Ⅱ-3 『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』-少年はフードトラックでアメリカ大陸を西へ、ベニエを作る

カールはロサンゼルスにあるレストランのシェフで、斬新な料理をつくり、ファンも多い。 レストランの経営者は、定番の人気のある料理で稼ごうとするかたくなな人。 料理批評で超有名なブロガーが来店するという日、カールは独創をふるまおうとするが、経営者は安定を強要する。
 ストーンズのライブで"サティスファクション"を聞けなかったら?
 満足するか? 客は怒りまくる。
 いつものメニューを皆期待してる
 あとは君の判断だ 私はヒット曲を推すがね

カールはしかたなく定番メニューを作るが、ブロガーから酷評され、経営者とも衝突して店を辞める。

カールには離婚した妻イネズとの子で10歳になるパーシーがいる。 元妻と暮らしていて、カールは定期的に会うだけだが、パーシーは父を慕っていて、もっと近づきたいと思っている。
カールとイネズは離婚はしているが、仲が悪いわけではない。 カールが店を辞めて時間ができたので、イネズに誘われパーシーと3人一緒にイネズの故郷のマイアミに行く。 そこで食べた料理は絶品で、カールはフードトラックで売ろうと思いたつ。 マイアミには、イネズの(先代の)元夫がいて、中古のフードトラックをただで提供される。 イネズはどうもはじめからそういう目論見で、元夫を復活させようとしてマイアミに誘ったらしい。
トラックはただのかわり、とてもおんぼろだったが、カールとパーシーは協力してきれいな移動屋台に改造する。
ここまで下向きだった話が、ここから元気で絶好調上向きになっていく。
ロスのレストランでカールを慕っていた料理人も加わり、3人で、マイアミからロスまで、おいしく気楽な料理を売りながら帰っていく。

カールとパーシーは、その間にぐっと親密になっていく。 途中にディズニーワールドがあるので、カールが寄っていこうかと言うと、パーシーはニューオーリンズに直行したいと言う。 前にカールがこう言ってたからだった。
 ニューオーリンズは食い物も文化も独特だ
 アンドゥイユもあればベニエもある
 (ロスで食べている)これ? 本物じゃない
 あの街が懐かしくて食ってるだけさ あそこは特別な場所だ


ニューオーリンズに着く。
 フレンチマン通りだ バーボンは観光客向けさ
 カフェ・デュ・モンドに行く
 初ベニエだ 味わって食えよ


カールたちが作るものは好評で、トラックには人だかりができる。
黒板にメニューを書くなかにベニエもある。
「Beignet $3」というふうに、アメリカでもフランス語のままのつづり。
油で揚げた菓子のことで、フランスほかヨーロッパ各国でいろんなバリエーションがある。
アメリカではニューオーリンズのカフェ・デュ・モンドの四角い揚げ菓子がとくに有名。

こんなふうに楽しく盛り上がりながら、敗れてあとにしたロサンゼルスに凱旋する。
そこでブロガーとの大逆転の和解があり、はじける祝祭がある。

主演のカールは、脚本を書き、監督もしたジョン・ファヴロー。
ほかに儲けに徹するレストラン経営者がダスティン・ホフマン。
カールとあやしい仲だったレストランのウエイトレスはスカーレット・ヨハンソン。
イネスの元夫で、ひねくれたことをさらっというのがロバート・ダウニー・Jr.。
短い登場シーンにすごい顔ぶれが現われて、さすがの演技と存在感でキリッとひきしめる。
この映画は2度見たが、今度見るときはビールを用意して飲みながらにしようと思っている。

* 『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』原題Chef 2014