神通川-2.空港

富山空港は神通川の河川敷にあってとても驚いた。 河口からは直線距離で13キロほどあり、河口にある空港とはいいにくいとしても、神通川は120kmもあるし、河口から市街がずっと続いているところにあるし、河口域といっていいだろう。 河口の近くの空港はほかにもあるが、河川敷にあるのは全国でここだけという。

富山空港
滑走路は神通川右岸の河川敷にある。
管制塔を含むターミナルビルは河川敷より外にある。
滑走路とターミナルビルの間に堤防があり、旅客はビル内の搭乗ゲートを抜けると、堤防をまたいでいる長いボーディング・ブリッジを歩いて飛行機に乗りこむ。 それでボーディング・ブリッジの長さは日本一とのこと。

僕はかつて埼玉県を流れる荒川の川ばたにある博物館で仕事していたことがある。 本体の展示施設は河川敷より外にあるが、遊歩道や駐車場が河川敷にある。
河川敷には、川の流れを妨げないように法律の規制があって、恒久的建造物は建てられない。大雨で水かさが増したとき、河川敷に建造物があって流木などをせきとめると、被害を大きくしてしまう。何か建てようとするときは、緊急時に移動できる仮設型に設計し、監督官庁の許可をえなくてはならい。
僕がいた博物館では、河川敷の遊歩道に小さな水路があり、橋をかけてあったが、踏み板も手すりも取り外せるようにしてあった。
そんな散歩の人だけが通る小さな橋だけでもけっこう面倒なことだったので、空港などという大規模な施設が河川敷にあるなんて、信じがたい思いがした。
河川敷だから空港に必要な設備を完全にはそろえにくいし、滑走路の北の先にも南の先にも橋があって、滑走路を長くできない。 この空港はさまざまな制約を受けながら、アクロバットのように存在しているようだ。

富山空港 富山空港

富山空港
展望室から見ると、堤防が空港ビルのところで川からふくらむように曲がっている。 その上をボーディング・ブリッジが越えている。
ちょうどANA機が離陸していった。
滑走路の向こうを神通川が左から右に流れている。


昼どきになり、空港内のラーメン店で、富山名物の黒ラーメンを食べた。
空港内には薬屋もある。 富山といえば薬売りが有名で、子どもの頃、埼玉の僕の家にも定期的に来ていた。一般的に使いそうな薬を数種置いていく。 次に来たとき(1年に1度だったろうか)使っただけの薬品代を支払い、あとが補充される。
空港内薬局は薬売りのイメージをいかしていて、薬をしまっておくための赤い箱や、古っぽい名前とデザインの薬を置いてあったりする。 ありきたりの土産物よりおもしろいので、ここでいくつかみやげを買った。

富山空港は1963年に開港した。 河川敷では窮屈なので移転計画があったが、2015年に北陸新幹線が開業して空港利用者は大きく減り、新設移転案はなくなった。 飛行機の窓から川を見おろしながら着陸するのは気分がいいだろうが、僕のような関東住まいでは富山まで飛行機は選択しにくい。

(2017.5)
*神通川の河口先端については→[神通川-1.運河]