洋博公園

 ■ 今帰仁村  
 1-2  □ 今帰仁村歴史文化センター  


沖縄県国頭郡今帰仁村今泊5110
 tel.0980-56-5767
http://www.reki.user.tontonme.ne.jp/


今帰仁=なきじんという地名は、文字も、発音も、ずいぶん変わっていて、ふつうならとても読めそうにない地名なのだが、かえって印象が強くまるのか、読み方を覚えてしまっている。
いったいなぜ「なきじん」で、「今帰仁」という文字をつかうのか、知りたいと思ったのだが、ここではそういう疑問には答えてくれなかった。

展示のなかに、表記の変遷の説明はあった。

今帰仁(なきじん)は1471年の『海東諸国紀(かいとうしょこくき)』の中の「琉球国之図(りゅうきゅうこくのず」に伊麻奇時利(イマキジリ)城と登場し、オモロで「みやきせん」と謡(うた)われた。古琉球(こりゅうきゅう)の辞令書(じれいしょ)に「ミやきせん」、『琉球神道記(りゅうきゅうしんとうき)』に「今鬼神」、さらに『琉球渡海日々記(りゅうきゅうとかいひにっき)』に「今きじん」、近世の琉球国絵図(りゅうきゅうくにえず)に「今帰仁」と記され「いまきじん」とルビがふられている。今帰仁という漢字があてられるようになるのは近世になってからである。
(括弧内のひらがなは、展示の文ではルビ)


でも、なきじんって何? どうしてこういう文字を使ってるの?という疑問には答えてくれない。 

文化センターのホームページに『今帰仁あれこれ 辞典風』というページがあって、用語集になっている。そこでの「なきじん」の解説は、その疑問に関わっている。
要約すると、

・伊波普猷(いはふゆう)は北方からの渡来者が本部半島に移り住み、その新来者(イマキ)に由来すると解した(『あまみや考』)
・島袋源七はナキジンの古い発音はナキズミで、そのナキズミは魚来住=魚が来て住む場所、あるいは魚が多く寄りつく場所と解している(「今帰仁を中心とした地名の一考察」)
・また別に、「今帰仁は古くマキジン又はイマキジリ・マキジリと呼ばれ、地勢上国上(頭)に対するマキ(村)下・マキ尻の義である」といった見解もある(『島尻・今帰仁考』泉奇山)
・今帰仁の語義についてまだ定説はない


こう並べると、なるほどとも思う一方、ちょっと外した見方をすると、まじめに議論をしているのか、ダジャレや思いつきを競っているのか、わからなくなるようなところがある。
でも、それが、「なきじん」の成り立ちに関わって、地勢や、歴史や、自然にまで、思いを誘うところがある。

大江健三郎が、柳田国男の岩波文庫版『海上の道』の解説を書いている。柳田国男についても沖縄についても専門ではなく、文章の特質について書くと断ったうえで、「想像力を活性化する」こと、「古代の人々及び民俗の古層へと、われわれの想像力を発動せしめる、その挑発性」が、柳田国男がその書で達成したことだととらえている。

その言い方にならえば、「なきじん」について、表記の推移だけ記した展示の文章は、一体、見る者に何を伝えよう、喚起しようとしているのだろうと、しばらく考えてみたのだが、なにも思いつけない。ただ、そういうことだったという、狭い意味での教養的知識をえたところで、そこから広がっていくものがなくて、おもしろくない。
まだしもホームページの用説明は、活性化し、挑発するものがある。

ホームページでは、また、博物館の職員があちこちに出かけていって場所を見、話しを聞き、文献を読んで、調査している様子が紹介されている。
まだ整理されていないのだけれど、「想像力を活性化する」という点からすれば、センター内の展示よりずっと面白い。こうした調査も、ひととおりまとまって「○○展」になると、退屈な教養におさまってしまうことがないように、調査研究にかける熱意を、展示にもふりむけてほしいと思う。

(『海上の道』では、「なじきん」について、MNの子音の間隔がかつては近くて、しばしば通用して、「かつてはミャキセンと呼んだ今帰仁(なきじん)の郷の名を、現在はナチジンと謂うように」と、発音についてだけふれられている。)



          ◇          ◇

ハサギの説明を見ていたときのこと。
ハサギは4本柱や8本柱に屋根を架けた小屋で、集落の聖地としての集会場になる。
等高線から作った地形模型に、ハサギの配置を記してある。
その模型で表された地域では、右端のほうにゆるい起伏の丘陵があり、そこにはハサギがなくて、白い部分が広がっている。それで、ちょっとした飾りふうにネコの置物が置いてある−と思っていたら、そのネコが、ふ〜んという感じで動いて驚かされた。
生きたネコが博物館の展示室の展示物の上で昼寝をしている!
こんなの初めてだ!
これで気持ちが活性化してしまった...
斜めに傾いた屋根上の昼寝のようなつもりで、夢見心地のなかにいるのかもしれない。
すっかりいついているらしく、文化センターのホームページにも「看板娘、ネコのミーちゃん」とある。
さすがのどかな南の国、と、こちらまで夢のような気分になる。
(博物館をネコが歩き回って資料をいためないか気になるが、このあたりにあったのは、ほとんど生活民具や、説明用に作られた資料だったから、致命傷になることはないだろう)




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