弥山・出雲大社から手銭記念館・松江北堀美術館
+菊竹清訓・高松伸その他の島根のミュージアム



 3  手銭(てぜん)記念館/大社文化プレイス


■ 手銭(てぜん)記念館

島根県簸川(ひかわ)郡大社町杵築西2450
tel.0853−53−2000
http://www.icv.ne.jp/~tezen3/


出雲大社から西へ歩いて10分くらい、古い街並みのなかにある。
大社で長く造り酒屋を営んでいた手銭家のコレクションにより、1993年に開館。
松江藩では、7代藩主松平不昧(まつだいらふまい)公以来、茶の湯が盛んだった、その文化を伝える。

江戸時代末期の米蔵と酒蔵を改造した2つの展示棟がある。
なかでも奥にある第2展示場がすてきだった。
いかにも昔の蔵の雰囲気をおびたやや暗い室内。
控えめで上品な照明が、楽山(らくざん)焼や布志名(ふじな)焼など、地元を代表する名品を照らしている。
酒だるや、火鉢などの生活民具も展示してある。
日本の古い大きな家屋には光が届かない闇があるものだけれど、天井にもわずかに照明があてれらていて、目立ちすぎない程度に太い梁の存在をみせている。

蔵から展示室に、さりげない改造のようでいて、もとは暗い蔵のなかに、小さな窓を作って自然光を少しだけ入れ、小さな人口照明で部分的に明るみを作って、明るさと暗さのバランスがじつに心地よい。
比較するにはあまりにも規模が違うのだけれど、パリの国立自然史博物館を思い出した。
こういう小さくて静かな空間に共感するのは、そのときの精神状態もおおいに関わっていそうだが、ここにもう一度来るためにだけ、もう一度出雲空港まで飛行機に乗って来てもいい、とさえ思った。

国立自然史博物館













■ 大社文化プレイス 

島根県簸川郡大社町杵築南1338−9
tel.0853−53−6510
http://www.city.izumo.shimane.jp/
(出雲市ホームページの施設情報−文化施設)
伊東豊雄建築設計事務所 1999年


図書館(でんでんむし)と、2つのホール(だんだんホール最大600席・ごえんホール最大264席)の複合施設。
出雲大社に向かう大鳥居を脇にそれると、役場の先にある。

コンペで伊藤豊雄案が選ばれたが、その後、大きな条件変更があり、8年かかって、1999年に完成している。
この建築は上空からの写真をみると、形もよくわかるし、役場や、周囲の道路、川との関係を整理して作られたことも読み取れる。

平面は1/2円に、1/4円が接続している。
小さな1/4円に図書館があり、その外側は草の土手になっていて、外から近づいていくときの気持ちがやさしくなる。


向こうに1/2円、手前に1/4円。1/4円の穴は、6角形のガラスの筒になり、図書館内に自然光を穏やかにいれる中庭になっている。

大きな1/2円に、2つのホールが入れ子状にある。入口付近は図書館とも共有の広々とした空間になっている。
とても気持ちのいいところで、図書館にもホールにも用がなくても、ロビーの椅子でコーヒーでも飲んでたくなるようなところだった。

建築をつくることは本当はシンプルで、子供でも分かることなんだってことをお話ししたいと思います。

 僕は建築の中に自分がいるとまず考えます。(中略)人間がまずいて、その周りを囲い込んでいったらどんな建築が出来るんだろうと二十年ぐらい考えてきました。「あそこに自分の家をつくろう」と思って外側から考えるのではなく、自分がまず中にいる。だから自分より一回り大きくなった洋服を想定します。洋服がどんどん膨らんでいって、「ああなんか家になった」というぐらいに考えたらいったいどういうものになるだろう。

(大社文化プレイスでは)中が重苦しい空間にならないようにふわっと屋根が架かっているイメージをどうやったら実現できるかにエネルギーを掛けました。人間ってそういうことに敏感だから、中にいるとすぐ伝わっちゃうんですね。
(「建築をもっと自由で楽しいものにしよう」伊東豊雄 『大社建築事始』建築・都市ワークショップ+今藤啓 編 所収 大社文化プレイス刊 2002 )

でも惜しいことの1.
だんだんテラスという広い階段があり、正面の入口とは別に、ロビーから下って、外に出られるように作られている。ところが障害物が置かれて通行禁止になっている。当初は開かれた公共建築を目ざしても、実際に使われるようになると管理上の都合で閉じられるのを、あちこちで見てきた。
公共建築では、楽観的な期待だけでなく、管理面の配慮もして設計する必要があるように思う。

その2.
図書館もとても気持ちいいところで、椅子や机のデザインもいい。
ただ、のんびり読書するにはいいけれど、資料をいくつも参照したり、パソコンもあわせて使ったりする、いわば本気で勉強しようという人には対応できない。
これもあちこちの図書館でよく思うことだが、休日に散歩の途中で図書館に寄ってパラパラと本を広げてみる人きり想定していないかのようだ。
そういう椅子、そういう図書館があってもいいが、どこもそんなのばかりでは寂しい。
建築家である自分が、この図書館で仕事をできるか、ということも考えてほしいと思う。









図書館の入口前から、正面入口方向を見返す。




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