[富山県東部の海岸] 3 魚津埋没林と鴨川/早月川に観覧車

[富山県東部の海岸]
 1 回転橋と地下道がある黒部漁港と高橋川
 2 有名な黒部川/無名の吉田川
 3☆魚津埋没林と鴨川/早月川に観覧車
 4 ほたるいかミュージアムと中川放水路
 5 白岩川にイカの壁画食堂/常願寺川にボートハーバー

あいの風とやま鉄道の魚津駅と、富山地方鉄道の新魚津駅とは、接している。
駅から東側に出てすぐにある観光案内所で自転車を借り、鴨川、角川、早月川の3つの河口を巡った。
魚津駅から海岸線まで直線距離で800mほど、鉄道と海がいちばん近づく西魚津駅あたりでは300mくらい。
海岸線と鉄道が近くを並行している。
3つの河口のうち、魚津駅から南にいちばん遠い早月川河口までが4kmくらい。
穏やかな日なら自転車で走るのにちょうどいいくらいの距離になる。

魚津埋没林博物館
はじめに魚津埋没林博物館に行った。
2000年ほど前の杉の巨木林が、その後の海陸の変化により、いったん海に埋もれ、次に陸に覆われ、1930年代、魚津漁港建設工事にあたって発見・発掘された。
ドームの中に出土状態が展示されているほか、埋没していた巨木の周囲に地下水を満たし、海中にあったときの様子も再現している。
片貝川の伏流水を導いているうえ、水槽はプールのように底張りしていないので湧水も上がってきていて、かつての環境と近い状態にあるという。
根の端から端まで約10m、樹齢500年と推定される大木がひっそりと水中にあり、圧倒された。

鴨川河口
[ 鴨川 ]
水源:片貝川黒谷頭首工(魚津市黒谷)
河口:富山湾(魚津市)
延長:3.9 km

博物館から、海岸に沿って自転車で走ると、さらっと鴨川の河口に着く。
川の両岸も、川の左右の海岸も、きっちりコンクリートで護岸されている。

鴨川河口
河口から上流の眺め。
市街地の中を細く流れてくる。
片貝川から取水した農業用水だが、街の中心部を貫いていて親しまれる川だったのに、1980年代はひどく汚れた川だったという。
住む人たちの清掃活動などもあっって改善し、今はほぼ透明で濁っていない流れが海に注いでいた。

角川河口
[ 角川 (かどかわ) ]
水源:木曾平
河口:富山湾(魚津市)
延長:15.5 km

海に沿って明るい気持ちいい道を自転車で走って、またまもなく次の角川に着く。
鴨川と同様に細く、市街地をなにげなく流れて海に終わっている、ありきたりの川のようだが、こちらは地形的・歴史的由緒がいろいろある。

・魚津市東部の木曽平(片貝川および早月川の分水嶺)に源がある。
(鴨川は片貝川からの分水で、とても短い)
・名前の由来は、能登から鹿がこのあたりへ渡ってきたので「鹿途川」といわれ、元禄期から「角川」と表記された。
・片貝川や鴨川、早月川などとともに、魚津城の防衛の役割も果たしていた。
(魚津城跡は近いが、そこには大町小学校ができ、その学校も閉校している。)
・流水には上流の金山からの微少な金が含まれていたので、黄金水と称された。・夏でも長く腐らないため、往来する船が飲用水として利用していた。

今わずかに歴史を感じさせるものとしては「万灯台」(まんとうだい)がある。
写真の右端に見える、とがった帽子状のものがそれで、江戸時代、大阪と北海道・東北を結ぶ海運が盛んで、船の安全のためにつくられた。
もとは河口先端にあったが、2度移転して、海から少し離れた現在地にたっている。

角川河口 雪捨て場 右岸にこんな案内標示があった。
「雪捨て場は旧国道8号早月大橋下に変更しました
 富山県新川土木センター」
この柱の周囲は堤防で、ちょっとした広さがある空き地になっているから、雪を積んだ車が続いて入ってきても大丈夫そう。
別の適地に変更されたようだが、冬季、雪かきした雪をどこに置くかは悩ましいことで、こうした捨て場が用意されているものらしい。

早月川河口 ミラージュランド
[ 早月川 ]
水源:剱岳 2999m
河口:富山湾(滑川市と魚津市の境界)
延長:27 km

また自転車で軽く走って、次の早月川河口に着く。
右岸はミラージュランドという遊園地になっている。
大観覧車があるので、乗って高いところまで上がり、河口と立山連峰の広大な眺めを見てみたいと楽しみにしてきた。
ところがこの日は水曜日で、休園日だった。
しかも大観覧車は塗装工事のため10月10日から運転休止になっていたのだった。
それならかえって水曜日に来てしまったことも諦めがつきやすい。
寒い地域のことだから、この先12月初めから3月半ばまで「冬眠休暇」になる。

早月川河口
早月橋を渡って、左岸の河口にでる。
石ころの河原を幾筋かに分かれて水が流れてくる。
右岸の大観覧車の向こうに立山連峰が居並んでいる。

早月川の長さは27km
剱岳の水源は2000mを越えていて、そんな高山から海まで、わずか27km。
東京駅から横浜駅までがほぼ30キロ-と思えば、高山から海まで異様に近い。
水はすさまじい急勾配を流れ下っている。
明治期、オランダ人土木技師のヨハニス・デ・レーケが近くの常願寺川を指して「これは川ではない、滝だ」といったという通説が、かつてあった。
ところが実は、別のオランダ人土木技師のローウェンホルスト・ムルデル(1848-1901)が早月川河口のことをいっていたことが、2020年ころに明らかになった-ということを、この河口めぐりのうちに知った。

早月川河口
ふたたび早月橋を渡って右岸に戻る途中、橋から河口の眺め。
このあとまた海に沿って気分よく自転車で走って、魚津駅に戻った。


(2023.10)