Ⅱ-9 『トランスポーター』 危険を運ぶ人-快速の快楽2

ジェイソン・ステイサムが黒いBMWを走らせるクールな運び屋(トランスポーター)のフランク・マーティンを演じて、ピシッときまっている。
「契約厳守」「(関係する人誰のも)名前を聞かない」「依頼品を開けない」という3つのルールを依頼人に承知させたうえで、仕事を引き受ける。
運び屋が主役の映画となれば、数々の困難、妨害をかわして運び遂げる-という展開を何となし思い描いていた。
ところが運ぶ仕事が始まってまだ早いうちに、相手にルールを守らせるどころか、運び屋じしんが破って依頼品をあけてしまう。
トランクをあけたときに、依頼品がモソモソ動いて、中身は生きている人間!
そうわかってしまったので、途中でせめて飲み物を補給してやろうと袋を開いてしまったのだった。
中にいたのはアジア系の少女で、あれこれのやりとりがあるうちに、結局、少女を助けることになってしまう。
少女は人身売買の取引が行われる秘密を知っていて、運び屋が少女に協力してそれを阻止するために超人的な活躍をする。
スピード感あふれるアクションが続いておもしろかったのだが、見終わってわれにかえってみれば、運び屋が別の運びを阻止するという、ちょっとひねったストーリーだった。

マーティンはアメリカ人でもと軍人。
いまはニースの眺めのいい海岸に家をもって暮らしている。 映画の初盤、銀行強盗の逃走を巧みな運転で終えたあと、そのとき使われた車が黒いBMWだったもので、同型車を持つマーティンのところにフランス警察のタルコニ警部がやってくる。
うわべは穏やかな会話で、警部はマーティンに「外国人にしてはユーモアがある」とか「ニースはいいよ 魚がうまい、それに女性...」とかいいながら、車や家の様子を観察している。
マーティンは、はぐらかし、決定的な証拠もない。 でも警部はマーティンの仕事とほぼ確信する。
このあとまたあれこれの展開があり、マーティンは警部に事情をあかす。
警部はマーティンを信頼して人身売買を阻止することになるのだが、この2人のやりとりもおかしく、信頼感が気持ちがいい。
運び屋を題材にしながら、ストレートなアクション映画ではなく、ひねたっり、ユーモアをいれたり、「アクション映画にしてはユーモアがある」ところが、いかにもフランス的。
製作・脚本リュック・ベッソンのセンスがいきていて、とても楽しんだ。

* 『トランスポーター』Le Transporteur 監督ルイ・レテリエ 製作・脚本リュック・ベッソン 2002