厚東川-私有地につき河口に近づけない!

カルスト台地「秋吉台」には日本最大規模の鍾乳洞「秋芳洞」があり、その中を厚東川(ことうがわ)が流れている。 厚東川は南に流れて宇部港付近で周防灘に注いでいる。 ところが「秋吉台」も「秋芳洞」もよく知られた観光地だが、河口付近は私有地で、ふつうには近づくことさえできない。 河口の両側が、宇部興産の広い私有地になっている。 興産大橋が両岸を結んでいるが、橋もそっくり私道であり、渡れないどころか近づくことさえ難しい。

厚東川の遠望
僕は秋芳洞を見に行った日、宇部港の近くに泊まった。
翌朝、泊まった宿(シーサイドホテル宇部)の人に教えてもらったところまで車で行ってみた。地図上では妻崎開作という地名になっている。
水門の先に、ゆるい勾配の橋がかろうじて見えた。


北部の石灰岩産地と河口近くの工場を結ぶのに「宇部興産 宇部・美祢高速道路」がある。この道も30kmほどまるまる私道で、とにかく私企業のスケールが大きい。
『釣りバカ日誌12 史上最大の有給休暇』(2001)に興産大橋がでてきた。
浜ちゃん(西田敏行)とスーさん(三國連太郎)が、山口きらら博(2001)の工事の状況を視察に宇部を訪れる。そのあと萩市で入院している人(青島幸男)の見舞いに向かうのだが、そのとき乗ったタクシーが興産大橋を走る。
下に厚東川を見おろす橋を、セメントの原材料を鉱山から工場へ運ぶトレーラーを2両連結した独特のダブルストレーラーが、併走したり、すれ違ったりした。
ふつうの道を走っている場面でふつうの車が画面に映りこむと違って、特別な道の特別な車を画面に収めるようにしっかり設定したのだろう。サービス心が行きとどいている。
ふつう宇部から萩に向かうのに興産大橋を通ることはありえないのだが、映画のおかげで、ほとんどアンタッチャブルな秘所の眺めを短時間の映像にしても楽しむことができる。

厚東川の河口.飛行機から
数年後、羽田空港から長崎空港に向かったことがあった。
瀬戸内海の上空を飛んでいるとき、厚東川の河口付近を認められた。
やはり遠くからとしても、上からすっかり見おろせて、いちおう気がすんだ-という気分にはなった。

*ほんの3キロほど東に真締川の河口がある。

(2011.2 2014.3)