石川-粟島行きの港

-川河口
石川の河口は岩船港になっていて、左岸に粟島汽船の乗り場があり、その駐車場に車を置いた。
粟島は北西35キロほどのところにあって、東西4.4km、南北6.1km、海岸線長23 kmの小さな島。
フェリーで1時間30分、高速双胴船55分。

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粟島は一島一村で、岩船郡粟島浦村。
人口350人ほどのこぢんまりした島だから、コロナウィルスが入りこんだら、すぐにとてもきびしい状況になる。 それで村外者は船にはほとんど乗れない。 白いボードに乗船前に検温などの指示が書かれているが、その前段階として、ほとんど国外から入国したくらいの要件をクリアしなくてはならない。
島の経済には観光が重要だが、今は平穏こそ守らなくてはならない。

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左が乗船所。
右が搭乗口で、その先が河口。

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石川の河口。
ここから石川の水が海に向かい、粟島行きの船がそれに乗って出ていく。

粟島は椎名誠の『わしらは怪しい探検隊』(角川文庫 1982)にでてくる。
椎名誠とその仲間たちがあちこち出かけてキャンプを楽しむなかで、粟島には数回行った。
 夕陽に似合う食べものといったらその最高は粟島のわっぱ煮である。
という。
わっぱ煮は、 薄い杉板を曲げてつくった「わっぱ」に、焼いた魚とネギを入れて水を注ぎ、熱した石を落として一気に煮立せ、味噌を加える。 魚はメバルやカワハギなど、その時期の旬のものを使う。
椎名誠は、ひとことでいえば「焼き魚の味噌汁煮」と要約する。
「怪しい探検隊」は、浜で流木をあつめて火を焚き、やはり浜で拾ってきた石を焼き、釣ってきたばかりの魚を食う-というのだが、名物になったわっぱ煮を観光客に用意するときには、より安定した材料をつかうのだろう。
「怪しい探検隊」が粟島を気に入って何度か訪れたのは1970年代のこと。
その紀行文では「人口八百人ぐらい」とあるが、2020年にはその半数以下になっている。
さらにコロナ禍がますます暮らしをきびしくしているだろう。
ふつうなら1時間ほどで行けるところ。
河口の水面の輝きを眺めるとその先にある島に渡ってみたい気がするが、今はとても遠い。

(2020.10)