名立川-あざやかな日没、夜中には雷雨

名立駅
名立駅:川の上にホームがある!
名立川の河口から900mほどさかのぼったところを日本海ひすいラインが横切っていて、川の上に名立駅がある。
日本海ひすいラインは、もとJR西日本北陸本線の一部。
2015年に北陸新幹線の長野駅 - 金沢駅間が延伸開業したときに経営分離された区間のうちの新潟県内の路線。
(石川県ではIRいしかわ鉄道、富山県ではあいの風とやま鉄道が継承した。)
糸魚川市市振駅と上越市直江津駅を結び、59.3 km、13駅。
駅舎に入ると、地下道があり、市振方面行き、直江津方面行きのそれぞれのプラットホームに上がる階段がある。
写真は、市振方面行きのプラットホームから、名立川上流方向の眺め。向こうの高架構造物は北陸自動車道。

名立駅
名立駅:
駅のホームの下を名立川が流れていく。
駅名表示にある「ETR」は、日本海ひすいラインの運営会社、「えちごトキめき鉄道」のこと。
駅舎を出て、川に沿う遊歩道を少し歩いた。 ちょうど13:47発、直江津行きの電車が通った。
駅舎には、花が飾られ、子どもたちが描いた絵が展示されていた。 大事に、親しまれている駅という感じがして、ほんわりする。

名立川の右岸河口
うみてらす名立ホテル光鱗:
今夜泊まる宿は、名立川の右岸にある。
「うみてらす名立」という道の駅で、海産物の売場やレストランに加えてプールなどもある複合施設。
そのホテル部門は「ホテル光鱗」という。
海産物に限らず、自然資源をさまざまに利用している施設で、風力発電の羽根が回り、海水をろ過するタンクもあった。
濾過した海水は魚の養殖用か、それともプールに使うのだろうか?

名立川の河口の日の入り
夕陽:
7月の日の入りは遅い。
夕飯を食べたあと、外の散策路を歩いているとき、水平線に日が沈んでいった。

穏やかに日が暮れたのに、夜中に天気が大荒れ。
部屋はオーシャンビュー、海側はほとんど全面ガラスで、雄大な景色を眺められた。
夜はかなり厚めのカーテンを閉じて寝た。
ところが夜中に激しい雨と雷の音がして、目を覚まされた。
厚めのカーテン越しでも、稲光が繰り返しフラッシュする。
翌朝は、またすっきり晴れていたが、遊歩道にはあちこち大きな水溜まりができていた。

北国街道名立宿
名立宿:
ホテルに「名立今昔」という観光案内の印刷物があり、それによるとこのあたりは北国街道名立宿だったとある。
伊能忠敬が測量の旅で泊まり、十返舎一九が、ここでは「タコの桜煮がうまい」と書いているという。
ちょっとそそられて、朝食後、見に行ってみようと出た。
国道8号をくぐる地下道が作られていて、そこを抜けて上がると名立宿の通りに出る。
海岸線に並行して細長く集落があるのは、新潟の海岸線でしばしば見かける。
両側にいくつも風情のある構えの家々が並ぶのを期待していたのは外れて、ほとんどが現代のつくりだった。
観光ガイド地図では、本陣宿、庄屋、宮大工などがあったところが示されていて、往時を想像するほかない。

北国街道名立宿の水路
名立宿の水路:
ただ歩いていておもしろいと思ったのは、家と家の間にいくつかの水路が集落を横切るふうに流れていた。
内陸側から海に向けてはいくらかの傾斜があり、細いながら水がかなりの速さで流れていた。
すぐ近くを名立川が流れているのだが、そこにつづくこの街では(今は水道が完備しているだろうが)かつてはこんなふうに生活用水を確保していたようだ。
ある水路では、写真にあるように防火用水としても確保されている。

名立川の河口
名立川河口:
名立宿の通りを歩いて行くと、名立川に行きあたる。
右岸はコンクリート護岸で、国道8号をくぐると、名立川の河口にでる。
夜中の雷をともなった強い雨により、泥の色をした濁流が、激しく海に押し寄せている。
きのう名立駅から見おろした名立川は、水量が少なく、川底の砂利があらわれている間を、幾筋かの水が流れているくらいだった。
河口もふだんはずっと穏やかな風景なのだろう。
(写真、手前が影になっているのは、国道8号の名立大橋)

鳥ヶ首岬灯台
鳥ヶ首岬灯台:
名立川の河口付近から、国道8号を東へ、直江津方向に向かうと、道がゆるやかに右へカーブしていく。
カーブの頂点が鳥ヶ首岬で、国道より高い位置に灯台があり、行ってみた。
この高い地形は、名立駅の背後にあたる。
1751年、高田付近を震源とする地震が発生し、それに誘発されて名立に断層が生じ、地すべりが起きた。 「名立崩れ」と名づけて伝わるほどの大規模な変形で、被害も大きかった。
国道からそれて急坂を上がり、灯台と海を視野に入れられる道ばたに車をとめた。
地すべりのあとに生じたほぼ平坦な土地は田畑になっている。
7月のはじめ、日射しは熱すぎるほどではなく、稲穂をなでてくる風が心地よい。
小さな灯台があるくらいで、とりたててかわったところがある眺めではないのだが、なんだか立ち去りがたく、しばらくただ立って、日射しの熱や、風の感触とかすかな音を感じていた。

(2022.7)