Ⅱ-10 『TAXi』 刑事を運ぶ人-快速の快楽3


高速で走りたがりのタクシー運転手ダニエル(サミー・ナセリ)。
「空港まで25分で!」なんて急がせる客が乗ると、待ってました!と勇んで走って14分で着いて、客は降りるとたまらずに吐いている。
車の運転ができないうえ、捜査もヘマばかりの刑事エミリアン(フレデリック・ディーファンタル)をたまたま乗せた行きがかりで、この2人が組んで連続銀行強盗をつかまえる。

『トランスポーター』と同じリュック・ベッソンの製作・脚本で、同様の快適なテンポとユーモアで魅せる。
舞台は『トランスポーター』がニースで、こちらはマルセイユ。
南仏の明るい海辺で、どちらも街の風景が映るだけで祝祭的はなやかさがある。

銀行強盗はドイツ人グループで、ドイツのベンツを駆使する。
タクシーの車はフランスのプジョー。
独仏の対抗意識を背景に、会話にしばしばフランスとドイツのあてこすりがでてくる。

ダニエルの恋人リリー(マリオン・コティヤール)がキュートで愛らしい。
ふたりきりで沸騰してきて、さあセックスというところで、どちらかの勤務時間がきたり、銀行強盗を追いかけに行かなくてはになったり、じらされる。
最後でようやくかなうのだが、ここまでのギリギリのもっていきようのユーモア感覚も、さすがにフランス的な感じがする。

高速タクシー運転手とヘマな刑事という組み合わせは秀逸で、このあといくつか続編がつくられている。
また別なストーリーではなく、第1作を基調に舞台をニューヨークにうつしたリメーク版もつくられた。
こちらは女性がタクシーのドライバーで、ニューヨークの市街や川のあたりを走り抜ける。
オリジナル版の骨格を生かしながらアメリカ的展開もあって、これもたっぷり楽しめた。

* 『Taxi』 監督ジェラール・ピレス 1997