京路戸峠から佐野市立吉澤記念美術館で若冲を見る/
ライシャワーとアントニン・レーモンドと松方家の人々



 2-1  佐野市立吉澤記念美術館


栃木県佐野市葛生東1-14-30
tel. 0283-86-2008
http://www.city.sano.tochigi.jp/museum/




吉澤コレクション:
吉澤家は、江戸時代には酒造業を営む豪農であったが、明治になってからは地元の石灰岩の資源価値を見いだし、石灰業に転換して成功している。
江戸時代後期の13代当主の吉澤松堂が、当時盛んだった文人趣味から美術品の収集を始めて現代まで継続し、幅広いコレクションを築いてきた。
町にそのコレクションと美術館施設を寄贈して、美術館が2002年6月に開館した。

多様なコレクションのなかでもいちばんは、伊藤若冲(1716-1800)の「菜蟲譜」。
1927年の恩賜京都博物館「斗米庵若冲画選」に記録が残るが、以後行方がわからず、ほとんど存在が諦められていたものが、1999年に吉澤家で発見された。
修復はしたろうけれど、長く忘れられていたにしては、しわも破れもなく、色も十分鮮やか。
10mをこえる横長の紙の、右から左へ、いくつもの野菜が描かれ、半ばから虫たちになり、また野菜が描かれて終わる。1790年77歳ころの作品だが、たくさんの命が生き生きと現されている。

開館記念展では、渡辺華山1793-1841「風竹図」、狩野探幽1602-1674「十牛図」、田崎草雲1815-1898「怒濤・牡丹図」などの見応えのある作品が並び、もっと新しいところでは板谷波山などの陶芸作品もある。
できあがったコレクションを展示するだけではなくて、石灰の町にふさわしく、石灰をつかうフレスコ画の作家を育てていく計画もあるらしい。


はじめに入口の門を入ってくると、池のある広い庭の先に低い建物があった。美術館の建築もすっきりして、過剰な感じがなくて、いい。
庭を歩いて建物の左手に回っていくと、白い壁の一部が石造りの黒いドア状になり、階段が外に降りている。じっさいには扉ではなく、壁の一部で、まったく開かない。発注者か、設計者が、遊んだのかと思ったら、いつかここにオブジェを置く計画だという。建物の脇の壁にどんなものが置かれるのか、楽しみである。

設計は芦原太郎建築事務所  http://www.t-ashihara.co.jp/


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