瀬戸川-至福の河口ビュー・ホテル

静岡市街を形成する平地と、焼津市街を形成する平地との間に、南アルプス山脈の南の先端が海岸近くまで迫っている。
それで東海道の道や鉄道が海岸近くに集中し、トンネルになったり(新日本坂トンネルなど)、一部陸地を離れて海の上を走るようにつくられた道まである。
そのヒトやモノが大量に高速移動する交通集中部のすぐ近くの山側の先端部に、ひっそりと花沢の里がある。
静岡市の安倍川から焼津市の瀬戸川に向かう途中で寄り道した。

花沢の里
花沢の里は、細い谷川沿いにある30戸ほどの山村集落。
万葉集の一首がここのこととされているほどに古い。

  やきつべに吾ゆきしかば 駿河なる
  安倍の市道(いちぢ)に 逢いし児らはも

「やきつべ(=焼津の方)に行ったとき、安倍の市場へ続く道で出会った娘たちは、いまどうしているだろう」

住居は、江戸時代以来の伝統を残し、明治期以後のみかん栽培の繁栄により増改築されてきた。
石垣を組んで確保した土地に家を建てる独特の景観で、2014年に静岡県で初めて国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。
ゆっくり歩いていると、気持ちもゆっくりしてくる。
家並みと木々の斜面の底から見上げると、真上には空が抜けている。

花沢の里 カントリーオープン
カントリーオープンというカフェで休憩した。
古い家のうちの1軒が、石垣の上の倉庫だったろうかと思える小屋をカフェにしている。 道に面した側を広い窓にしていて、道の向こうの木々を眺めて座ることになる。
おやつセット600円を注文した。 コーヒーに、3種のおやつ-クリームブリュレ、ビスコッティ、ケーキ-がついている。 どれもさりげなくおいしくて、安価なのが申し訳ないような気がするほど。 (それでいくらかでも支払いを加えようと、おみやげにティーバッグを買った。)
海から山里に来たので、青い水が黄葉の木々に、波音が川のせせらぎに置き換わり、気分が更新して新鮮だった。
すぐ近くをせわしく密に東海道が走っていると想像すると、なお静かさと不思議な感じがまして感じられる。

瀬戸川河口 浜当目地区安全タワー
山を出て、焼津市街に入り、瀬戸川左岸に。
津波から避難するための「浜当目地区安全タワー」がある。
(「浜当目」は地名として珍しい語感だが、素直に「はまとうめ」と読む)
海抜3.4mに立ち、最上部は15.5m。
対岸には中港タワーがあり、そのほか焼津市海岸部にはいくつかのタワーがあって、どれも東日本大震災(2011年)をうけて2013年ころに作られている。

瀬戸川河口 右岸
浜当目地区安全タワーに上がって見おろした瀬戸川河口。
左岸は、海岸と川近くまで住宅街で、堤防の外にバックネットのある変形グランドがあり、その先は砂浜で海水浴場になっている。
右岸には焼津港があるのだが、河口部は港の裏側にあたっていて、大きな冷蔵倉庫が見えている。

瀬戸川河口から亀の井ホテル 焼津 遠景
浜当目地区安全タワーから、北方向の眺め。
左の緑の高台の中腹に、今夜泊まる予定の亀の井ホテル焼津。
あそこに行けば好展望を楽しめそう-と、期待がふくらむ。
2つの小山の間に見えているのは、松風閣という別のホテル。

亀の井ホテル 焼津
そして亀の井ホテル焼津の部屋に入ると、期待どおりの河口ビュー。
写真の右端中央部から、瀬戸川が左へ焼津市街を抜け、海に流れている。

亀の井ホテル 焼津
亀の井ホテル焼津は、全室オーシャンビューなのだが、僕らが泊まったのは、最上階7階の、露天風呂付特別和洋室。
湯にあたたまりながら河口を眺めるという至福のときになった。

焼津港の町並み
翌日、焼津市役所の駐車場に車を置いて、焼津港に沿った通りを散歩した。
看板の文字を眺めていくと、いかにも海の町、港の町という感じがする。 佐田潜水、松永帆屋、鰹の素、いかの白づくり...
小泉八雲滞在の家跡というのもあった。

焼津 まぐろ茶屋
焼津港から南へ歩いていくと、うみえ~る焼津という、海産物販売と海鮮料理の施設があった。
2階に上がり、まぐろ茶屋に入る。
上刺身定食2,500円を選ぶ。
カツオ、タイ、マグロなど、厚くて新鮮、ご飯をするっと食べてしまった。

焼津漁港親水広場 カツオベル
食事を終えて、「うみえ~る焼津」からさらに海側にある「ふぃしゅーな親水広場」を歩いた。
ハート形の中央にはカツオベルが吊られていて、カツオの頭の形をしていた。

(2022.12)