那珂川-楽しい河口

那珂川河口
右岸からの那珂川河口の眺め。
手前から向こうに右岸の防波堤。
その先で水平に見えているのは、左岸からのびる防波堤。
太平洋の波が(写真では右から左へ)繰り返し激しく寄せている。

海門橋
河口からすぐに海門橋(かいもんばし)がある。
那珂川は何度も洪水を起こしてきた川だし、海からも大きなエネルギーで波が打ちつける。
1875年に最初に架かった木橋は翌年の洪水で流失した。 その後、架橋-流失を繰り返し、1930年にようやく鉄筋コンクリートの橋が架かった。 4連のアーチで美しいものだったというが、それもわずか8年後、1938年の洪水で壊れた。
現在の橋は、それから21年も経た1959年に完成した。

アクアワールド大洗水族館
海門橋の南側、河口の右岸側にアクアワールド大洗水族館がある。
多種のサメの飼育に特色がある。

アクアワールド大洗水族館の水槽
水族館の大きな水槽。

水戸八景「巌船夕照」
河口近くのホテルに泊まった翌朝、散歩に出て、水族館がある右岸河口から上流に向かった。
海門橋をくぐって遊歩道がつづいている。
まもなく川を見おろす小高い地点に出る。
水戸八景「巌船夕照」(いわふねのせきしょう)の碑がある。
水戸八景というのは、水戸藩の第9代藩主斉昭が、藩内の8つの景勝地を選んだもの。
ここからの夕日の景色をめでているが、碑からの正面は北で、西からの夕日がきれいに眺められるのかなあ-と、すっきりしなかったが、朝の散歩では確かめようがなかった。

那珂川と涸沼川の合流点
「巌船夕照」碑からは、眼下に涸沼川(ひぬまがわ)と那珂川の合流点がある。
写真での下方、左から右に涸沼川。
それよりやや上から斜めに流れてくるのが那珂川。
合流部の先端近くにヨットハーバーがある。

那珂湊の日和山
いったんホテルに戻って朝食を食べ、チェックアウトしてから車で出た。
朝、歩いてくぐった海門橋を、今度は車で右岸から左岸に越える。
越えた先に小さな台地があり、湊公園になっている。
那珂川の流れを見おろす景勝の地で、歴代の水戸藩主の別荘があり、天候や船の出入を見る日和山でもあった。
藩主の別荘は幕末の騒乱で焼失し、明治期に公園として整備された。
また、かつての水戸八景の1つでもあり、「日和山秋月」と記した碑が立っている。
今は河口周辺に建物が建ち並び、台地の周囲の木が繁り、河口の見晴らしはあまりよくない。

那珂湊の反射炉
湊公園がある台地を西に歩いて行くと、台地の縁(へり)に、復元された反射炉がある。
幕末期の1857年、水戸藩が外敵に備えるために作ったもので、これで製鉄して大砲を鋳造した。
当時の水戸藩は、意識も知識も先進的だったが、先鋭に過ぎたということか、決起軍と鎮圧軍の戦闘があって破壊された。

稲葉屋菓子店 反射炉の鉄砲玉
湊公園の駐車場に戻るのに、同じ道では退屈なので、台地の南の縁、那珂川に沿った道をとった。
途中で稲葉屋という菓子店があった。
反射炉にちなんだ「鉄砲玉」が名物のようだが、飴玉で、飴をなめるのはちょっとなあ、ということで、ガラスケースに並んだなかから草餅など買った。
三浜焼(さんぴんやき)というのがあった。芋あんの中に名物の干し芋をいれ、卵風味の皮で包んであり、 ほっこりおいしかった。

那珂湊魚市場
湊公園の台地から東、太平洋岸に向かって下ると、那珂湊魚市場がある。
一般客向けに海鮮品を並べた店や食事処もたくさん並んでいる。
コロナ禍でもかなりな人出があり、ふつうの時期ならもっとにぎわうのかもしれない。
いきのいいものを揃えているらしい店がいくつもあるが、昼食には少し早い時間なので、また海門橋を越えて、那珂川右岸に戻った。

月の井酒造店
地酒『月の井』をつくる酒蔵が大洗の旧市街にある。
「月の井」は、磯に寄せて砕ける波頭に月の光があたって輝く情景から名づけられ、漁での出舟、入舟のときの祝い酒として親しまれてきたという。
1本みやげに買う。

味処大森
駅からわりと近い住宅街に海鮮料理の名店があるときき、そこで昼食にした。
店は味処大森
僕は刺身定食、妻は海鮮丼、どちらも新鮮。
それにカレイの唐揚げ。
身のほかに、骨と皮をそのまま揚げたのがあって、生のさかなとカリッとした揚げ物とが、とても相性がいい。
次に大洗に来る機会があったら、近くにホテルをとり、ここで夕飯にしてゆっくり飲むのもいい-と夢想した。

涸沼川
店の北側に出ると、涸沼川が流れている。
草とか石とかの川原がなくて、川幅いっぱいに、たっぷりした水量の川が、ゆったりとした風情で流れている。
ここから(写真では右に)間もなくで那珂川に合流し、すぐに太平洋に注ぐ。
満潮時には、この涸沼川まで海の水が上がってきて、さらに上流にある涸沼湖は海水と淡水がまじる汽水湖になっている。
河口から汽水湖のあたりまで海の魚と川の魚がとれて、釣り人にはいい所のようだ。

いくつも見どころ、おいしいところがあるし、河口近くに海川を眺められる宿もあり、めぐりがいのある楽しい河口だった。


(2021.6)