天の川-夢のなかのひと

「江差追分」で有名な江差町から、渡島半島の海岸線を通って函館まで続いている国道228号線を南に走る。
江差町から上ノ国町(かみのくにちょう)にはいると、まもなく天の川にかかる橋を渡る。
この天の川という名には、天体に関わる由来があるわけではないが、今は観光的・まちおこし的しかけはされている。
228号線に架かる橋付近は、織姫と彦星を仲立ちするかささぎにちなんで「天の川かささぎロード」として星座のモニュメントがつくられ、橋のたもとには 「きらきらお星さま公園」がある。

天の川の河口
橋を渡ってから右折して、川沿いの細い土手道を河口に向かっていく。
まもなく車が走れるほどの道は行き止まりになり、その先にはたよりなげな細 い道だけがのびている。
両岸から砂嘴がのびて、海へ向かう川の流れは狭められている。
静かないい河口だ。
買い物車を押した年配の女性が通りかかった。
あいさつをすると「涼しくなりました」と軽く返事をされて、ゆっくり過ぎて いった。
人けのない河口の道のこと、すぐ近くにはその女性が住むらしき家も、買い物をするらしき店も見あたらない。
夢のなかの景色のような気さえする。


228号線に戻ってからまもなく、今度は山に向かう道に左折して上がっていく。
天の川の河口を見おろして夷王山(いおうざん)という小さな丘がある。
かつて勝山館(かつやまだて)という山城があった。
15世紀後半に築かれ、その後に松前に本拠が移ってからもサポートの役割を になっていた。

勝山館跡ガイダンス施設
今は「勝山館跡ガイダンス施設」がある。
遺跡の資料などをおさめた施設は、ふつう博物館とか資料館とか名づけられる が、ここではガイダンス施設という珍しい名前になっている。
写真は開館前の準備時間に撮ったもの。これから右のほうの 2枚の木の戸もあけられる。
開館後、中に入ると、全面ガラスなので外への展望が開けて、気持ちがいい。
職員の方に説明してもらいながら展示を見た。
勝山館の区域ではアイヌも一緒に暮らしていた痕跡があるが、どういう関わ りだったかはまだわかっていないといわれる。
アイヌが関わっていたことにも、詳細が不明なことにも、そそられる。

夷王山から天の川河口
外に出て短い坂を上がって夷王山のピークに立つ。
夷王山神社があり、社殿はこぢんまりしている。
見下ろすと、近くには天の川の河口。
川は右から左の海に注いでいる。
砂州が向こうからこちらにのびて きている。

夷王山から江差を遠望
海岸線を目でたどっていくと遠方には江差が見分けられる。
江差港のすぐ外に小さな鴎島があり、島と港をむすぶために埋め立てて作られた細い帯があっ てそれとわかる。
夕べは江差に泊まったのだが、町にはいろいろ味わいぶかい見どころがあって楽しかった。

(2016.8)